(読売 2月12日)
宮崎県立宮崎工業高校で行われた建築科の実習。
稲用光治教諭(50)が、「しっくいはまんべんなく塗って」、
「ここは回り縁だな」と、生徒に声をかける。
近所に残る伝統的建造物の模型作り。
「生徒に興味を持たせ、理解しやすい授業を」と、
稲用教諭が提案して実現。
宮崎県教委は2009年度、教員評価の完全実施に踏み切った。
立場に応じた能力や行動などについて、
校長らがSABCの4段階で評価する「職務行動評価」、
教師の自己目標達成度を見る「役割達成度評価」の2種類。
同高に赴任して7年目の稲用教諭は、
職務行動評価で最上位のS評価を受けた。
授業の工夫だけでなく、校長が考える学校目標を、
ほかの教諭に理解してもらう主幹教諭、
学習指導も担う教務主任としての活動が認められた。
稲用教諭は、「若い人の育成に、まだ不足の面があると指摘。
自分が何を求められているか明確にわかり、取り組みがしやすい」
田内博夫校長(60)は、「雑談ではなく、面談を重ね、
人間関係を深めた上で、互いに納得した評価を出せる」
04年度から試行が始まった同県の制度は、
アンケートなどで、教員の声も取り入れた全国でも先進的な例。
その「絶対評価・結果開示」という方法は、
評価される立場に慣れない教員にも受け入れやすい形として、
多くの教委で取り入れられている。
07、08年度の教員採用試験で、県教委幹部や小学校校長・教頭らの
口利きなどによる汚職が起きた大分県。
10年、「同じ学校教員の間で相対評価」という、
全国でも珍しい評価制度を導入。
最上位のAを10%、Bを20%、CDEを計70%の割合で、
校長が教員を評価し、教委が最終調整。
DEがついた場合、本人に結果が告げられ、
ボーナスカット、昇給抑制、研修の受講となる。
「県教委幹部らの不祥事を、現場に尻ぬぐいさせるのか」という
現場の反発もあるが、河野盛次・同県教委教育人事課長(53)は、
「人事考課に使うのだから、相対評価でないと意味がない」
客観的な評価を入れることで、
曖昧な基準で行われていた人事を改め、教育再生を図る。
教育界への信頼を一挙に失った不祥事からの起死回生の試みは、
横並び意識の強い教員の世界への挑戦でもある。
◆教員評価
2000年の教育改革国民会議が、
「教師の意欲や努力が評価される制度を」と報告。
01年、公務員制度改革大綱などを受け、
文部科学省が導入を都道府県・政令市教委に指導。
能力評価と業績評価(目標管理)があり、絶対評価方式を導入する
自治体が大半を占める。
以前の勤務評定は、形骸化が指摘。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110212-OYT8T00101.htm
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