(毎日 3月10日)
春は巣立ちの季節。
大学では、卒業に伴う引っ越しで不要になった家電や家具を
新入生へ格安で譲り渡す、「リユース市」や「リサイクル市」と
呼ばれるイベントが開かれる。
01年の家電リサイクル法施行などで処分にお金がかかる
家電や家具をリユース(再使用)に回すことのメリットが見直され、
取り組む大学が急速に広まった。
しかし、取扱量が増えたがゆえの悩みも。
「ここまで大きくなったのに、今年は実施できず残念です」
大阪大のリユース市「リユースマーケット」事務局で、
生活協同組合環境資源委員会の薮田真太郎さん(同大2年)は、
今年の開催断念を、無念そうに話す。
00年ごろから、まだ使える冷蔵庫やテレビ、家具を卒業生から回収、
市価の10分の1程度の格安料金で新入生を中心に販売。
「新入生の負担を減らし、ものを無駄にしない取り組み」として評価。
昨年の取扱量は400点に上り、春のイベントとして認知。
しかし、集めた家電や家具の保管場所にしてきた生協食堂の一角が、
耐震工事のため使えなくなってしまった。
大学外で倉庫を借りることも検討したが、
費用が高く適当な保管場所が見つからなかったため、
開催を断念せざるを得なくなった。
環境活動を行う大学生らで作る全国青年環境連盟「エコ・リーグ」の
06年のアンケートでは、21大学がリユース市を「実施する(した)」と回答、
運動は広がりを見せている。
一方、規模が大きくなったことで、保管場所や開催場所の確保が新たな課題。
東京農工大では、例年保管場所として使っていた大教室が、
今年は別のイベントのために使えなくなり、
扱う品数を元の400~500点から半分程度。
長崎大でも、数年前には保管場所が確保できなくなり、
主催するサークルの部室にも一時保管。
その後も毎年大学側と交渉しているが、「保管場所の確保は悩みの種」。
一方、早稲田大ではリユース市そのものが開催できない。
「キャンパスでは学園祭を除き、販売行為そのものが禁止」という理由。
同大の環境サークル「環境ロドリゲス」は、秋の学園祭に合わせて開催したり、
春に開かれる地元の商店街のフリーマーケットに出店するなどしたが、
本格実施には至っていない。
同大4年の西尾敬さんは、「卒業生から新入生に家電や家具を受け渡す
という趣旨からすれば、大学でリユース市を実施しないとあまり意味がない」。
エコ・リーグ事務局員で東京農工大3年の宮坂和彦さんは、
「規模を大きくすると、保管場所や実施場所の確保や回収にかかる
手間などの負担が増えてくる。
卒業で家電や家具を粗大ごみにしてしまうのはもったいないという気持ちを、
いかに持続するかが大切」。
==============
◇リユース市
卒業生や周辺住民の自宅から無料で家電や家具を引き取り、
新入生を中心とした希望者に提供。
「協力金」などの名目で数百円から数千円を払ってもらう。
86年に京都大で始まり、各地に広がった。
最大規模となっている京都大での取扱量は1200点。
今年は、「3年後の地上デジタル放送に対応していないテレビの
引き取り手がないのではないか」(東京農工大、岡山大)などがトピック。
http://mainichi.jp/select/science/news/20080310ddm016040070000c.html
0 件のコメント:
コメントを投稿