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2011年7月27日水曜日

大船渡国際港湾ターミナル協同組合 コンテナ事業にも〝二重債務〟

(東海新報 7月23日)

東日本大震災による大津波で、保有設備が甚大な被害を受けた
大船渡国際港湾ターミナル協同組合は、
各種支援制度を生かした再建策を模索。

修繕費は数億円規模に上り、既存の借入金もあるため、
事業再開には「二重債務」の壁が立ちはだかる。
行政による港湾施設復旧が求められる中、関係者からは、
「震災後に、貨物量が戻らなかった神戸の二の舞になるのでは」

同組合は、平成19年度から本格化した大船渡港と韓国・釜山港などを
結ぶ外貿コンテナ事業で、必要な荷役設備を運営。
市内外の民間企業16社が出資。

約4億4000万円を投資し、県が管理する野々田ふ頭に、
船舶からコンテナを積み上げるハーバークレーンと、
ふ頭内で運搬するリーチスタッカなどを導入。
流失は免れたが、東日本大震災による大津波で甚大な被害を受けた。

内部機械に海水が入り込み、稼働できない。
同組合では、専門業者に修繕費用などの見積りを依頼し、
合わせて2億円以上に及ぶ。
震災前から続く設備返済として、約1億7000万円を充てなければならず、
苦しい判断に迫られている。

自己資本での修繕は難しく、組合では国による、
「事業協同組合等の共同復旧施設補助」への申請を検討。
復旧経費の4分の3補助を受けられる制度、
補助に該当するかはまだはっきりしていない。

該当しても、残り4分の1は自力返済しなければならない。
事業再開できなければ、収入がないほか、震災で被災した出資企業が
多いため、重い負担となる。

国土交通省や県、市などで取りまとめ作業を進める
大船渡港復旧・復興方針素案計画では、地盤沈下対応のかさ上げを含む
港湾機能の本格復旧は、「概ね2年以内をめど」
震災前に多く利用されていた茶屋前・野々田地区の対応を急ぎたい考え、
コンテナ航路の本格運用と支援にも言及。

港湾利用のあり方は、市議会災害復興特別委員会商工港湾専門部会と
大船渡商議所との意見交換の場でも話題。
「阪神・淡路大震災以降、神戸港を利用する船舶が減った。
スピーディーに進めなければ、衰退の一途をたどる

震災前は、地元水産魚の輸出も多く、再開時期が遅れることでの
幅広い影響を懸念する意見も。

港湾も荷役設備も壊滅的な被害を受け、実質的にはコンテナ事業再開に
ゼロから取り組まなければならない大船渡港。
前年度は、本格運用4年間で最多のコンテナ取扱高となっただけに、
協同組合関係者は早期復旧に意欲を示す。

同組合の宮澤信平理事長は、「これまでは、被災していない
県内陸部の荷主も多かった。
来年の半ばくらいには始めないと、荷主は離れてしまう。
上り調子で来ていただけに、各種支援制度を生かしながら、
再開を目指していきたい」

http://www.tohkaishimpo.com/

2011年7月24日日曜日

県、海洋エネ試験場誘致へ 沿岸に国際研究拠点

(岩手日報 7月19日)

県は、東日本大震災で被災した本県沿岸部に、
日本初の海洋エネルギー試験場の誘致を目指している。

国内外から研究機関を招き入れ、三陸の海を活用した
国際海洋研究拠点をつくるのが狙い。
全国的な海洋研究組織も、県内で研究フォーラムの開催や現地視察を
予定するなど、実現に向けた動きも出始め、未曽有の大津波の経験を
生かして、国際的な研究の深化を図る方針。

海洋エネルギー試験場は、三陸の海洋に波力や潮力などの
実験用設備を設けるほか、陸地にも既存の研究施設を活用して
専用施設を建設することを想定。

県内の海洋環境、生態系の津波による変化の解明、
研究機関による新たな科学的知見やアイデアの集積、
世界的に意義ある学術的知見の発信-などを進める。

同試験場で実験を行う国内外の大学、研究機関を招き、
大規模な研究拠点として機能させることで、
世界的な海洋研究の促進を図る。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110719_2

2011年7月20日水曜日

県の復興基本計画案を説明 住宅再建や仮設などで意見要望 「多重防災型」に異論なく

(東海新報 7月17日)

県が、東日本大震災津波で策定した「復興基本計画(案)」の
地域説明会が、大船渡、陸前高田両市で相次いで開かれた。

高台移転や避難ビルで、「多重防災型まちづくり」を進める計画案の
考え方について異論は出なかったが、住宅の再建に対する支援や
土地利用などに関しての提言のほか、仮設住宅の入居者から
要介護者を抱える家族などに配慮を求める要望。

県は、9月議会に提出する復興基本計画に、県民の意見を反映するため、
地域説明会を各地で開催、廣田淳副復興局長らが概要を説明。

基本計画案は、津波対策の基本的な考え方として、
多重防災型まちづくりを掲げ、暮らし再建、なりわい再生の10の柱を設定。

復興に向けたまちづくりでは、
▽都市再生型
▽都市再建型
▽集落移動型
の三つの復興パターンをデザイン画で示しながら説明。

大船渡会場で開かれ、高校生を含む市民約50人が出席。
住宅移転に関連して、「農地の宅地転用に2カ月かかる。
スピーディーに行うようにすべき」という提言、
県は農地転用の手続きが短縮できるよう、国に特区を設けることを要望中。

特区に関する質問もあり、県はまちづくり、土地利用、二重債務、
漁業再生など九つの特区を国に提言、「人命を二度と失わないよう、
早く防災計画を作るべき」との意見に対し、
計画の見直しを同時に進めていると説明。

岸壁が地盤沈下し、漁船が係留できない現状を訴える漁業者は、
「漁船の係留場所を確保してほしい」と要望。
計画案に盛り込まれた復興教育の具体的な内容を問う質問もあり、
「防災文化を次世代に伝え、いま支援の手が差しのべられている
『つながり』を保ち広げていく」との考え。

陸前高田会場には約100人が参加、要望や提言が続出。

民間で住宅団地を計画している人から、
「100戸規模の建設を計画、土地の売買、造成に対する補助や
相談窓口を設けてほしい」と要望。
実家を流失した被災者は、「住宅再建に対する支援をもっと国にアピールすべき」

住宅再建の支援策について県は、「新潟地震の時に適用された
防災集団移転事業では、用地取得や造成の補助があるが、
住宅建築は利子補給のみ。
住宅の建築資金への補助が無いので、国に要望

浸水地域の私有地について、「地権者に補償したうえで、市や県、国の
宅地造成計画に対して協力するような法改正が必要」、
「土地を嵩上げする時、史跡を残し平泉と一体の観光を進めてほしい」

被災した学校などの公共施設のがれき撤去に、国の補助が無く、
「市の復興の支障になっている」という声に、
県としても国に対応してもらう方向。

仮設住宅の入居者から、家族構成に配慮した住宅の割り当てを求め、
要介護者を抱える人は、「仮設での高齢の母親の介護に不安を持っている」、
要介護向け仮設の建設や仮設間での移動可能を求め、
県では市とも今後検討。

廣田副復興局長は、「早くまちづくりの姿をはっきりさせてほしいとの
皆さんの意見と受けとめ、県としても生活の安定と復興の道筋が
できるように頑張りたい」

計画期間は、平成23~30年度までの8カ年計画。
「いのちを守り 海と大地と共に生きる ふるさと岩手・三陸の創造」
を目指す姿。
計画案について、今月末まで県民の意見を募集するパブリックコメントも実施。

http://www.tohkaishimpo.com/

2011年7月18日月曜日

大船渡復興屋台村が始動 10月開業目指す 野々田地区に仮設20店舗

(東海新報 7月17日)

大船渡市大船渡町の商店街再興に向け、地元飲食店主たちが、
同町野々田地区に大船渡復興屋台村をオープンさせる計画。

大船渡飲食店組合(及川雄右組合長)が、仮設店舗を一つのエリア
(約400坪、20店舗予定)に集め、復興屋台村として
開業・運営するもので、10月上旬の開業を目指す。

3月11日の大震災による大津波で、大船渡飲食店組合に加盟する
60店舗のうち、57店舗(95%)の飲食店が津波で流された。

同組合では、港町・大船渡を支えるもう一つの顔である飲食店の賑わいを
取り戻そうと、4月に大船渡復興屋台村プロジェクトを立ち上げ、
屋台村オープンに向けて準備を進めていた。

中小企業基盤整備機構(中小機構)の認可を申請中で、
認可が下り次第ただちに建物を着工し、10月初旬の開業を目指す。

建設予定地は、同町野々田の民有地で、
敷地面積は1321平方㍍(約400坪)。
飲食屋台(1店舗当たり約8坪)と共同トイレ2棟を設置。

出店業種は、居酒屋系、ショットバー、ラーメン、そば、寿司、焼肉、
洋食、和食、中華、スナック、バーなど原則不問。
運営形態は、大船渡屋台村協同組合とし、店舗数は20店舗を予定。

1次募集は、大船渡飲食店組合加盟店が対象(募集期間、25日~31日)、
2次募集は、市内に在住、店舗があった人が対象(同、8月1日~10日)、
3次募集が、気仙管内に在住、新規参入者が対象(同、11日~20日)。
定員になり次第締め切る。

募集要項によると、契約者本人が営業することが原則、
契約期間は3年間。
出店者負担費用は、付帯設備の配線工事費(20~30万円程度)。
毎月のテナント料・家賃はなく、共益費が月1万5000円。

及川組合長は、「屋台村を、飲食店街の復活と市街地の活性化、
復興への幕開けの象徴とし、大船渡の人たちの元気を取り戻し、
復興に向けてがんばっている姿を全国に発信したい


出店者募集説明会は、20日午後3時からオーシャンビューホテル丸森で。
問い合わせは、及川さん(℡090・3362・7712)。

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2011年7月17日日曜日

復興計画8月末以降に 地区別図案に課題多く 「二線堤」構想に唐突感も

(東海新報 7月16日)

大船渡市は、市災害復興計画の策定時期が
8月末以降にずれ込む見通し。
国の復興施策審議が予想よりも遅れる中、市では再度地区別に
懇談会を開催、住民の意向把握を進める考え。

土地利用の「たたき台」として復興方針図案を示したが、
かさ上げする道路の高さや居住可能区域の範囲など、議論の余地を多く残す。
市が強調する「復興のスピード感」と、住民の合意形成を得た
将来像確立との両立に向け、正念場を迎えている。

県内被災地自治体の中でいち早く、復興施策づくりに着手した大船渡市。
震災から12日後の3月23日、庁内に災害復興局を新設。
4月以降、住民意向調査の実施や復興計画策定委員会の開催など、
早期策定を目指して積極的に取り組んできた。

各種施策の指針となる復興計画骨子は、住民懇談会や
復興計画策定委などによる議論を経て、今月上旬にまとまった。
具体的な事業内容を盛り込む復興計画は、今月末の策定を目指していた。

市では、計画策定時期を8月末以降。
計画実施に国の予算支援が欠かせない中、復興施策の財源となる
第3次補正予算が秋以降に。
国の動向を判断しながら、策定作業を進める。

この間、再度地区別の住民懇談会を開く。
住民の意向を、再度把握しなければならない課題も。

第3回復興計画策定委で初公表した、復興方針図案。
図案はあくまでも、議論に入る前段階の「たたき台」として用意。
今後、図案内容が大きく変更する可能性も。
半面、この認識の裏を返せば、現段階では甘さや問題点が多い。

これまで、「再び津波が来ても人が亡くならない、
住居が流されないまちづくり」を掲げ、
その一つとして高台に住居移転する構想。
復興図案でも、高台移転の候補地を示しているが、
浸水域の多くが居住可能な地域。

浸水域の住宅を守る機能として盛り込まれたのは、道路のかさ上げ。
沿岸部を通る道路を盛り土などで高くすることで、
津波を食い止める「二線堤」の考え。

今回、末崎町の船河原海岸沿いに位置するJR線の線路が
「防波堤」となり、山側に広がる住居地域の被害を軽減。
道路自体の浸水被害も抑え、交通アクセス確保も期待できるが、
実現化には議論の余地を多く残す。

道路のかさ上げは、復興計画策定委員からも「唐突では?」
先月の市議会定例会では、国道45号のかさ上げに言及した
当局答弁はあったが、海側の道路には踏み込んでいない。

二線堤による減災対策は、東日本大震災復興構想会議が
菅直人首相に答申した提言に盛り込まれた。
この提言や国の動向をふまえた上で、市内では“初披露”。

図案でのかさ上げは、主要地方道大船渡綾里三陸線、
県道丸森権現堂線、門之浜海岸沿いを通る市道高清水鶴巻線、
県道崎浜港線が検討候補に。
高さの具体的な数値はなく、「さらに山側の線路や国道が
検討対象になる可能性もある」

2巡目の住民懇談会では、道路や土地利用のあり方が議論の柱に。
どの道路をかさ上げするかで、居住可能区域は大きく変わり、
住民生活にも大きく影響。
計画策定から、スムーズな事業着手に入るためには、
住民の合意形成が欠かせない。

多くの住民がマイカーを持ち、道路位置のあり方は、
まちづくりや商業地図にも大きく影響。
今後、数十年を見据えた地域社会形成の視点と防災の両立が
求められる中、計画策定時期を8月末以降に延ばしたとしても、
残された時間は決して長いと言えない。

さらに計画策定を遅らせれば、復興ムードの醸成や経済活動の
再開にも支障をきたすことが予想。
これからの1カ月半が、市内復興の正念場となりそう。

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2011年7月16日土曜日

大船渡市内の仮設店舗 9カ所に計2万平方㍍申請 完成までの遅さに焦りも

(東海新報 7月15日)

中小企業基盤整備機構(中小機構)が、民間事業所に無償貸与する
仮設店舗・仮設工場の候補地として、大船渡市は
市内の9カ所計2万平方㍍を申請。

中小機構による現地調査はすでに8カ所で終え、
「適地」判断が得られたのは6カ所。
申請事業所の半数で土地のめどがついたが、
完成までに3カ月程度要するため、関係者からは
整備のスピードアップを求める声が出ている。

無償貸与制度は、中小機構による東日本大震災支援策の一環。
市町村の所有地か、市町村が提供できる場所に、
建築面積約650平方㍍の工場タイプや、建築面積350平方㍍で
2階建て構造の店舗・事務所タイプなどを建設できる。

数カ月から1年程度の使用を想定、
一定期間経過後は市町村に管理を委託する方針。
市内では、大船渡商工会議所が被災事業所から希望を取りまとめ、
用地や店舗集積を調整。
こうした動きをもとに、市が中小機構に対して申請を行った。

市商工観光部によると、申請を希望した事業所数は224カ所。
市では、6月から7月にかけ、86%にあたる192カ所分の申請を終えた。

候補地は、三陸町綾里の黒土田地域、同越喜来の杉下地域、
末崎町の小細浦地域、大船渡町の茶屋前、中港、地ノ森、野々田(2カ所)、
永沢各地域の計9カ所。
合計面積は約2万平方㍍、ほとんどが東日本大震災で
浸水被害を受けた被災地。

三陸町や末崎町、大船渡町北部の候補地は、被災前に事業を行っていた
土地の近辺で再開してもらおうと、市側で選定。
大船渡町南部では、仮設利用を望む事業所側で土地確保が進められた。

中小機構による現地調査は、大船渡町の野々田地域1カ所を除く
8カ所で終了、6カ所で「適地」と判断。
三陸町越喜来の杉下地域は上水道整備を、大船渡町の中港地域は
建造物の基礎部分まで撤去した更地とするよう条件が出た。

事業所側で土地確保に動いた地域は、業種別の「集積」が見られる。
茶屋前地域は、震災前に近隣で商店街を形成していた
事業所関係者がまとまるほか、野々田地域は飲食店関係者が集中。

完成すれば、「仮設商店街」、「仮設飲食店街」が生まれることに。
大船渡魚市場に近い永沢地域は、水産関係事業所が多い。

「適地」判断を得た土地での再開を希望する事業所は、
申請希望数の半数となる112事業所。
営業再開への光が見えた一方、課題も抱える。

着工から営業開始までに、要する期間は3カ月程度。
今月中に着工しても10月ごろとなり、秋漁の取り引きを見込む。
水産関係者から、「活気が増すサンマ漁に営業を合わせたいと
思っているのに、これではピークが過ぎてしまう」

3月11日に発生した震災から半年以上にわたり、
事業所側では収入につながる営業拠点を確保できない形に。
市でも、視察に訪れる国会議員らに対して早期対応を求めているが、
現状では不透明な情勢が続く。

申請を終えていない約30事業所分も、土地のめどが付いた段階で行う。
「条件付き」の土地申請分については、
新たな用地を選定するかも含め、対応を協議。

市商工観光部では、「農地や農振地域、住居指定地などでも
期間限定的に設置が認められれば、候補地も増える。
土地利用の弾力的な運用対応も、国に求めていきたい」

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2011年7月14日木曜日

復興方針図案を公表 地区別に土地利用、移転先描く

(東海新報 7月8日)

大船渡市災害復興計画策定委員会は、
各地区の現状や被害状況をふまえた今後の議論のたたき台として、
「土地利用計画案」を提示。

高台移転の候補地を示しているが、全壊・流失被害地の多くが、
居宅区域として利用可能に。

海岸に近い道路をかさ上げすることで、津波被害を最小限に抑える
「二線堤化」の考えが盛り込まれている。

策定委員会は5月に発足し、委員は学識経験者や
産業団体関係者ら28人で構成。
この日は、委員のほか戸田公明市長、各部課長ら約50人が出席。

戸田市長は、「地区懇談会では、さまざまな意見が寄せられたが、
どれも『すぐやってほしい』との声ばかり。
復興には、スピード感を持っていきたい

委員長を務める塩崎賢明神戸大学院教授は、
「3回目の委員会を迎え、実際の事業着手につながる復興計画に
だいぶ近づいてきた」

議事では事務局から、各地区別の復興方針図案が示された。
湾口防波堤や防潮堤の復旧を前提に、新たな土地利用区域の
大まかな概要をまとめたもの。
市では、今後の復興施策における基本的な「たたき台」としての活用を期待。

方針図案は、盛・大船渡地区①、大船渡地区②(永沢以南)、末崎地区①(細浦)、
同②(大田団地など)、赤崎地区①(太平洋セメント~永浜貯木場)、
同②(蛸ノ浦)、綾里地区①(綾里漁港周辺)、同②(砂子浜・小石浜)、
越喜来地区①(浦浜など)、同②(崎浜)、吉浜地区―に分類。

各地区とも、津波危険区域や居住区域、高台に移る際の移転候補地、
産業区域などを色分け。

これまで市では、「再び津波が来ても、人が亡くならない、
住居が流されないまちづくり」を掲げてきたが、
JR大船渡駅周辺や末崎町の大田団地、三陸町越喜来の浦浜など、
全壊・流失住居が多かった地域も、「居住区域」。

こうした地域では、海岸沿いの防潮堤とは別に、
道路のかさ上げ検討を明記。
主要地方道大船渡綾里三陸線、県道丸森権現堂線、
末崎町の門之浜海岸沿いを通る市道高清水鶴巻線、
県道崎浜港線を候補。

盛り土などによって道路を高くすることで、岸壁を越えて流入した津波を
防御する「二線堤」の機能を持たせる。
津波襲来後も、道路アクセスが維持されるといった効果も期待。

大船渡町南部に広がるJR大船渡線より海側の地域や、
末崎町の泊里地域などは「危険区域」に。
市街地よりも高台の山林などに、移転候補地を示したほか、
山側への避難路確保の必要性にもふれている。

案段階ではあるが、戸田市長がこれまで必要性を訴えてきた
「高台移転」は、限定的な対応。

戸田市長は、「当初は『二線堤』をはじめ、道路のかさ上げ対応は
考えていなかった。
最近の国の動きなどをふまえ、議論のたたき台として提示した」

道路をどの高さまで上げるかや、危険区域の判断基準が
明確化されておらず、委員からはより具体的な説明を盛り込むよう
意見が寄せられた。

市では、今回提示した土地利用計画案を生かした、
ワークショップ開催などを経て、7月末以降に策定する復興計画内で、
より具体的な地区別復興図をまとめることに。

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2011年7月13日水曜日

がれき、両市で170万㌧ 県の処理計画雇用とリサイクル図る

(東海新報 7月8日)

東日本大震災で発生した膨大な災害廃棄物を、
有効かつ迅速に処理するため、
県は災害廃棄物処理実行計画を策定。

計画では、大船渡、陸前高田の両市の一般家屋や事業場などから
発生したがれきの量は、170万3309㌧にのぼると推計。

腐敗や危険物など、生活環境に支障のある廃棄物は今月末までに、
その他も本年度内に撤去し、3年をめどに処理を完了する方針。

計画は先月下旬に策定し、「雇用」、「リサイクル」、「広域処理も活用」の
三つを基本方針に掲げる。

今月末までに、腐敗性や火災の危険性のある災害廃棄物を撤去し、
年度内に全ての移動を完了。
処理は、平成26年3月末まで3年をめどに行う。

計画は、一般家屋や中小企業から発生した災害廃棄物が対象。
大企業や道路など、公共施設は別の処理計画になる。

県が推計したがれきの量は、陸前高田市が一番多く95万5920㌧。
大船渡市は74万7389㌧。
両市合わせて170万3309㌧、内訳は住宅が約65万8000㌧、
事業場が25万9000㌧、泥などの堆積物69万3000㌧、
家財道具などの水害廃棄物9万3000㌧。

災害廃棄物の処理責任は市町村にあるが、行政機能が被災した
陸前高田市など7市町村は、県に処理事務を委託。

県内全体では583万㌧以上で、うち可燃物は100万㌧で
木くずの割合が多い。
不燃物は300万㌧、残りは堆積物など。

この処理を進めるにあたり、沿岸の雇用の確保を重点に置き、
県内の既存施設や業者を活用して、分別や破砕などの前処理を行う。

可燃物の処理は、太平洋セメント㈱大船渡工場を中核として、
三菱マテリアル㈱岩手工場、いわて第2クリーンセンターなどの民間と
市町村の一般廃棄物処理施設を利用。

セメント工場での大量処理には、除塩施設の設置が必要とし、
塩分濃度が高く焼却できない場合は、仮設焼却炉を併設する。

がれき撤去は、スピードを優先したため、1次仮置場に混合状態にあるが、
柱材・倒木、可燃物、がれき類、金属、危険物・有害物、家電、混合物の
7種類に分別を検討し、再利用率を高めリサイクルを推進。
それによって、焼却や最終処分量を減らす。
泥などの堆積物は、埋立や焼成対象物とする。

最終処分の方法は、県内の埋立処分場が不足し、既存施設だけでは
処理が間に合わないことから、県外施設に一部を委託し、
広域処理も念頭に進める。
処理費用の財源は、環境省の補助金を活用する。

県環境生活部資源循環推進課の佐々木秀幸主任主査は、
地元の雇用も図ることを、重点において進めたい」、
がれきの試験焼却が太平洋セメントで始まっているほか、
腐敗水産物の処理が大船渡、陸前高田で行われている。

県は、8月末までに地域ごとに処理施設などを明らかにした
詳細な計画をつくることに。

http://www.tohkaishimpo.com/

2011年7月7日木曜日

大船渡魚市場、震災後初待望の水揚げ、活気あふれ 銀ザケ主体に25トン

(東海新報 7月2日)

大船渡魚市場に1日、銀ザケを主体に約25㌧の水揚げ。
まとまった量の水揚げは、東日本大震災後初めて、
関係者らも「待ってました」と言わんばかりに笑顔。

場内には市職員や仲買人、漁協関係者が訪れ、
魚市場の記念すべき再スタートを祝っていた。

吉浜漁協所属の第十八吉浜丸(17㌧)が、吉浜の沖合約350㍍にある
横沼漁場で漁獲した銀ザケなど、約14㌧を水揚げ。
陸送で、約11㌧が運ばれてきた。

同魚市場には、午前8時ごろ吉浜丸が着岸。
タンクから銀ザケが網で水揚げされると、場内の仲買人や市職員、
漁協関係者らが一斉に詰めかけ、銀色に輝く魚体に見入っていた。

東邦博漁労長は、「漁師を30年以上やっているが、本当にうれしい。
沖から来る時、大船渡湾を見てきたが、涙がでた。
船の新人8人も頑張ってくれた」と、満面の笑み。

水揚げされた銀ザケは、ベルトコンベヤーで運ばれ、
市場職員らの手で計量。
鮮度保持タンクの中で氷漬けにされ、仲買人らが真剣な目つきで魚体を吟味。

入札の結果、水揚げされた銀ザケには㌔339円から331円の値。
同魚市場の千葉隆美専務は、「再開に向け、いいスタートが切れた。
多くの関係者のご支援と努力で、ようやくここまでこぎ着けることができた。
これから一歩ずつ、乗り越えていきたい」と感謝。

吉浜漁協の庄司尚男組合長は、
「定置の水揚げを見て感無量。
この日の水揚げを復興の第一歩として、一日も早く漁業生産が
軌道に乗れるように取り組みたい」と気を引き締めていた。

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2011年7月4日月曜日

復興、市民が担い手 大船渡で有志が「会議」立ち上げ

(岩手日報 6月30日)

大船渡市民が、復興に向けた「おおふなと復興市民会議」を立ち上げ、
活動の輪を広げようとしている。

市民自ら復興の担い手となるとともに、行政の復興構想に、
市民の意見を反映させる狙いも。
被災事業所の復活策や、個人の二重ローン問題解決に向けた
ファンド設立など、具体的な提言を検討するなど、
積極的にまちづくりに関わる考え。

同会議は、漁業、商工業、水産加工業、サービス業、NPOなどに携わる
市民や超党派の市議有志らで、4月下旬に立ち上げ。

▽被災者や被災事業者の自立復興をバックアップ
▽復興事業に市民が参画できる環境整備
▽他自治体の同様の団体や支援団体との連携―などを目指す。
既に、仮設飲食街の設置に向け、準備を進めている。

6月28日の6回目の会合には、約20人が出席。
浸水地域から高台への移転を検討している同市末崎町の
住民も参加し、意見交換。

この中で話題として出たのが、個人の二重ローン解消策。
メンバーの一人は、公的出資を伴うファンド設立を働き掛けるよう提案。
高台移転に向けた地域の合意形成の進め方なども議論。

参加者から、「新しい宅地を造成するためには、まず道路整備が必要
などの具体的な話。
「実態を伝え、必要な施策を提案していこう」など、
積極的に行政に提言すべきだという意見が大勢を占めた。

市内のNPO法人理事長の金野広充さん(47)は、
「自分たちの街は自分たちでつくらなければ。
市の届かない部分を補いたい。
多くの人に参加してほしい」と呼び掛ける。

同会議は、週1回ペースで会議を開く予定。
問い合わせは、同会議事務局(090・3365・9765)へ。

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2011年7月3日日曜日

ルース米大使が来県 陸前高田などで交流や奉仕活動

(岩手日報 6月29日)

ルース駐日米大使は、東日本大震災で大きな被害を受けた
陸前高田市、大船渡市、大槌町を訪問し、両市長と懇談。

津波で死亡した米国人モンティー・ディクソンさん(26)が、
英語を教えていた陸前高田市の米崎小では、
ディクソンさんの生前の思い出話に耳を傾け、
子どもたちの歓迎を受けるなど、日米の絆を再確認。

ルース大使は、陸前高田市役所で戸羽太市長から被災状況の説明を受け、
「日米の友好関係は非常に深い。力になりたい」と強調。
米国が、今後も被災地支援に全力を挙げる考えを伝えた。

米崎小では、佐藤圭子校長が、ディクソンさんが震災当日まで
授業をしていたことを紹介。
「子どもたちに慕われ、教職員も(彼のことを)大好きでした」と、
昔の写真を見せながら語った。

大使は、ディクソンさんの家族が、
「彼にとって特別な学校、地域社会だった」と話していたと述べ、
佐藤校長に謝意を表明。
その後、5年生のクラスに立ち寄り、
「大きくなったら米国に来てほしい」と語りかけ、握手攻めに。

大船渡市役所で、戸田公明市長と懇談後、
震災直後に米国の救援隊と一緒に活動した大船渡消防署を訪れ、
署員の労をねぎらった。

同市盛町では、同市を拠点に家屋の復旧などに当たっている
米国のNPO「オールハンズボランティア」と共に、
被災したコンノ自動車整備工場のショールーム解体作業に参加。
社長の今野一夫さん(44)は、「感謝の一言です」と握手。
大使は、大槌町の避難所も訪問。

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2011年7月2日土曜日

大船渡でがれき焼却開始 セメント工場、1日300トン

(岩手日報 6月23日)

太平洋セメント大船渡工場(安藤国弘工場長)は22日、
東日本大震災の津波で発生した同市内のがれきの焼却処分を始めた。
23日から、陸前高田市のがれき処分も開始。
セメント製造用の焼成炉(ロータリーキルン)を転用し、
1日約300トンの処分を計画。

初日は、大船渡町茶屋前などから運ばれた木くずなどを処理。
集められたがれきは現在、同工場のサッカー場で5cm以下に破砕し、
炉に投入後、800度以上で焼却。
焼却後の灰は、3割程度の量になる。
灰は、奥州市江刺区のいわてクリーンセンターに埋め立てる予定。

大船渡市の分別・破砕作業は今後、
永浜・山口地区の港湾埋め立て地に移す。

同工場は、5月に構内のがれきで試焼却を開始。
その結果などから、投入場所の改良や散水設備の設置などを行ってきた。
塩分を多く含んだがれき焼却は炉を傷めるが、
同工場は「覚悟の上」と地域貢献を優先。

同工場自体も、津波で甚大な被害を受け、
セメント生産の再開は11月になる見通し。
12月に、もう1基ある焼成炉の再稼働させる目標。

安藤工場長は、「これまで、がれきは撤去できても、処分できない状態。
がれき焼却で、地域に貢献するのはわれわれの使命であり、
誇りだと思っている」

県の推計では、大船渡市では約75万6千トン、
陸前高田市は約86万5千トンのがれきが発生。
同工場は、県内屈指の焼却能力があり、
県はがれきの主要な処理先の一つに位置付け。

県の実行計画案によると、県内被災地のがれき処理は、
今秋以降に本格処理を開始し、2014年3月末までの完了を目指す。

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海抜0メートル地帯拡大 本県沿岸1・8倍に

(岩手日報 6月23日)

国土交通省は、東日本大震災に伴う本県沿岸部の
地盤沈下調査の結果を公表。
海抜0m以下になる陸地の面積は0・6平方キロ、
震災前と比べ、推定で1・8倍に拡大。

本県は梅雨入りしたが、損壊した防波堤や防潮堤は、
県が仮復旧を進めている段階で、大雨などによる潮位の変化に警戒が必要。

震災を受け県は4月、沿岸部の全域で、航空機から地表に
レーザーを当て、地盤の高さを計測する調査を実施。
2005~06年、沿岸の一部で調査した結果と今回のデータを、
国交省が比較し、震災前後の変化を解析。

陸地がそれぞれ海抜0m以下、大潮の満潮位(70cm)以下、
過去最高潮位(120cm)以下となる面積を算出。
震災前後の比較が可能な地域のデータを基に、
沿岸部全体の増加割合を推定。

海抜0m以下の陸地は、陸前高田市の高田松原など0・6平方キロ。
大潮の満潮位以下は、同3・2倍増の3・5平方キロ。
過去最高潮位以下となる陸地は、同2・3倍増の8・1平方キロ、
地盤沈下が広範囲にわたることが確認。

国土地理院が4月に行った調査では、陸前高田市小友町で
最大84cmを記録するなど、沿岸全域で沈下を確認。
県は、7月上旬までに損壊した河川堤防と防潮堤計11カ所の
応急復旧工事を終える方針。

同省東北地方整備局の舛田直樹河川計画課長は、
「被災地域の安全性を判断する一つの目安として、
地元自治体に活用してほしい」

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2011年7月1日金曜日

陸前高田で弁当移動販売 大船渡の居酒屋

(岩手日報 6月22日)

大船渡市立根町の居酒屋「KAIZAN」(新沼崇久代表)は、
陸前高田市竹駒町の市社会福祉協議会事務所前で、
弁当や軽食の移動販売を始めた。

黄色の車両による移動販売で、手作りの日替わり弁当、オムライス、
三陸産のワカメを使ったうどん、ホットドッグなど軽食を中心に
15種類ほどを売っている。
価格は、ワンコインの500円以下が中心、
その場で食べられるテーブルも設置。

新沼代表は、「陸前高田は、食べるのに不便な状況が続いている。
要望があれば、イベントや買い物が不便な地域にも出向きたい」と、
さまざまな地域に出向くことを計画。

営業時間は、午前10時から午後7時ごろまで。不定休。
問い合わせは、同店(090・5598・9544)へ。

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2011年6月28日火曜日

がれき撤去率、本格化2カ月で47% 満杯状態の仮置場も

(東海新報 6月17日)

大船渡市内のがれき撤去進ちょく率が、
作業本格化から2カ月で47%に達した。
進行に伴い、被災地では再利用可能な更地が増えるが、
撤去がれきを保管する仮置場や処分対策が急務。

22日から始まる太平洋セメント大船渡工場での焼成処分に加え、
破砕や選別作業を行う永浜・山口地区岸壁での保管車両移動を進め、
スムーズな撤去を図る。

がれき撤去は、3月中から先行実施していた三陸地区に続き、
4月11日以降旧大船渡市内でも着手、市内全域で本格化。
各地区とも、基本的には浸水地域の最も北側もしくは山側部分から始まった。

各地区に地元建設業者が分かれ、大型重機を使うだけでなく、
被災者雇用事業を通じてマンパワーを確保。
全壊家屋の柱や家財道具などをトラックに運び入れ、仮置場に移動。

市内の被災面積は、765・1㌶。
今月10日時点の進ちょく状況によると、撤去面積は356㌶、
進ちょく率は47%。
1カ月前にあたる5月10日時点の撤去面積は183・4㌶、進ちょく率は24%。

被災建物が多い沿岸域に近づいても、1カ月ごとの進ちょくペースは変わらなかった。
吉浜地区(被災面積52・7㌶)は47・0㌶で終了、進ちょく率は89%。
越喜来地区(同95・7㌶)は88%、綾里地区(同64・1㌶)は81%。

大船渡地区(同191・6㌶)では開始1カ月で9%、今月10日には42%まで進行。
最も被災面積が大きい赤崎地区(同195・3㌶)の撤去率は28%、
末崎地区(同100・2㌶)は22%、盛地区(同65・5㌶)は27%。

市が掲げた概略スケジュールでは、本年度中に被災地域から撤去したい考え。
進ちょく率では順調ぶりがうかがえるが、市建設課では
「今後は、鉄筋コンクリート施設の解体も多く控え、
終了の見通しを示すことはまだ難しい」

撤去が進む中、対策が求められるのは仮置場の確保。
赤崎中学校では満杯状態となり、一部種類を除いて受け入れを停止。
がれき撤去を終えた大船渡町などでは、集積場として民有地の提供もあるが、
市では現在も場所確保に動いている。

仮置場のがれき処分も迫られる中、太平洋セメント大船渡工場で
焼却作業がスタート。
計画量は、陸前高田市からの搬入分も含めて1日約300㌧。

鉄類を除き、土砂や木材など比較的多種類を工場内のキルンで
焼成処分できるが、5㌢以下に破砕する必要。
当面は、セメント施設内にある設備で破砕を行う。

7月以降、保管場所として予定している永浜・山口地区岸壁に
破砕設備を市が用意し、安定的な焼却処分体制を整える。
同岸壁には3000台近い被災車両が保管、がれき撤去を終えた盛町、
大船渡町の被災地に移動させる作業が始まっている。

仮置場では、平成24年度中に撤去がれきを全て搬出したい。
仮置場などから撤去がれきが集まる永浜・山口地区での搬出終了時期は、
25年度末を目標。

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2011年6月25日土曜日

高田松原の奇跡の一本松 クローン再生に成功 森林総合研究所

(東海新報 6月16日)

東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田市の景勝地・高田松原で、
1本だけ残った「奇跡の一本松」から採取して接ぎ木した穂木が、
滝沢村の森林総合研究所林木育種センター東北育種場で活着。

同場では、4月22日に採取した穂木100本を接ぎ木。
通常の接ぎ木が冬に行われるため、1本でも成功してくれれば、
という不適な時期での試みだったが、
大津波を乗り越えた松の遺伝子が第1関門を通過した。

高田松原は、2㌔にわたって松林の続いた景勝地で、国の名勝に指定。
約7万本のクロマツ、アカマツがあった松林は、
3月11日の大津波に呑み込まれたが、奇跡的に1本だけが残った。

現地では、奇跡の一本松を残そうという取り組みが進められている。
この松の遺伝子を継ぐクローンの苗木を育てる作戦が、同場で進行。

同センターでは、天然記念物や衰退の危機にある貴重な樹木を守るため、
挿し木や接ぎ木で増殖し、育成後に苗木として里帰りさせる
「材木遺伝子銀行110番」という取り組み。
今回も所有者である同市からの申請により、
この事業による里帰りプロジェクトが始まった。

今回は、穂木が老木から採取したもので、
大津波をかぶり激しい塩害を受けていることに加え、緊急を要したため、
通常は木が活動を停止する冬に行う採取が春になったことなど、
育成には不利な要件が重なっている。

同場では、穂木は一般的に10本程度のところ、今回は100本を採取、
その日のうちに接ぎ木。
真水で丹念に塩を流すなど、少しでも生育を助けるための手を打ち、
生育経過が見守られてきた。
屋外育成で、よしずで日よけをして守られてきたが、
13日に4本の苗が活着していることを確認。

春原武志場長は、「冬まで待って採取しようとも考えたが、
一本松は厳しい環境にあり、保存に取り組む団体から
穂を取る話があったので採取した。
できるだけ多くやった方がいいと、100本を接ぎ木。
1本でも成功してくれればと思っていた。
4本が同じ遺伝子を持った松を、後世に残せる可能性を持ってくれて良かった」

今後の育成には、夏本番、北東北の厳しい冬など気象環境にも困難は伴うが、
同場では今回の活着で、第1段階をまずは成功。
丈が50㌢程度に成長すれば、高田松原の親元に里帰りできるよう育てていく。
3年ぐらいの期間が見込まれる。

地元の「高田松原を守る会」などが保護に取り組んでいる
奇跡の一本松はアカマツで、高さが27・7㍍。
樹齢は200年以上と推定。

塩害などによる枯死の危機から救おうと、震災後、周囲に土のうを積んで
海水の侵入を防いだり、根の成長を助ける活性剤を散布するなどの処理が
取られてきたが、1カ月ほど前から徐々に葉の変色が進行。
満潮になると、地盤沈下した地表に海水がしみ出し、根が傷んだとみられ、
現在は、地元有志の造園業者らによる海水流入対策として、
周囲に鉄板が埋め込まれている。

森林総合研究所材木育種センター
http://touiku.job.affrc.go.jp/press/kisekinoipponmatsu.pdf

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2011年6月22日水曜日

岩手大が沿岸に拠点 水産復興支援へ検討

(岩手日報 6月12日)

岩手大(藤井克己学長)は、東日本大震災による津波で甚大な
被害を受けた漁業などの復興支援を目的に、
海洋・水産分野の研究教育拠点を本県沿岸に開設する方向。

内陸部で展開する工学系3研究センターに続く、
第4のサテライト施設」と位置付け、人材の育成にも力を注ぐ。
全国の海洋・水産系大学から客員教授を招くことも視野に入れ、
再生を目指す漁業関係者らの期待を集めそう。

研究教育拠点は、同大が取り組む震災復興プロジェクトの一環で、
「SANRIKU(三陸)海洋産業復興研究教育拠点形成創成事業」として推進。

環境把握・解析と漁業、養殖、加工、流通分野までを研究対象に想定し、
地元関係者や企業とも連携して研究や技術開発を進め、復興を後押ししていく。

同大は、これまで沿岸部への施設展開を行っていなかった。
開設時期や具体的計画はこれからだが、沿岸部の被害状況から、
設置場所は釜石以北となる可能性が高そう。

既存のサテライト施設は金型(北上市)、鋳造(奥州市)、
複合デバイス(花巻市)の各技術研究センターがあり、
いずれも工学部が教員を派遣。
沿岸の研究教育拠点は、担当の学部を固定せず、
学部横断的に全学を挙げて取り組む予定。

従来の施設開設に当たって、地元市町村の全面的支援を受けてきたが、
被災自治体に経済的負担を求めるのは困難。
内陸サテライト施設の実績や沿岸産業の厳しい現状を国に訴え、
予算化を求めていく方針。

沿岸部では、大船渡市三陸町の北里大海洋生命科学部が
2015年度まで5年間、三陸キャンパスの使用を中止。
岩手大の研究教育拠点が実現すれば、
産学官連携の新たな道筋も生まれそうだ。

藤井学長は、「沿岸地域の将来を担う研究者、技術者を育成したい。
地元企業とタイアップしながら、世界に誇る『メード・イン・三陸』の
高付加価値商品化に貢献できれば」と意欲。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20110612_3

2011年6月19日日曜日

水産加工業復興へ一丸 連合会組織が発足 サンマ漁控え要望強化

(東海新報 6月12日)

水産分野の生産・流通・加工業界が、一丸となって
東日本大震災からの復興などに取り組もうと、
県水産生産流通加工業連合会が11日に発足。

気仙沿岸の漁業、水産加工関係者らも役員に名を連ね、
スクラムを組んだ形での活動展開を確認。
関係者は、とくに水産加工業被害に対する国の支援を強く求め、
9月から本格化するサンマ漁に合わせた早期再開に強い意欲。

設立総会は、ホテル丸森で行われ、気仙を含む県沿岸の漁業、
魚市場、水産加工関係者ら約80人が出席。

県近海漁船協会長を務める鎌田和昭設立世話人は、
「サンマ漁業の振興に寄与しようと、昨年から設立準備を進めてきたが、
東日本大震災の発生を受けて一度は躊躇。
今こそ、本連合としての役割が求められる」とあいさつ。

藤原良信参議院議員、黄川田徹衆院議員らも祝辞。
議事では、設立趣意書や設置要領を承認した後、
役員選出では会長職に鎌田氏が就任。
本年度の事業計画や収支予算も確認。

設立趣意書では、東日本大震災から3カ月が経過し、
夏から秋にかけての盛漁期が近づく中、
「漁業・魚市場・加工業の復活は進んでいない」と指摘。
多くの漁業者や関連事業所が廃業、撤退の危機にある。

一分野だけでの機能回復では、地域産業のサイクルは
成り立たない点にも言及。
生産・流通・加工業界の関係者が、一体となって解決策の提言などを
発信することで、早期復旧、復興を急ぎたい考え。
水産加工業の被害は甚大であるとした上で、
本年度の事業計画では重点事項に盛り込んでいる。

議事終了後には、岩手秋刀魚船団の千葉幸男船団長による決議も採択。
生産者は、己のみの復興はありえず、加工、冷凍、流通の
一日も早い復興が望まれる。
生産者と同様、手厚い支援の拡充を図るよう、国、県、市町村に要望する」、
鎌田会長は早速、黄川田、藤原両国会議員に水産加工業への支援を
求める要望書を手渡した。

決議の背景には、水産加工業者の事業再開に向けた焦りや不安が。
多くの雇用を抱え、水揚げが本格化する時期までの修繕を急いでいるが、
冷蔵庫や設備機器など多額の費用が見込まれる。
過去の借入金と合わせた「二重ローン」の負担も重くのしかかる。

大船渡魚市場だけを見ても、昨年のサンマ水揚げ実績は約26億円。
事業再開が遅れれば、魚市場でも買受体制が縮小する形となり、
幅広い分野に影響が及ぶ。

山岸冷蔵㈱の菅原康民代表取締役は、
「漁期を前に、受け入れ体制を作ることが大事だが、
被災して資産がなくなっている。
今は、独自に銀行から資金を調達して修繕しているが、
国の後押しがなければ、今後の復興は難しい。
国が支援するという確かな手応えがほしい」

個人経営の販売、流通業者も組織に入っている
大船渡水産物商業協同組合の佐々木英一理事長も、
「店がなくなって困っている業者が多いが、一人では要望も難しい。
団体行動が大事」と、スクラムを組んだ形での動きに期待。
同連合会では、今後も要望活動を展開し、早期再開を後押しすることに。

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2011年6月16日木曜日

一歩ずつ前へ! がれき撤去視界広く

(東海新報 6月11日)

気仙沿岸に甚大な被害をもたらした東日本大震災から、
11日で3カ月を迎えた。
かつてない規模の大津波は、各地に強烈な爪痕を残した。

大船渡市の中心部では、がれきの撤去が進んでいる。
壊滅的な被害を受けた陸前高田市でも、平坦な土地が一面に広がり、
復興に向けて一歩ずつ踏み出し始めた。

県災害対策本部のまとめ(10日現在)によると、
県内の死者数は4532人、行方不明者は2787人、
自衛隊などによる捜索活動やがれき処理が続いている。

◆大船渡市…完了面積は全体の32%

大船渡市では、8地区(盛、大船渡3地区、の末崎2地区、赤崎2地区)で
がれき撤去を開始した4月11日から1カ月半後の5月25日現在で、
撤去完了面積率は、市全体で32%。

地区別でみると、3月中から先行実施されていた三陸地区が
吉浜(85%)、越喜来(84%)、綾里(64%)。
4月以降、大船渡(19%)、末崎(17%)、盛(13%)、赤崎(10%)、
6月に入り撤去作業はさらにペースを上げている。

太平洋セメント大船渡工場では、22日(水)から気仙両市で撤去した
がれきの焼却処分を始める。

◆陸前高田市…がれき量の回収率24%

陸前高田市では、津波で被災した倒壊家屋の撤去を、
先月23日から本格化。
市建設課によると、これまで市内のがれき量96万㌧のうち、
回収した分は23万7000㌧、回収率は24%(6月1日現在)。

市では、撤去申請された被災家屋(半壊以上)の撤去を実施中。
6日以降は、気仙町(上長部、下八日町、鉄砲町)、
竹駒町(大畑、細根沢)、高田町(寒風)、米崎町(勝木田)、
小友町(両替)、広田町(久保)などで撤去作業を進めている。

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2011年6月13日月曜日

大船渡の復興計画期間は10年 策定委が骨子案

(岩手日報 6月3日)

大船渡市の東日本大震災からの復興計画策定委員会
(委員長・塩崎賢明神戸大大学院教授)は、
市が2020年度までの10年間を復興計画期間とする骨子案を提示。
懇談会で、市民の意見を募った上で、骨子を決定する。

骨子案の計画期間は、
▽前期(11~13年度)、生活再建や産業再開のための
住宅・都市・生産基盤の復旧
▽中期(14~16年度)、整備された基盤を使い、市民と行政の協働で
復興の動きを本格化
▽後期(17~20年度)、災害に強い魅力ある市の創造―と定義。

市民生活の復興施策として、個人住宅再建支援や公営住宅整備、
高台移転や宅地のかさ上げを例示。
心のケアや医療復旧、教育再建を行う。

委員から、「ハード整備中心の防災は非現実的で、減災の観点が必要」、
「医療では、気仙3市町広域での復興が大事」、
「スピード感のある対応を」などの意見。

計画の骨子策定のため、市は6日から11地区で懇談会を開催。
市民の意見を募って骨子を決定し、7月末の計画策定を目指す。

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