2008年4月8日火曜日

特集:メタボ健診、きょうスタート 健康増進、新たな一歩

(毎日 4月1日)

新年度から、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に着目した
特定健診・保健指導(メタボ健診)が始まる。
メタボ該当者・予備群に生活習慣改善を促すことで、生活習慣病の
発症や悪化を予防し、医療費削減を目指す世界でも例のない制度。

◇生活習慣病、患者減を目標に

特定健診・保健指導は、「内臓脂肪の蓄積が糖尿病や高血圧、
脂質異常などの共通の原因」との考え方に基づく新たな生活習慣病対策。
日本内科学会などが発表した、メタボリックシンドロームの診断基準が基本。
腹囲、BMI(体格指数)が基準を超えたメタボ該当者・予備群などに対し
保健指導を実施。

生活習慣病の医療費は、国民医療費の3分の1。
生活習慣の変化などから、脳卒中や心筋梗塞などの発症の危険性が
高くなる糖尿病患者らが急増。
医療費削減に、こうした疾患の発症や悪化予防が欠かせない。
2015年までに、生活習慣病患者・予備群の25%減(08年比)を目指す。

注目したのが、「内臓脂肪型肥満」。
内臓脂肪を、食生活や運動などによって減らすことで、
内臓脂肪蓄積の結果として起こる血糖や血圧、脂質の異常が解消できる。
生活の質の向上と、医療費抑制の実現も期待。

住民健診は、これまで市町村が実施していたが、
特定健診・保健指導は医療保険者(市町村や健康保険組合)に実施義務。
対象は、40~74歳の医療保険加入者約5600万人(妊婦などを除く)。
市町村国保加入者には市町村が実施し、健康保険加入者には
職場健診と兼ねて実施。

従来の健診や保健指導と大きく違うのは、目的や評価方法。
これまでは、病気の早期発見を目指し、実施回数や参加人数が評価。
新制度では、内臓脂肪蓄積者を見つけ、改善に結び付けることが目標。
評価方法も、「生活習慣病患者、予備群が減ったか」という結果が問われる。

12年度までに、メタボリックシンドローム該当者や予備群の10%減少が目標。
達成できない保険者には、後期高齢者医療制度への財政負担が
最大10%加算。
保険料の値上げなどが必要になり、保険加入者の負担増になる可能性。

◇「積極的支援」「動機付け支援」「情報提供」に分類、食事や運動を実践的に

特定健診の項目は、従来の住民健診(基本健診)項目に、
腹囲とLDL(悪玉)コレステロールを加えた。
腹囲は、内臓脂肪の蓄積の程度を反映。
血圧測定、血液検査(脂質、肝機能、血糖)、尿検査(尿糖、尿たんぱく)、
問診や身体計測(身長、体重、腹囲)を実施。
腹囲かBMIが基準を超え、他の検査に一定の異常があった人は、
特定保健指導の対象。

前年度の健診で血圧、血糖、脂質、肥満(腹囲かBMI)の4項目すべてが
基準以上になった人は、心電図検査や眼底検査を受ける場合。

特定保健指導には、生活改善の方法を指導する「積極的支援」と、
自分自身で改善できるよう助言などをする「動機付け支援」。
基準以上の項目が多い人が「積極的」、少ない人が「動機付け」の対象。

例えば、男性で腹囲85センチ以上の人は、
血糖、血圧、脂質のうち2項目で基準以上になると「積極的支援」、
1項目だけ基準以上で喫煙歴がない場合は「動機付け支援」。
腹囲やBMIが基準未満の場合は「情報提供」、
生活習慣見直しのきっかけとなるような資料が送付。

「積極的支援」は個別面接、グループ支援、電話、電子メールなど
さまざまな方法を組み合わせて3カ月以上実施。
初回は保健師、管理栄養士らが面接。
対象者に健診結果の意味を理解し、生活習慣を振り返りながら
行動目標・行動計画を作成。

食事や日常生活の中での運動の仕方などを実践的に学んだり、
メールなどで計画の実行状況の確認を受けたりする。

支援の方法、時間ごとに「ポイント数」が定められ、
最低限実施しなければいけない「合計ポイント数」が決まっている。
6カ月後に、検査値や生活習慣がどの程度改善したかなどを評価。

「動機付け支援」は、面接1回が原則。
行動計画などを作り、約6カ月後に成果を評価。
血圧や血液検査の検査値が「受診勧奨値」に該当する場合、
健診機関の医師が医療機関受診の必要性の有無を判断。
病気の恐れが高く、医療機関の受診を勧められるケースが多い。
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◇夢実現へ-よく食べ、よく寝て、よく動く--日本栄養士会専務理事・二見大介さん

特定健診・保健指導は、国民一人一人の立場からすると、
「どういう生き方をしたいのか」と問われている制度。
「健康でいること」は、人生の目的ではありません。
生活の質の向上、さまざまな夢や理想を実現するための手段。
これを理解しなければ、健診と保健指導を受けても、
継続的に自分の生活を改善する原動力にはなりません。
理想に向かっていくための手段として健診、保健指導を利用し、
自分の生活の見直しに結び付けていく必要。

では、生活改善のためにはどんなことが必要か?
基本は、「よく食べ、よく寝て、よく動く」。
栄養、休養、運動のバランスがよければ、健康な状態を保てます。
全部同時に完ぺきな生活にするのは無理。
自分で問題点を明らかにし、改善の優先順位をつけ、
できることから始めることが必要。

栄養学で、「主食、主菜、副菜」という考え方。
もし自分の食習慣は、おかずばかりで主食が欠落していた、
主食と副菜しかなく、メーンになるおかずがほとんどないことが分かれば、
まず1食の中でこの三つをそろえることから始めましょう。
「やればできる」という自信が出てきたら、
今度は3食それぞれをバランスよく取るようにすればいい。
食事、運動がうまく連動するようになれば、必然的に休養も取るようになる。

保健指導を受けた後、いい方向に向き始めた生活を
自分自身の力で保つには、「体を動かす習慣」がポイント。
体を動かせば、おなかをすかせた状態になり、
食の選択の間口が広くなります。
多少好みでないものも食べ、バランスのよい食生活に。

体を動かすとは、スポーツだけでなく、
生活の中で体を動かす工夫をする。
車ばかり使うのではなく、歩いて買い物にいく。
掃除も、はたきをかけたり、ぞうきんがけなど
普段使わない筋肉を使うような作業を心掛けましょう。
「こうしなさい」と指導されたら、なかなかやる気が起きないが、
夢の実現のためと思えば、自分に少し負荷をかける生活も実行できる。
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◆特定健診の項目◆
<基本的な健診>
(1)問診
 薬の使用の有無、病歴、運動習慣、喫煙習慣など
(2)身体計測
 身長、体重、BMI、腹囲(内臓脂肪面積)
(3)身体診察
(4)血圧測定
(5)血液検査
 脂質(中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール)
 肝機能(AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GT(γ-GTP)
 血糖(空腹時血糖(HbA1c))
(6)尿検査
 尿糖、尿たんぱく
<詳細な健診>*一定の基準に基づき医師の判断で実施
(1)心電図検査
(2)眼底検査
(3)貧血検査
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◆受診勧奨値◆
血圧:収縮期140ミリHg以上、拡張期90ミリHg以上
中性脂肪:300ミリグラム/デシリットル以上
HDLコレステロール:34ミリグラム/デシリットル以下
LDLコレステロール:140ミリグラム/デシリットル以上
空腹時血糖:126ミリグラム/デシリットル以上
HbA1c:6.1%以上
AST(GOT):51U/l以上
ALT(GPT):51U/l以上
γ-GT(γ-GTP):101U/l以上
血色素量:男性12g/デシリットル以下、女性11g/デシリットル以下

http://mainichi.jp/life/health/archive/news/2008/04/20080401ddm010040145000c.html

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