(朝日 2008年10月8日)
ノーベル物理学賞に決まった南部陽一郎さん、化学賞の下村さん。
いずれも米国在住の研究者。
特に、若くして米国の研究所に移った南部さんは、「頭脳流出」の代表例。
よりよい研究環境を求めて国境を越える研究者の流れはその後、強まる一方。
物理学賞発表について、海外メディアの多くは受賞者を、
「2人の日本人と1人の米国人」と報じた。
生まれ育ちは日本だが、米国生活が長く、
70年に米国籍を取得した南部さんの扱いが異なる。
「南部さんを、日本人とカウントしないわけにはいかないが……」。
素粒子物理学などの基礎研究を支援する文部科学省は、
内部資料としてノーベル賞の受賞者数を国別に毎年集計。
これまでは、受賞者の国籍で数えてきた。
南部さんは、注釈付きで日本の受賞者にする方向だが、
関係者からは「そもそも国別に数える意味があるのか」という声も。
「外国人が日本の研究拠点での業績でノーベル賞を受けたら、
日本の受賞にカウントするのだろうか」ともらす関係者もいる。
下村さんは日本国籍のままだが、60年に渡米。
そこでの研究が、今回の受賞につながった。
政府は最近、魅力的な研究環境を整え、逆に世界から日本に人材を集める
「頭脳循環」へと持ち込む姿勢を強める。
塩谷文科相は、「大いに世界に出ていくと同時に、世界の頭脳が
日本に集まる環境作りをぜひやりたい。
4人もの受賞は、世界の拠点のひとつになりうる証明と思う」
文科省は昨年、外国人比率を高める「世界トップレベル研究拠点」を
全国に5カ所選出し、事務部門も含めて英語を公用語に。
東京大数物連携宇宙研究機構は、米カリフォルニア大教授だった
素粒子論の世界的リーダー、村山斉さん(44)を機構長に引き抜いた。
「同じ研究環境があれば、欧米にこだわる必要はない。
米国からは、日本の素粒子物理学が非常に華々しく見えた。かつてとは違う」
米国に研究拠点を移して73年にノーベル物理学賞を受けた
江崎玲於奈さんは、「今の日本は、当時より飛躍的に研究基盤が
発達している割に、外国人研究者が根付いていない。
二重国籍を許すなど、差別のない住みやすい日本を作るため、
国内のみんながしっかり取り組まなくてはだめだ」
http://www.asahi.com/science/update/1008/TKY200810080230.html
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