2011年1月28日金曜日

インサイド:次代の針路 第4部 スポーツ留学生の受難/4

(毎日 1月21日)

小山市にある白鴎大。
留学生10人が受講する「日本語上級」の授業で、
旧ソ連のリトアニアから来た1年生、マンタス・パブロブヒナス(19)
真っ先に宿題を提出した。

「物の見方を変えてみる」という題のA4判のリポートには、
学校での先輩、後輩の関係や制服に驚いたことなどが書かれ、
「自分は、日本に留学することで体験できた。
大学時代にもっと日本文化の勉強をして、立派な社会人になりたい」

誤字はほとんどなく、来日4年目とは思えないほどのしっかりした文章。
経営学を学ぶパブロブヒナスは、
「大学時代、日本語能力試験でN1(1級)と(英語能力を問う)TOEICで
高い点数を取ることが目標」と意気込み。

パブロブヒナスは、バスケットボールのスポーツ留学生として、
07年4月に愛知・桜丘高に入ったが、その経緯は変わっている。
愛知万博の事業の一つで、リトアニアが豊橋市のフレンドシップ国となった。

当時の早川勝市長が、地元のバスケットチームに、
「リトアニアから選手を受け入れられないか」と打診。
チームから、桜丘高に話が持ちかけられた。

バスケットが盛んなリトアニアのクラブチームでプレーしていた
パブロブヒナスは、コーチから「日本に留学してみるか」と声を掛けられた。
冗談好きのコーチだったから、「いいよ」と気軽に答えた。
日本については、歴史で第二次世界大戦について学んだことと、
侍や忍者というぐらいのイメージしかなかった。
数週間後、日本から関係者がリトアニアを訪れ、面接で留学が決まった。

バスケットは、サッカーと並ぶ世界の人気スポーツであり、
米国のNBAだけでなく、各国にプロリーグが存在し、
才能ある若い選手は早くから国内外を問わず、
プロチームと契約する傾向が強まっている。

日本へのバスケット留学生が多いセネガルでは、
一線級の選手に欧州のチームのスカウトが目を光らせている。
そんな「世界のプロ市場」の中で、留学生を抱えるある高校の監督は、
「将来、世界を目指している留学生にとって、
日本のプレースタイルがレベルアップにつながるかは、
疑問に思うことがある」

日本の高校バスケット界でも、留学生の活躍が全国大会では
ひときわ目立つ。
世界的なプロにつながるレベルとはいえないのが実情。
パブロブヒナスも、196cmの長身を生かして、
桜丘高では中心選手として活躍できたものの、
プロチームと契約するまでには至らなかった。

高校3年間では勉強が物足りず、パブロブヒナスは奨学金を受けながら
大学に通い、バスケット部に所属。
来日当初、バスケットを職業にすることが夢だったが、
自分の力を知るにつれて、軸足が勉学に傾きつつある。
「日本に来るチャンスをもらったのに、高校を卒業する時にも
日本語を話せない留学生もいる。
日本語を覚えて、日本文化を知るという、ほかの人にはできない
経験をさせてもらっているのに」

プレースタイルやレベルなどもよく分からないまま日本にやって来る
バスケットの留学生。
桜丘高の江崎悟監督は、「チームの強化のために
2、3年間だけいるのではなく、日本の文化にも触れ、
できれば日本の大学に進んでほしい」、
競技だけでなく、留学を通じた人間的な成長を願っている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/01/21/20110121ddm035050027000c.html

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