(読売 2月18日)
稲城市の市立稲城第三小学校3年2組の教室。
担任で新人の一色香織教諭(25)が、黒板の前に立つ。
チャイムが鳴ると、児童39人が次々に前に出て、
暗記してきた春の七草などを整然と発表。
秩序立った授業の背景には、この学級のもう一人の担任、
教員歴40年の白尾秀子教諭(61)の存在。
「お尻はイスの奥までくっつける」、
「机とおなかの間はこぶし一つ分だけ空ける」――
一色教諭は、白尾教諭の助言を受け、年度初めに生活習慣を
かみ砕いて黒板に書き、繰り返し指導してきた。
「白尾先生に言われなければ、ここまで細かくは指導できなかった」と
一色教諭は振り返る。
若手の指導力向上のため、東京都教育委員会は今年度から、
新たに採用された小学校教員に、ベテラン教師が
「新人育成教員」として、1年間付きっきりで指導する新しい研修を始めた。
全国でも珍しい試み。
白尾教諭は、一昨年春に同小を定年退職後、
今年度から新人育成教員となった。
「生活の乱れを後から直すには、大変なエネルギーが必要。
最初から良いルールを浸透させることで、学習もスムーズにいく」、
ベテランならではのコツを明かす。
「通常の研修だと指導は受けても、実際の教室の中まで
見てくれる人がいない。
この研修は、毎日家庭教師がいるようなもの。
若手の成長が格段に早い」、同小の寺井尚一校長(63)。
「『どんな学級にしたい』という目標は、どの先生も持っているが、
『どうやって』がわからない。
それを示してくれるのが新人育成教員」
学校では今、ベテランの大量退職が続く。
都教育庁によると、公立の小中、高校などで2005年度は
約900人だった定年退職者が、07~09年度は毎年1600人を超えた。
新人育成教員の事業費は、年間約5億円。
新人に手厚い研修を行うのは、1年目でも学校では
保護者たちから先生として完成された指導力を求められるため。
都は、10年度からの5年間で500人の新人育成教員を任用する予定。
今年度の新人育成教員の体験記を冊子にまとめて配布し、
経験を広めたいとしている。
◆ベテランの大量退職
1960~70年代、都市部では人口が急増し、児童数の増大のため、
団塊世代の教員らが大量に採用。
この時期に採用された教員が定年退職の年齢となり、
今後数年間は大量退職が続く。
都市部の各教育委員会では、採用枠を拡大。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110218-OYT8T00204.htm
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