(毎日 11月21日)
ヒトの皮膚細胞から、心筋細胞や神経細胞などさまざまな細胞に
分化する能力を持つ万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を
作り出すことに、日米二つの研究チームが成功。
患者自身の遺伝子を持つ細胞を作り、治療に利用することに道を開く技術。
クローン胚から作る同様の能力を持つ胚性幹細胞(ES細胞)と違い、
作成に未受精卵を使うなどの倫理的問題を回避できる。
拒絶反応のない細胞移植治療などの再生医療や新薬開発など、
幅広い応用に向けた研究が加速しそうだ。
京都大などのチーム、米ウィスコンシン大などのチームが発表。
京大の山中伸弥教授と高橋和利助教らは、
体細胞を胚の状態に戻し、さまざまな細胞に分化する能力を
よみがえらせる「初期化」には四つの遺伝子が必要なことを発見し、
昨年8月にマウスの皮膚細胞からiPS細胞を作ることに成功。
これを受け、世界の研究者がヒトのiPS細胞の開発を目指し、
激しい競争を繰り広げていた。
山中教授らは、マウスでの4遺伝子と同様の働きをするヒトの4遺伝子を
成人の皮膚細胞に導入し、ヒトのiPS細胞を開発することに成功。
この細胞が、容器内で拍動する心筋や神経などの各種細胞に分化する。
iPS細胞をマウスに注入すると、さまざまな細胞や組織を含むこぶができ、
多能性を持つことが示された。
ウィスコンシン大のジェームズ・トムソン教授らは、
胎児や新生児の皮膚細胞から、京大チームとは異なる組み合わせの
4遺伝子を使い、iPS細胞を作ることに成功。
世界初の体細胞クローン動物、羊のドリーを誕生させた
英国のイアン・ウィルムット博士は、ヒトクローン胚研究を断念する方針。
クローン胚由来のES細胞より、iPS細胞の方が治療には有望。
一方、初期化に使う4遺伝子にはがん遺伝子も含まれ、
発がんなどの危険性がある。
今後は安全性の確保が研究の焦点に。
http://mainichi.jp/select/science/news/20071121k0000m040170000c.html
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