(読売 9月29日)
広島県北西部の山あいにある、北広島町。
町役場近くの集会所の舞台に、
きらびやかな神楽の装束に身を包んだ高校生たちが集った。
参加した県内4校の中で、ひときわ異彩を放ったのが、
県立加計高校芸北分校の神楽部。
長さ13mの巨大な大蛇を、ダイナミックに操る「八岐大蛇」を
30分かけて演じると、400人の地元ファンから大きな歓声。
分校のある芸北地方は、全国有数の神楽どころ。
舞手の派手な衣装と速いテンポが特徴で、100超の神楽団が活動。
生徒数80人の同分校の神楽部は、最も長い62年の伝統を誇り、
現在は男女24人が所属。
伝統芸能の継承だけでなく、祭礼などで年間約20回の公演をこなす。
少子化の影響で、全国の伝統芸能の担い手は減少の一途。
全国高校文化連盟の調査によると、全国の高校で伝統芸能を扱う部活は、
2009年度の144校から、今年度は131校と1割も減った。
同分校では、部活の「2部制」を導入し、部員を確保。
バレーボールやスキー、卓球など七つの「第1部活」への参加が
全生徒への“義務”。
神楽部は「第2部活」で、第1の練習が終わった午後6時から
1時間半、毎日けいこに励む。
部員のうち、半数超の13人が3年生。
「八岐大蛇」には、8体の大蛇を演じる8人のほか、笛や太鼓など
総勢16人が必要なため、3年生は卒業間際まで公演に参加。
部長の田枝浩太さん(17)は、幼い頃から日常的に神楽に触れてきた。
「自分にとって、神楽は子守歌。
今、神楽を楽しめるのも、地域で支えてくれているおかげ。
将来は地域の神楽団に入り、後輩を指導したい」
分校統廃合も取りざたされる中、小田均分校長(55)は、
「分校が存続できるのは、神楽部のおかげでも。
都市部で地域の結びつきが希薄になる中、
その象徴として残していかなければ」と、決意を新たに。
公演を主催したNPO法人・広島神楽芸術研究所の
増田恵二事務局長(52)は、「若い人同士が刺激し合う機会に
なるようにと、県内の高校生を集めて初めて開催。
担い手が地域に根付くように、就職先の確保や常設公演場の
設置も検討すべきだ」
競演後、同NPOには参加校の部員から、1通の手紙が届いた。
〈他の高校と一緒に舞う機会があれば、と思っていたが、
願いがかないました。
精進して、他の高校に負けない部になりたい〉。
伝統を競う試みが、継承の一歩となり始めている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100929-OYT8T00232.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿