(読売 5月21日)
「先生が予定通りまとめようとする授業はイヤ。見え見えだから」、
「教科書通りでいいから一工夫ほしい」。
子どもたちが大人に交じって議論する。
文部科学省が推進する「リアル熟議」が、
「若手教師の育て方、育ち方」をテーマに都内で開かれ、
東京学芸大学付属世田谷小学校4年1組の代表10人が参加。
進行役を務めた担任の沼田晶弘教諭(35)が熟議終了後、
子どもたちに感想を聞くと、「大人は、上から子どもを見ている。
何を与えるかの話ばかり」と不満の声。
「教育は自立支援」と考える沼田教諭。
「自分たちで決める」運営で自信をつけてきた子どもたちは、
「納得できない」、「リアル(現実的)じゃない」ことに違和感を隠さない。
「デシ・リットル」の単位の勉強では、
「全然使わない単位をなぜ勉強するのか」、と疑問が出る。
先生が、「確かにそうだね。でも、升を使う豆の量り売りには欠かせない
単位なんだって」と教えると、目を輝かせた。
「知りたい」、「やりたい」と思えば、探求心の塊になる。
夏の移動教室では、計画段階から地図を頼りに遠足の距離を求めた。
行きたい公園まで歩くと、何分かかるか?
歩数計で1歩の距離を測り、歩くペースを合わせる作戦も立てた。
当日は13kmもの道のりを、全員が歩ききった。
昨年度、2学期から取り組んだ総合学習のテーマは「映画作り」。
沼田教諭もさすがに「無謀では」と伝えたが、子どもたちは引き下がらない。
監督、脚本からカメラの配置、大道具作りまで分担し、
映画の中心となるダンスも、連日猛練習。
2週間かけて作った小道具が使えないなど、計画変更や失敗にも
「やめたい」という弱音は出なかった。
映画完成を控えた3月、近くの老人ホームでライブ公演が実現。
マイケル・ジャクソンの難しいダンスを踊って喝采を浴びたが、
沼田教諭が「真価を発揮した」と感じたのは、公演の後。
舞台で始まったお年寄りの盆踊り練習に飛び入り。
社交ダンスの相手も買って出て、話もはずんだ。
普段から、「先生の指示待ち」ではこうはいかない。
遠くから見ていた沼田教諭は、「やればできるんですよ」とつぶやいた。
4月の全校集会で、クラスと担任替えが発表。
最後に、1組全員が声をそろえて先生の背中にかけた言葉は、
「いってらっしゃい!」。
成長の証しの一言だった。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110521-OYT8T00200.htm
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