(毎日 10月24日)
科学館を利用した理科授業が、考える力を高める一助になる。
約150人の中学1年生を前に、講師がけたたましく鳴るブザーを箱に入れ、
中の空気を抜いていく。
音は徐々に小さくなり、真空に近くなると最前列でも聞こえなくなった。
音が空気の振動で伝わることを、実体験する実験。
島根県出雲市の出雲科学館で行われた授業のテーマは、「音と光」。
旭丘、佐田、湖陵の市立中3校の生徒が、サイエンスホールで実験に見入った。
音の次は光。
音を光に変換する装置を使い、光を操作して離れたスピーカーから音を出す。
「この技術が、現在の光ファイバー通信に応用されています」。
科学の不思議さや理屈とともに、実生活で応用されていることも伝える。
中学生たちは実験室に移ると、ホールでの授業を基礎知識として、
レンズの仕組みを学んだ。
「凸レンズが像を結ぶ焦点の距離や像の向きはどうなるだろう?」
予想を立てた上で、実験で検証する。
仕上げは紙筒とレンズ、感光紙を使った簡易カメラ作り。
「カメラのレンズの下半分を紙で隠すと、どう見えると思う?」
実際にやってみると、少し暗いがすべての像が見える。
「その理由は、考えてみてください」
2時間の授業は、頭を使って考えたり、データを取ったり、
ハサミやテープを使って工作したりと課題が盛りだくさん。
生徒は楽しそうにこなした。
「科学館の授業は、実験器材がそろっているのが魅力だが、
生徒の興味を引く教え方の工夫も参考になる」と引率した教員の一人、
旭丘中の久保田秀行教諭(46)。
科学館は、理科離れを防ぐ地域の学習センターを作ろうと、
島根大教育学部教授だった曽我部国久館長(65)が構想を立て、
出雲市が2002年に完成。
市内52小中学校の小3以上の全学級が年1~3回、
この場で理科の授業を受ける。
小中学校の教員免許を持ち、理科授業や教員研修を受け持つ講師が7人いて、
午前と午後で4学級ずつ、授業ができる体制。
実験や体験をショーに終わらせないよう、関連した実験を
すぐに生徒自身の手でさせる。
科学への興味や確かな知識につなげる工夫。
引率する教師にも手本となる授業をめざす。
曽我部さんは、実演授業後に「実験装置で何をやろうとするのか、
もっとわかりやすく説明しないと」と若い講師を指導。
「子供の興味や考える機会を引き出す方法を学んでもらえれば、
毎日の授業の改善につながる」
理科は、子供の学習意欲を引き出す様々な仕掛けが可能な教科。
「理科を材料に、子供が興味を持って調べる体験をすること。
あとは理科に限らず、興味を持つ子の背中を教師が上手に押せば、
子供の考える力は伸びる」
年に数回の科学館授業も、子供と教師の双方の力を育てることができれば、
大きな実りとなるはずだ。
◆理科授業と科学館
出雲科学館のほか、福島県須賀川市ふくしま森の科学体験センター、
栃木県真岡市科学教育センター、京都市青少年科学センターなど。
新学習指導要領でも科学館の活用がうたわれ、
国立科学博物館を中心に全国の科学館や博物館、動物園などが連携し、
学校の授業に生かす仕組み作りが進んでいる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081024-OYT8T00232.htm
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