(毎日 12月29日)
スポーツ界に不祥事が相次いだ今年、
競技団体の監督官庁である文部科学省が、
問題解決に積極的な関与をしようとする姿勢も目立った。
高校野球の特待生問題、時津風部屋の力士急死、
Jリーグにドーピング違反を問われた我那覇和樹(川崎)の処分、
日本バスケットボール協会の内紛……。
ことあるごとに、同省は競技団体を呼んで事情を聴いた。
予算と許認可を握る監督官庁の持つ影響力は小さくない。
我那覇の問題では、「一事不再理」と主張して違反の決定を再考しようとしなかった
Jリーグと日本サッカー協会が、文科省に2度の事情聴取後、
スポーツ仲裁裁判所(CAS)に判断を仰ぐ柔軟姿勢に転じた。
同省の田中敏審議官は、「これで大きく前進した」。
同省の関与について、ある競技団体幹部は、
「toto(スポーツ振興くじ)の不振でスポーツ界に影響力が落ちたので必死だった」。
自民党にスポーツ立国調査会(麻生太郎会長)が発足し、
スポーツ庁の設置と予算拡大に動き出した。
スポーツ界の悲願でもあり、国際競争力の強化や振興には追い風。
ただ、予算を握れば政、官ともに関与を強めるのは間違いない。
政治との急接近は、スポーツ界の自主性、独立性が過剰な圧力に
脅かされる危険性もはらむ。
政府の介入で80年モスクワ五輪ボイコットを決めさせられた痛みは、
スポーツ界に残る。
スポーツ振興の国策化に積極的な日本オリンピック委員会(JOC)の
福田富昭選手強化本部長は、
「政治がスポーツに関与しないとの考え方は過去のこと。
今はかかわらないと成り立たない」と現状を肯定。
そのうえで、政・官と向き合うために
「競技成績を上げることと、スポーツ界がまとまることが必要」。
来年は、初めて国が整備したナショナルトレーニングセンターの利用が開始。
事実上の「国策化」元年。
政・官の力にのみ込まれぬよう、スポーツ界は自らの姿勢を
厳しく省みることも必要だ。
まだ運営手法が旧態依然とした競技団体も多い。
http://mainichi.jp/enta/sports/21century/
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