2008年6月22日日曜日

COP9:生物を守れば、企業が生きる 多様性イニシアチブに日本の9社が署名

(毎日 6月10日)

国連の生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)で、
企業が生物多様性の保全に積極的に取り組む
「ビジネスと生物多様性イニシアチブ」に日本の9社が署名。
企業が社会貢献の一部ではなく、
本業の中で生物を守る動きが広がりつつある。

◆庭に5本の木

イニシアチブには日本、ドイツ、ブラジル、フィンランド、スイス、
アメリカから、観光、木材加工、建築、金融などさまざまな
業種の企業34社が参加。

企業の経営・マネジメント方針に、生物多様性の保全を組み込む
▽年次報告書で活動内容を公表
▽企業活動が生物多様性に与える影響を分析する
など7項目からなる「リーダーシップ宣言」に署名。

日本企業は、積水ハウス、サラヤ、鹿島建設、富士通、森ビルなど。
積水ハウスは、販売する戸建て住宅の庭に、
日本在来の5本の木を植える運動を展開。
「3本は鳥のために。2本はチョウのために」がキャッチフレーズ。
「人が見てきれいかどうかより、生物のための庭をつくる」との発想。
市民団体「シェアリングアース協会」の協力を得て、
鳥やチョウなどが集まるその土地の樹木のリストを作成し、
住宅の顧客に選んでもらっている。

洗剤・せっけん製造業者のサラヤ(大阪市)は、
原料のアブラヤシが取れるインドネシアなどで野生動物の保護に取り組む。
更家悠介社長は、「生物多様性を社会貢献ではなく、
本流のビジネスにしようとする企業が増えるはず」。

◆行政、NGOに限界

企業による生物多様性保全の重要性が浮上したのは、
06年のブラジル・クリチバでのCOP8で、
民間部門の参加を促す決議が採択されたのがきっかけ。

背景には、この問題が国際社会の主要テーマになったにもかかわらず、
生物の絶滅・衰退が止まらないという現状。
WWF(世界自然保護基金)は、世界中の1300種を超える
野生生物の生息状況を調査して指数化、
05年は1970年と比較してこの指数が約27%低下。

生物多様性の損失は、空気、水、食物、気候に影響を及ぼし、
自然界から原料などを得る企業自身の存続や、
人類の生存の基盤も脅かすことに。

もはや行政やNGO(非政府組織)だけでは、
条約の「2010年までに多様性の損失速度を顕著に減少させる」
という目標は達成困難。

国内では、問題意識を共有する企業が主体となって
生物多様性に関する学習や情報交換をする
「企業と生物多様性イニシアチブ」(JBIB)が発足。
生物多様性とその持続可能な利用についての学習や
シンポジウム開催の情報発信といった活動を始め、
将来は政策提言も視野に入れる。

17社が参加を表明し、さらに増える見通し、
今後はNGOとの交流も進める。
足立直樹事務局長は、「生物多様性保全のため企業ができることは多い。
単独で進めるより、熱意のある企業が集まって情報交換し、
COP10で日本企業の取り組みをアピールできるようにしたい」。

◆名古屋でルール作り

2010年に日本での開催となる名古屋市のCOP10では、
「2010年目標」の達成度を評価し、
新たな保全目標を設定しなければならない。

薬など生物を利用して得られた利益を、企業と原産国で分け合う
「遺伝資源の取得と利益配分」のルール作りが大きなテーマ。

COP9では、法的義務を求める途上国と、これに難色を示す
日本などの先進国が対立したまま、
10年がそのルールを決める期限。

国連は、10年を「生物多様性の年」と定め、
国連総会で生物多様性を論じるための首脳会合の開催も検討。
国際自然保護連合日本委員会の道家哲平氏は
「条約史上最も重要な会議になる」。

日本は、議長国として難しいかじ取りを迫られ、
企業やNGOと連携してどう生物多様性の保全を図っていくか
問われる会議となりそう。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/06/10/20080610ddm016040150000c.html

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