2008年1月4日金曜日

新しい波/256 スポーツ立国/下 予算掌握の必然

(毎日 12月29日)

スポーツ界に不祥事が相次いだ今年、
競技団体の監督官庁である文部科学省が、
問題解決に積極的な関与をしようとする姿勢も目立った。

高校野球の特待生問題、時津風部屋の力士急死、
Jリーグにドーピング違反を問われた我那覇和樹(川崎)の処分、
日本バスケットボール協会の内紛……。
ことあるごとに、同省は競技団体を呼んで事情を聴いた。

予算と許認可を握る監督官庁の持つ影響力は小さくない。
我那覇の問題では、「一事不再理」と主張して違反の決定を再考しようとしなかった
Jリーグと日本サッカー協会が、文科省に2度の事情聴取後、
スポーツ仲裁裁判所(CAS)に判断を仰ぐ柔軟姿勢に転じた。
同省の田中敏審議官は、「これで大きく前進した」。

同省の関与について、ある競技団体幹部は、
「toto(スポーツ振興くじ)の不振でスポーツ界に影響力が落ちたので必死だった」。

自民党にスポーツ立国調査会(麻生太郎会長)が発足し、
スポーツ庁の設置と予算拡大に動き出した。
スポーツ界の悲願でもあり、国際競争力の強化や振興には追い風。
ただ、予算を握れば政、官ともに関与を強めるのは間違いない。

政治との急接近は、スポーツ界の自主性、独立性が過剰な圧力に
脅かされる危険性もはらむ。
政府の介入で80年モスクワ五輪ボイコットを決めさせられた痛みは、
スポーツ界に残る。

スポーツ振興の国策化に積極的な日本オリンピック委員会(JOC)の
福田富昭選手強化本部長は、
「政治がスポーツに関与しないとの考え方は過去のこと。
今はかかわらないと成り立たない」と現状を肯定。
そのうえで、政・官と向き合うために
「競技成績を上げることと、スポーツ界がまとまることが必要」。

来年は、初めて国が整備したナショナルトレーニングセンターの利用が開始。
事実上の「国策化」元年。
政・官の力にのみ込まれぬよう、スポーツ界は自らの姿勢を
厳しく省みることも必要だ。
まだ運営手法が旧態依然とした競技団体も多い。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

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