(サイエンスポータル 2008年4月17日)
シンポジウム「iPS細胞研究の展望と課題」で、
英国人科学者、ジョン・ガードン・ウエルカム・トラスト
がん研究ガードン研究所教授の興味深い発言があった。
ガードン教授は、1962年アフリカツメガエルの体細胞から
クローンをつくった業績で、生物学の歴史を語る際に
必ず言及される高名な研究者。
「頼まれて聖職者に対し年に1度、レクチャーをしている。
聖職者というのは多くが、生命を扱う研究に敵意を抱いている。
レクチャーでは、胚の発達などについて話をし、
聖職者たちが自分たちだけで話し合って、質問をしてくる。
こちらから聖職者に質問することもある。
レクチャーをするたびに、研究を理解する聖職者たちが増えてくる。
今では、85%の聖職者たちが支持してくれる。
10個に8個の胚は、着床しないというのが自然の割合。
初期段階の胚が研究によって失われるデメリットと、
研究の発展によってもたらされる潜在的なメリット。
注意深く説明すると、ほとんどの人はわかる。
研究は続けるべきだ、と言うようになる」
シンポジウムでは、ガードン教授、
山中伸弥・京都大学iPS細胞研究センター長などの講演に続き、
パネルディスカッションが行われた。
クローン研究や胚性幹細胞(ES細胞)などの研究に伴う
倫理的な問題について、ガードン教授の答えは以下の通り。
日本でも近年、科学技術リテラシー向上の必要が強く叫ばれている。
シンポジウムやサイエンスカフェなどの場で、
自らの研究内容を積極的に伝えようと努力する研究者たちは
ひところに比べ大幅に増えているように見える。
指導的な立場にある研究者も、総合科学技術会議をはじめ
さまざまな公的な場で、政治家や官僚に対し提言や助言をすることにより、
科学技術政策に実際に関与している。
科学技術リテラシー向上のために、アカデミズムに求められることは、
立法、行政への影響力をさらに強めることに加え、
それ以外で大きな社会的影響力を持つ人々、集団に対する
双方向型のリテラシー向上策ではないだろうか。
特に指導的な立場にある研究者に期待される役割を考えると、
ガードン教授のような活動は大いに参考になりそうな気がする。
http://www.scienceportal.jp/news/review/0804/0804171.html
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