(読売 1月5日)
「それでは、読みの交流に移ります。
気に入った場面を隣の人に教え、好きな理由を説明し合おう」、
小林智之・主任教諭(40)が指示。
八王子市立由木中央小学校で、4年生の国語の授業。
子どもたちがそれぞれ隣の席に向かって、
情感豊かに読み上げる声が、昼下がりの教室に満ち満ちた。
子どもたちが手にしていたのは、童話作家・新美南吉の『手袋を買いに』。
授業の最後には、先生と児童の“音読対決”も行われた。
母狐が子狐に、「人間の手の方をさしだすんだよ」と言うくだりを、
児童を代表して音読した荒川翔君(10)は、
「先生より上手」と、クラスメートから支持を受け、大きく顔をほころばせた。
「約束を守りなさいという強い思いに、つかまらないでと願う
優しさを混ぜて読んだ。
自分の意見をはっきり言えるから、国語は好きです」と荒川君。
小林主任教諭は、「教師の正解を押しつけず、
児童が自由に感じたことを大切にする。
相手を意識しながら、なぜそう感じたかを根拠を明示して伝えるよう
求めていけば、疑問点を自分で解決していく態度も身につく」
2011年度から全面実施される新学習指導要領に向け、
同小は09年度から、読む能力を高める国語の授業に取り組んできた。
柱の一つは、ストーリーの展開全体を見通して読む「全体読み」。
「授業時間に合わせ、場面ごとに区切ってしまうこれまでの読み方では、
登場人物の気持ちの変化などを読み取ることは到底困難」と、
研究主任の小林主任教諭。
もう一つの柱は、教材に関連した作品を取り上げる「関連読書」。
『手袋を買いに』は、3学期に教科書で取り組む『ごん狐』への導入でもある。
次の教材への意欲を喚起しつつ、同じ作者の作品を比べ読みすることもでき、
読書量の確保にもつながる。
飯田薫校長(59)は、「良質な文学作品に触れながら、
豊かな言語感覚を育成していくことが、論理的思考力にもつながっている」
「自分を分かってもらいたい」、「相手を分かりたい」――
授業での交流を通して芽生える思いが、コミュニケーション力を育んでいく。
◇
対人関係が苦手な子どもが増えるなか、国語教育の大切さが再認識。
すべての教科の基盤となる国語力を鍛え、
コミュニケーション力向上、学力アップを目指す各地の実践を追った。
◆新学習指導要領
文部科学省が示す学習すべき内容などの基準。
ほぼ10年ごとに改定、小中学校の新しい指導要領は
2008年3月に告示。
「ゆとり教育」からの転換とともに、各教科等にわたる
「言語活動の充実」を位置づけているのが大きな特徴。
小学校は11年度、中学校は12年度から全面実施。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110105-OYT8T00241.htm
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