(読売 12月12日)
学校再生につながる授業がある。
岡山市立岡輝中学校の理科室で、2年生が男女4人のグループごとに、
水を電気分解する実験。
ある班が、水素に火を近づけた時、水かさが増したことに気づくと、
吉岡真二郎教諭(42)が全員に話しかけた。
「水が増えたと言う班があるけど、みんな見てた?」。
別の班から「確かに増えた」と声が上がる。
「どうしてだろう。みんな考えてみて」。
その言葉を合図に、生徒たちがグループで意見交換する。
1人の女子生徒が発表のために立ち上がると、
教諭は生徒と生徒の間にかがんで姿を隠す。
意見は、教室の全員に伝えてほしいからだ。
吉岡教諭は、「先生は、生徒の意見を別の生徒に橋渡しする役。
生徒が人とのつながりを感じる授業が理想」
岡輝中が昨年度から始めた協同学習の授業。
グループ単位で助け合いながら課題をこなす。
生徒も発言しやすいし、友人に教えることで教える本人の理解が深まる。
森谷正孝校長(59)は、生徒が自然に「教えて」と口にできる
「やわらかい人間関係」を、作ることが大切だと考えている。
岡山市には、複数の学校による地域協働学校という独自の制度がある。
地域住民らが学校運営に参画するコミュニティスクールは通常、
個々に指定するが、岡輝中では、小学校2校と幼稚園・保育園3園も
加わった協議会で、学校運営の方針を話し合う。
協同学習の実施は、その協議会の場で森谷校長が提案。
委員からは、「学習面で学校を変えようという話は今までなかった。
地域も応援するので、ぜひ成功させてほしい」と賛同を得た。
地域全体での活動にこだわる背景には、「荒れた学校」の再生がある。
かつて、同中では授業について行けない生徒が机に伏せたり、
教室を出て行ったりする姿があった。
不登校の生徒は、1割を超えていた。
一人親家庭の割合が高いなど、生活環境が厳しい生徒も少なくない。
子供たちの学力保証には、幼少期から、学校、家庭、地域が
連携を密にする体制が不可欠。
導入から1年半。
同中で、授業中に教室を出て行く生徒はいなくなった。
「生徒の居場所が教室の中に出来てきた」と森谷校長は手応えを感じている。
今年度からは、小学校でも協同学習が始まった。
教員の多くが、「生徒の表情が変わった」と口をそろえる。
「友達の考え方は参考になるし、伝えるために一生懸命理解しようとする」と
2年生の女子生徒(13)が協同学習を評価。
同中では地域の人に学校を見てもらうため、
1人の教員が年2回は公開授業を実施。
保護者には、「入試に対応できるのか」という声もあるが、
今後は、保護者が参加する協同学習も企画、学習成果をまとめ、
保護者に説明することも始める。
地域が関心を持ち、地域と共に歩む学校の姿が形になってきた。
◆地域協働学校
中学校区単位で、学校の運営方針を話し合う学校運営協議会を作る
岡山市独自の組織。
協議会の委員には、町内会の役員や民生委員、学校園長らが入る。
岡輝中学校区をモデルに2005年度から始め、
現在は市内37中学校のうち、10中学校で実施。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081212-OYT8T00195.htm
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