(読売 5月18日)
津軽半島北端に近い青森県中泊町立小泊小学校で、
2月上旬に行われた6年生の社会科の授業。
子どもたちが、模造紙を囲んでカラーペンを走らせ、
「マインドマップ」と呼ばれる樹形図を作っていた。
「いい感じで枝が伸びてるな」。
担当する教務主任の前多昌顕教諭(41)が声をかけた。
マインドマップとは、ものごとの関連づけや発想の広がりを、
色やイラストなどを使って視覚的に表現したもの。
21人の児童は、韓国、ブラジルなど、グループごとに選んだ国について
調べ上げた特徴で、マップを作成。
これを見ながら、各国の概要を140字の文章でまとめた。
独学でマインドマップを始めた前多教諭は、思考を練り上げる
「道具」としての可能性を感じ、2008年、前任校で授業に本格導入。
小泊小では、昨年度から6年の社会で使い始めた。
歴史のように、記憶する知識が多く、苦手な子が増える科目では
特に有効と感じた。
大切なのは、何を成し遂げるかだと考え、マップの描き方だけでなく、
文章で再構成する作業も取り入れた。
「思考を、すぐに言葉にするのが難しくても、
マップを使えば表現の幅が広がる。
授業に参加できない『お地蔵さん』がいなくなった」と前多教諭。
担任の中谷美穂教諭(38)も、「作文嫌いが確実に減り、構成力もついてきた」
道具は、使いこなせなければ意味がない。
マップが、子どもたちの血肉になるように気を配った。
まず、言葉をつなげて枝を広げる作業に慣れるため、
教科書から単語だけを抜き出す練習から開始。
慣れたら予習として、教科書の内容から簡単にマップを描く。
授業では、先生が大きな模造紙にマップを描きながら説明、
テストのまとめにも使う。
「平安時代」なら、中心に描いたキャラクターは十二ひとえ姿といった具合。
「内容が覚えやすい」、「落書きみたいで楽しい」と、
授業以外で使いこなす子も増えてきた。
マップの「効果」は、前多教諭自身も実感。
ネットを通じて、実践を紹介したところ反響を呼び、人脈も視野も広がった。
同僚にも活用の輪ができ、県内への普及会も発足。
「将来、教育の場で当たり前に使われるようになるのが夢」。
教師の発信力が、周囲を巻き込んだ力になりつつある。
◆マインドマップ
イギリスの教育者トニー・ブザン氏が考案した思考整理法。
日本では2006年頃、まず企業が注目。
07年発足の「ブザン教育協会」(東京)が教員向けに研修などをしている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110518-OYT8T00244.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿