(毎日 11月25日)
「これで、皆さんは晴れて研究の申請ができる。
ぜひ、社会から信頼される研究をしてほしい」。
東京大で開かれた研究倫理セミナーにて、
医学部倫理委員長を務める赤林朗・大学院医学系研究科教授が呼びかけた。
セミナーでは、「専門職の倫理とは」との総論から、
各種指針、臨床試験の審査体制、手続きなど実践的な内容が説明。
03年から、医学部での臨床研究に携わるすべての医師や研究者に受講が義務化。
2年間有効の受講証が発行され、受講証がないと研究申請できない。
同大大学院修士課程の根本努さんは、
「自分の研究を倫理という視点から見ることで、気付かなかった点も発見できた」。
臨床研究には、倫理面からのチェックが欠かせない。
だが、その仕組みを理解し、倫理的な判断ができる人材は限られる。
赤林教授は04年、東大に医療倫理人材養成ユニットを設立。
「どんな研究でも、人に応用する段階はくる。
身体上のリスク、個人情報の取り扱いなど問題は多い。
倫理委員会がきちんと働かないと、医療は先に進まない」。
実験室で最先端の研究に挑む研究者と、倫理問題を検討する研究者を
隔てる「垣根」が、生命科学分野での研究倫理の醸成をさまたげているのでは?
そんな疑問を抱いた双方の立場の研究者が、声明文を発表。
「社会との共生を実現し研究を進めるには、
倫理的・法的・社会的観点など多面的な視点からの検討と配慮が不可欠。
自然科学と人文・社会科学が協働し、さまざまな立場の人と研究者が
協働する共通のプラットフォームを構築すべきだ」
科学技術振興機構社会技術研究開発センターが、
9人の研究者(生物学、脳機能研究、科学コミュニケーションなど)に
呼びかけ、声明が策定。
取りまとめ役の札野順・金沢工業大科学技術応用倫理研究所長は、
「自然科学の研究現場は多忙で、倫理を考える余裕がない。
一方、倫理の研究者は現場を知らない。
両者が同じ土俵で語り、問題を抽出し、解決へ導く取り組みが必要。
英国では科学者育成の初期から、倫理への配慮を学ばせている。
日本も人材育成に倫理面を取り入れ、その人材が活躍できる場を整備すべき」。
科学の発展は、私たちの暮らしを豊かにした一方、
最先端の科学は市民の手を離れ「ブラックボックス化」。
命に直接かかわる生命科学や医療の進歩は、社会の価値観をも揺るがす。
研究者には社会と向き合い、自らを律する規範も求められている。
そのような研究者を育てる取り組みは、緒に就いたばかり。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2007/11/25/20071125ddm016040068000c.html
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