(毎日 5月22日)
京都議定書で、温室効果ガスの削減義務を負わない中国。
どうすれば削減に向かわせられるのか?
「中国で研究しませんか」。
トヨタ自動車でバイオ燃料開発などを担当する
BRエネルギー調査企画室が06年、経済産業省所管の
「地球環境産業技術研究機構」(RITE)にこうもちかけた。
テーマは、石炭火力発電所から回収した二酸化炭素(CO2)を
油田に封入する「炭素回収・貯留」(CCS)。
高成長が続く中国のエネルギー問題を懸念したため。
中国の07年の自動車販売台数は、約850万台で日本の1・6倍。
トヨタにとっても巨大市場。
しかし、CO2排出も急増。
05年は、世界の2割近い約50億トンを排出。
安価だがCO2排出量の多い石炭に、1次エネルギーの6割を頼っている。
石油や天然ガス発電を増やせば、
原油価格の更なる高騰に火が付きかねない。
利益率の高い大型車が売れず、トヨタの収益減が懸念される。
「CCSなら、CO2削減と原油増産を両立できそうだ」(トヨタ関係者)。
トヨタは約3000万円を拠出し、適地探しや採算性調査をRITEに委託。
昨年末「黒竜江省の大慶油田なら、事業化可能」との結論。
1トンのCO2回収に60ドルかかるが、0・3トン封入すれば
原油1バレル(約159リットル)の増産が見込める。
封入コストなどを抑えれば採算がとれそうで、
京都議定書のクリーン開発メカニズム(CDM)事業に認定されれば、
封入分を日本の削減分に算入することも可能。
「日中首脳会談に花を添える」。経産省が飛びついた。
中国側も「増産になるなら」と受け入れ、
5月の日中共同声明に急きょ盛り込まれた。
「環境やエネルギーは商品価値の一部だ」。
決算会見で、渡辺捷昭社長はこう強調。
------------------------------
「遼寧省で、出力10万キロワットの発電所を爆破した。
8カ月で253基目だが、中国の省エネ・排出削減の始まりに過ぎない」。
日中両政府が、北京で開いた省エネルギーフォーラム。
曽培炎・中国副首相(当時)のあいさつに、
約500人の日本側出席者は息をのんだ。
中国各地で、石炭火力発電所の爆破が相次ぐ。
効率の悪い発電所5000万キロワット分を、
10年までに廃止することを決めたため。
省エネは中国の経済成長に必須で、
政府は国内総生産(GDP)当たりのエネルギー消費を
10年までに20%削減する計画。
発電所爆破はその一環で、
省エネ達成率は地方政府や企業の人事考課に直結。
100%なら40点、50%なら20点といった具合に点数化。
----------------------------
「想像以上だ。ありがとう」。
雲南省安寧の昆明鉄鋼でボイラーの効率を示すモニターを見ていた
技術者は、日立製作所の社員に笑顔を見せた。
日立は同省の省エネ事業を請け負い、
ボイラーに空気を送り込むファンの消費電力を20%以上削減。
日立は、中国で省エネ技術の販路拡大を狙う。
日中は、「戦略的互恵関係の包括的推進」で合意したが、
温暖化対策にも、先進国と途上国の互恵関係が必要。
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080522ddm002040095000c.html
0 件のコメント:
コメントを投稿