(毎日 1月29日)
スポーツ界は今、若者へのドーピング(禁止薬物使用)
防止教育を重視している。
私は昨年8月、IOCが新設した若者の祭典、
第1回ユース五輪(シンガポール)を視察。
選手村には、世界反ドーピング機関(WADA)が設置したブースがあり、
選手は、パソコンのゲームで反ドーピングの大切さを学んだ。
簡易な形だが、関心を持つ入り口としてはいい。
WADAが設立された当時、検査手法の確立が主なテーマだったが、
10年余りを経て、若者への教育・啓発という次のステップに移っている。
日本アンチ・ドーピング機構(JADA)も、
10年にアスリート委員会を発足、教育に力を注いできた。
メンバーは10人。
競泳の鈴木大地さん、スピードスケートの黒岩敏幸さんら元トップ選手や、
アーチェリーの山本博さんら、現役の選手も含まれている。
トップ選手が、自分の学んだことを若い世代にどう伝えるか?
ユース五輪期間中、選手が取り組んだ教育プログラムで、
最も人気があったのは「チャンピオンとの会話」。
トップ選手が発する言葉は、若い選手には、より伝わりやすい。
JADAには、五輪やアジア大会に参加する全競技団体を含め、
73団体が加盟。
教育・啓発グループもあり、昨年10月に国体の会場にブースを
設置して啓発したのは、新たな試みだった。
今年度は、延べ19人のトップ選手が教育・啓発グループと連携し、
講習会などに参加。
教育の価値は数値では表せないが、
選手自身が活動にかかわることが一番大切。
それが将来の土台になる。
日本では、ドーピングを「対岸の火事」のように感じる人も。
海外の若者は、意識が高い。
米国であった競泳のジュニア大会では、会場にブースがあると、
必ず選手の側から、「新しい情報はないか」と情報を取りに来る。
年代ごとに何を重視して伝えるか?
中学生は、フェアプレーの精神、高校生は、健康被害の実態について
教えるべきだ。
トップ選手には、より実践的な検査の情報を伝えなくてはならない。
反ドーピングの理念は、最終的にはスポーツの価値、
フェアプレーの精神へと行き着く。
それは、五輪の精神でもある。
私は柔道の選手だった。
武道の精神と反ドーピングの理念は、重なるところもある。
注目されるスポーツ基本法の中に、反ドーピング教育の重要性を
明確に位置づけてほしい。
選手だけの問題ではなく、スポーツに関わるすべての人が
取り組むべき課題だからだ。
こうした活動に携わる選手を、もっと評価する仕組みも必要。
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◇たなべ・ようこ
1966年生まれ。
柔道女子72kg級で、88年ソウル大会から五輪に3大会連続出場、
銀2、銅1のメダルを獲得。
現在、母校の日大で法学部准教授と女子柔道部監督を務める。
http://mainichi.jp/enta/sports/general/general/archive/news/2011/01/29/20110129dde035070029000c.html
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