(読売 10月8日)
映画制作を通じて、学生たちに手作りの価値を伝える大学がある。
コンクリート打ちっ放しの作業場で、
学生たちが劇場用映画「築城せよ!」のセット作りに汗を流していた。
愛知工業大学にある「みらい工房」。
学生の創作活動を支援するため、工作機械などを備えている。
映画は、来年の同大開学50周年を記念して制作、来夏に公開予定。
大学はスポンサーで、ヒロインは愛工大生という設定。
学生たちは、ベニヤ板を3人がかりで力いっぱい丸め、
電動工具で木枠に打ち付ける。
全長4メートルほどの筒状のベニヤ板が、映画の中では「井戸」に。
工房の隅には「石垣」が積まれていた。
発泡スチロールの表面をバーナーで焼いて凹凸を作り、塗料で色付け。
工学部4年の高木章広さん(21)は、
「劇場でこのセットがどんな風に映るのか楽しみ」
高度な機器を駆使してハイテクを学ぶことも大切だが、土台はあくまで手作り。
そんな考え方に立って、同大は8年前から選択科目
「ものづくり文化」を開いてきた。
トヨタ自動車の技術者をはじめ、作家、写真家など、
様々な分野のスペシャリストからものづくりの本質や魅力を聞く。
講師はすでに40人を超えた。
5年前にできた「みらい工房」では、「ものづくり文化」の受講生が、
山車などを作ってきた。
講義を担当する森豪教授(60)は、
「講師の話に興味を持ち、実際に手と足を動かすことで、
パソコンの前に座っているだけでは得られない発想が生まれる」
映画制作は、こうした活動の集大成。
講義を通じてプロデューサーらと知り合い、話が進んだ。
映画は、戦国武将の霊が町役場の職員に乗り移り、
数々の困難を克服しながら、地域住民や大学生らと
段ボールの城を築き上げていくというストーリー。
撮影で実際に作られる城の高さは20メートルだが、
高木さんたち美術班のメンバーは、高さ4メートルほどの縮小版の制作を始めた。
最初は失敗の連続だったが、強度実験を繰り返すうち、
細長く切った段ボールを格子状に組んで何層にも重ねることで、
学生20人以上が乗っても崩れない「天守閣の床」を作り上げた。
この技術が映画の中でも取り入れられる。
「1人では難しくても、仲間と力を合わせれば乗り越えられる」と高木さんは実感。
撮影は、同大周辺で9月25日から始まった。
美術補助やエキストラなど、参加する学生は総勢500人。
11月上旬までの撮影期間中、出演者やスタッフの多くが学内の寮で寝泊まり。
学生は、プロの技術に触れながら映画作りを楽しんでいる。
「多くの人たちの技術と情熱が集結して、映画という一つの作品ができ上がる。
学生に本物のものづくりを肌で感じてほしい」と森教授。
映画の中で、城は最後に壊されるというが、学生たちは完成した作品から
大きな達成感を得るはずだ。
◆「築城せよ!」
監督は古波津陽さん。2005年に「築城せよ。」というタイトルの短編を制作。
主役の町職員と戦国武将の2役を演じるのは、
歌舞伎役者の片岡愛之助さん、ヒロインは海老瀬はなさん。
江守徹さん、阿藤快さん、藤田朋子さんらが脇を固める。
地域住民も、多くがエキストラとして参加。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081008-OYT8T00227.htm
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