(読売 5月26日)
「字が丸く並んでいるね。
対角線にある字を、時計回りに読み上げて下さい。始め!」
埼玉県熊谷市立大里中学校の2年生のクラス。
中島清校長(59)が、ストップウオッチを手に合図。
校長自ら導入を提案した「ビジョントレーニング」の初めての授業。
目を素早く動かして、バラバラの数字を番号順に見つけたり、
複雑な図形を見て正確に写したり。
次々にドリルをこなし、「疲れたけど面白かった」と生徒たち。
同中は過去3年間、「学習意欲向上」を目指して改革に取り組んできた。
生徒への丁寧な声かけ、家庭学習、独自の校内検定などを実施して
一定の成果はあげたが、中島校長は「何か変だ」と感じていた。
疲れやすい。集中がすぐ切れる。
こうした状態を、教師や親は、「だらしない」などと否定的に
受け止めがちだった。
保健体育が専門の中島校長は、感覚や体の調節機能の未発達を
見逃しているのかも、と発想を変えた。
「心身の心地よさが、意欲の源のはず」
中島校長は、企業などで導入されている心身調整法の指導者資格を取得。
2年生の1クラスで朝礼時、CDに合わせて深呼吸や軽い体操で
リラックスするプログラムを実験的に始めた。
最初は、関心を持てず机に伏せていた生徒もいたが、次第に習慣に。
担任の川端慶枝教諭(29)は、「落ち着いて集中でき、授業しやすくなった」
その後、期末テストで飛び抜けて高い学級平均点を取り、
生徒たちも「すごい」と驚いた。
好成績を受け、次に試行を始めたのが、ビジョントレーニング。
瞬時に目のピントを合わせたり、立体感や奥行きを調整したりする
目の機能は、学習や運動効率に大きく影響する。
毎日の校庭掃除の際、何人もの生徒が、見えているはずのリヤカーに
つまずくのを見て、必要性は感じていた。
専門家のアドバイスも仰ぎつつ、気になる子は、授業だけでなく、
校長室にも誘って指導する。
効果は検証途上だが、評判は上々。
「『自分はダメだ』という思いこみを取り除けば、生徒は変わる」と中島校長。
朝のリラックス体操は、今月から全校で取り組んでいる。
他校やPTAからの講演依頼も相次いでいる。
子どもの気持ちを変える処方せんは、意外なところにある。
◆ビジョントレーニング
通常の視力と異なり、眼球運動や目と体の協調性、動体視力など
様々な視覚機能を向上させるための訓練法。
アメリカでは100年以上の歴史があり、「オプトメトリスト」(検眼医)と
呼ばれる国家資格を持つ専門職が、
児童だけでなくスポーツ選手の検査や訓練を担っている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110526-OYT8T00186.htm
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