2008年3月6日木曜日

暖かな破局:第3部・削減を阻むもの/1(その1) 排出量取引、導入検討

(毎日新聞 2008年3月4日)

政府は、国内排出量取引の導入検討を表明。
地球温暖化対策の一環で、
活動が規制されると導入に反対する経済界を押し切った。
なぜ急転したのか?

「北海道洞爺湖サミットでは、サブプライムローンとか議題があるが、
日本が主導権を取れるのはクライメットチェンジ(気候変動)。
総量(削減)目標を避けるつもりがないことを、きちんと言おう」

1月、福田康夫首相は外務、環境、経済産業各省の温暖化問題担当局長を
集めた席で、自ら筆を入れた草稿を示し、断を下した。
世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での首相演説の内容。

5日前の関係閣僚会議は激論に。
鴨下一郎環境相は、「総量目標を掲げないと意味がない」と主張。
甘利明経産相は、「米国との関係がおかしくなる」と反対、「数量目標」に。
たった1文字違いだが、内容は天地の開き。
総量なら、排出に上限がかかり、排出量取引などの対策が必要。
数量なら、エネルギー効率などの数字が入ればよく、削減を意味しない。

福田首相の決断の背景には、地球温暖化防止バリ会議での日本批判がある。
米国などに配慮し総量目標に反対したが、
途上国などは「温暖化防止の抵抗勢力」と反発、
政府内に「日本は孤立する。サミットの成功は危うい」との懸念。
サミットに政権浮揚をかける首相は、「総量」を受け入れざるを得ない。

環境対策に熱心なトヨタ自動車相談役の奥田碩・日本経団連前会長を
内閣特別顧問に任命、「新日鉄と東京電力対策」(外務省幹部)に。
鉄鋼と電力は、日本の2大排出源。
奥田氏の働きかけもあり、両社の社長は
政府の地球温暖化問題に関する有識者会議に入った。

奥田氏は、御手洗冨士夫・経団連会長にも
「現段階で政府の選択肢を縛るのは控えるべき」。
御手洗氏も、「排出量取引反対」から「検討価値あり」に変わり、
会員企業をあわてさせた。

今回は、政治主導で経産省・経団連連合を抑えたように見える福田首相。
しかし、まだまだ、抵抗勢力の壁は厚い。
==============
◇排出量取引

温室効果ガスを削減するため、国や企業に排出枠をあらかじめ割り当て、
過不足分をやり取りする制度。
京都議定書は、国同士の取引制度を定めている。
欧州連合(EU)は、域内の企業に排出枠を設定する独自の取引制度を開始。
排出権取引とも呼ばれ、温室効果ガスの排出枠は権利ではないとの理由で、
日本政府は「排出量」ということばを使用。

http://mainichi.jp/select/science/news/20080304ddm001040013000c.html

0 件のコメント: