2008年10月14日火曜日

遺伝子組み換え作物:解禁望む「大国」の畑 フランス、消費者は強い抵抗感

(毎日 10月5日)

燃料費や穀物価格の高騰を受け、
遺伝子組み換え(GM)作物への関心が高まっている。
栽培に手間がかからず、収穫量が多いからだ。

農作物自給率120%超の農業大国・フランスでは、
消費者の抵抗が強く、組み換え作物の商業生産が法律で禁止。
しかし、農家には殺虫剤が不要などの理由で栽培解禁を強く望む声が。
今春まで、3年間組み換えトウモロコシ栽培を続けた農場を訪ねた。

パスカル・メッジさん(30)の畑は、仏南部トゥールーズ近郊に。
メッジさんは、トゥールーズ大農学部修士課程を修了後、
農業機械の会社に就職。
03年、農業をやめた人から土地を借りて転職、
学生時代から関心のあった組み換えトウモロコシの栽培を05年から始めた。

100ヘクタールの畑のうち、トウモロコシは40ヘクタールで、
うち30ヘクタールを組み換えとした。
「トウモロコシ農家にとって、最大の敵は実や茎を食べる害虫のアワノメイガ。
ほら、今年もこんなにやられている」。
メッジさんは、食べられた実の先端を指さした。
菌糸状のかたまりになっている。
害虫を防ぐために殺虫剤を2度散布するが、収穫の2割前後は虫食い状態。

害虫への抵抗性を高めた米モンサント社製の組み換えトウモロコシ
「MON810」からは、害虫が一切発生しない。
ほぼ作付け通りの収穫が見込める。
種子の値段は、組み換えで1ヘクタール当たり135ユーロ(1ユーロは約145円)、
普通種は同100ユーロ。

しかし、普通のトウモロコシには殺虫剤をまかねばならない。
初期段階には同35ユーロ、後期段階には飛行機で散布するため
同50ユーロかかる。
肥料と除草剤などがかかるが、これらは双方同じ。
基本経費でみると、普通のトウモロコシは1ヘクタール当たり
50ユーロ余分にかかることに。

収穫量は、通常トウモロコシが1ヘクタール当たり10・5トンなのに対し、
組み換えは同12トンに達する。
市場価格は年によって変動するが、1トン当たり200ユーロとすると、
1ヘクタール当たり300ユーロの差が出ることに。
メッジさんの組み換えトウモロコシ耕作面積は30ヘクタールなので、
年間1万500ユーロ(約152万円)の収益差。
これは、メッジさんのトウモロコシ畑の年収の3分の1に相当する。

欧州連合(EU)は01年、組み換え作物栽培について、
普通の作物との隔離を条件に解禁した。
フランスでも07年まで、MON810の栽培は認められており、
07年には2万2000ヘクタール(総耕作面積の1%以下)で栽培。

しかし、国民には抵抗感も強く、政府は諮問委員会の報告を受けて
今年2月、国内栽培禁止を決めた。
これに対し、与党の国民運動連合は5月、解禁を求める新法案を提出し、
上下両院で採択され、今後試験を経て最終決定を下すことに。

メッジさんも07年まで3年間栽培し、組み換え作物に抵抗の少ない
スペイン市場に出荷していたが、今春禁じられたため現在は栽培していない。
試験栽培は認められるものの、実際は反組み換え団体が耕作を妨害するため、
事実上、農家での栽培はできない状態。
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◇安全性、長期データが必要-パリ第11大研究員、クリスチャン・ベロー氏

-MON810が虫を殺す仕組みは?

MON810は、昆虫病原菌の一種、バチルスチューリンゲンシス(Bt)の
遺伝子を導入してBtたんぱく質を作る。
昆虫の消化液はアルカリ性のため、Btたんぱく質を完全に消化できない。
残ったものが、昆虫の腸にある受容体に結合し、
栄養素が吸収できなくなり、昆虫は餓死する。

-人間はどうか?

人間など哺乳類の消化液は酸性で、Btたんぱく質をアミノ酸に分解。
受容体もないため、食べても害はない。
Bt遺伝子を導入する際、「促進剤」を使うため純粋ではなく、
「変形Btたんぱく質」となる。
これが未知の作用をもたらす疑いが残る。
影響を詳しく知るには、動物での長期実験データが必要。

-交雑は起きないか?

◆花粉は重いので、多くは遠くまで飛ばないが、2割は分からない。
受粉時期がずれるように植えても、遠くに飛んだ場合、どうなるかは不明。

-殺虫剤をまいても、普通のトウモロコシの2割は虫食いになるというが。

◆同じ畑で連作すれば、虫の卵などが残り、翌年も発生。
有機農業の基本は、同じ畑で毎年作物を替えることだ。
そうすれば、害虫は発生せず殺虫剤も不要。
(組み換え作物に頼らなくても)有機農法で、虫と菌を避けることができる。

http://mainichi.jp/select/science/news/20081005ddm016040040000c.html

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