(読売 3月31日)
震度5程度の揺れでも、学校現場などに大混乱が生じた今回の地震。
東京学芸大学の渡辺正樹教授(53)(安全教育学)に、
防災教育の課題を聞いた。
――現時点で浮かび上がってきたものは?
「ちょうど下校中、特に小学校低学年児童の多くが大地震にあったこと。
東京近辺で、帰り道でびっくりして泣き出したり、
学校に戻ったりした子がいると聞く。
早朝の阪神大震災、夕刻の新潟県中越地震とは違い、
下校中の子どもが大地震に遭遇、
恐らく初めてのケースでは。
校内での避難訓練はかなり浸透しているが、
下校中を想定した避難訓練が必要」
――何が必要か?
「津波などはまた別の想定が必要だが、
通学路の中で公園など、物が倒れてこない、落ちてこない、
『ここに行けば安全な場所』を具体的に教える、
上から物が落ちてきそうなビルの近く、倒れてくるかもしれない
自動販売機などには近づかない『約束』をしておく、など。
できれば、保護者も参加した訓練を行うのが望ましい」
――通学区域が広く、電車通学も多い都市部の私立小学校では、
何かあった時は近くの公立小学校、駅員などに助けを求めるよう、
子どもらに指導していると聞いた。
「有効な手段の一つかもしれない。
信頼できる大人に保護してもらう必要がある。
国立大学付属学校も、電車通学の子どもは多い」
――地震時に学校に子どもがおり、保護者が帰宅難民となって、
そのまま学校に宿泊したケースも多かった。
被災地では現在も、多くの学校が避難所となっている。
「緊急時、どの教職員がどこまで責任を持つのか。
校内の役割分担はもちろん、学校と地元自治体との分担も
見直しておくべき。
子どもらを宿泊させた学校では、家庭に帰ることができなかった
教職員もおり、たとえ1泊でも大変だっただろう。
どの学校も、避難所になる可能性がある。
公的避難所になれば、自治体が責任を持つが、
実際には教職員が手伝いに入る例も少なくない。
線引きはしておかないと、教職員も持たない」
――今までの防災教育は役に立ったのか?
「役に立ったケースも多くあるはず。
想定を超えすぎ、今までの教訓があてはまらなかったケースも、
残念ながら少なくない。
今後は、今回の地震と津波をもとに、防災教育を根本から
立て直すことが急務。
三陸海岸を襲った最も高い津波が、東京近辺を襲う最悪の想定も、
自然災害の恐ろしさを知った今なら、必要に思える」
◆わたなべ・まさき
1957年生まれ。専門は安全教育と健康教育。
学校安全に関する教員研修の講師も務める。
編著に『最新学校保健安全ハンドブック』など。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110331-OYT8T00178.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿