2010年10月3日日曜日

インサイド:米大リーグ ビジネス最新事情/5止 新球場建設、重荷にも

(毎日 9月18日)

新球場を手に入れて、集客を飛躍的に伸ばすツインズとは対照的に、
今年最も観客を減らしているのは、ニューヨークに本拠を置くメッツ。

1試合平均約3万3000人の観客数は、
昨年より6100人も少ない。

メッツは昨年、新球場「シティ・フィールド」(4万1800人収容)を
開設したばかり。
2年目で、早くも新球場効果がはげ落ちた。
新球場建設に伴う債務の返済は、緒についたところ。

メッツは今年、高額シートを除き、
チケット料金を平均13%引き下げているだけに、
観客数の減少は経営的に痛い。

シティ・フィールドは、大手金融機関のシティグループが、
大リーグ史上最高額の20年契約、
総額4億ドル(340億円)で命名権を購入。

契約締結後に起きた金融危機で、シティは巨額の公的資金の
投入を受け、「『納税者球場』と改名すべきだ」と
批判を浴びたことも微妙に影を落とす。

◆集客効果続かず

物珍しさだけで、観客を新球場に呼び込むことができるのは、
2年が限界だ」、ハーバード大ビジネススクールの
スティーブン・グレイザー名誉教授。
景気後退も重なって、その“ハネムーン”期間はさらに短くなりそう。

新球場の建設ブームが続く大リーグでは、
この20年弱で20の新球場が完成、建設中のものが1カ所、
構想段階のものが2カ所。
多くは老朽化による建て替えが目的ではなく、
スイートルームや高額シートを増設するなど、
もうかる球場に変えることが狙い。

目先の利益だけでなく、球団の資産価値の上昇を促し、
転売時のもうけも「確約」してくれる。
建設コストの半分以上を、地元自治体が負担してくれるとあれば、
好意に甘えない手はない。
命名権販売や新球場の増収効果で、自己負担はさらに低く抑えられる。

◆資金不足で弱体化

球団の思惑ほど、新球場効果は長続きしない。
チケット料金や飲食物の価格が、一斉に値上がりするのが常、
球団は新球場への投資が足かせとなり、
選手年俸に資金を振り向ける余裕がなくなる。
チームの低迷を招く要因となり、
結果的に客足が遠のく悪循環に陥る。

球場建設だけに重きを置く姿勢は誤り。
ファンは、強いチームを望んでいる。
うちは収益確保と戦力増強の二兎を追う」。

新球場をオープンさせた効果で、少なくとも5000万ドル
(42億5000万円)の増収が見込まれる
ツインズのデーブ・セントピーター社長。
言葉通り、ツインズは今年3月、早速手を打った。

捕手マウアーと8年間、総額1億8400万ドル
(約156億4000万円)の球団史上最高額で、
契約延長にサイン。

マウアーは、地元セントポール出身。
ア・リーグの首位打者を3度獲得、昨年は同リーグMVP選出。
ツインズは、これまで貧乏球団の悲哀で、
サイ・ヤング賞投手のサンタナ(現メッツ)、
主軸ハンター(現エンゼルス)ら有力選手を
次々に放出してきた歴史があり、大きな方針転換。

セントピーター社長は、「選手年俸を(現在の8300万ドル=
約70億5500万円=から)1億ドル(約85億円)以上に増やせる」
ツインズは今、ア・リーグ中地区で首位をひた走る。

対照的に、メッツはナ・リーグ東地区4位に低迷。
新球場を造るだけで、もうかった時代は完全に終わりを告げた。

http://mainichi.jp/enta/sports/baseball/archive/news/2010/09/18/20100918ddm035050008000c.html

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