2008年7月10日木曜日

当世留学生事情(7)MBA「日本流」で差別化

(読売 6月25日)

留学生を引き付けることに成功しているビジネススクールがある。
東京都千代田区にある一橋大の大学院「国際企業戦略研究科」。

6月第1週は、自分の使命(ミッション)や将来の展望(ビジョン)など、
学生が自分の思いを英語で語り、議論。
名付けて、「ナレッジ(知識)ウイーク」。

学生は、年齢も肌の色も様々。
スーツ姿もTシャツだけの学生も。
インド人学生が、「若いころから、金銭面だけの展望を掲げていいのか」と
投げかけると、次々と手が挙がった。
「じゃあ、何でビジネススクールで勉強しているの?」
「大金持ちになった後どうするかが一番問われる」。
研究科長の竹内弘高教授(61)は、教室の中心で議論に聞き入った。

MBAを取るなら欧米、という流れを覆すビジネススクールを目指し、
研究科が出来たのは8年前。現在の学生106人中80人が留学生。
東アジアだけでなく、米英仏、中東など学生の出身国・地域は28。
今秋の新入生も、留学生が約8割。

米ハーバード大のビジネススクールで教べんを取った経験のある
竹内教授は、「MBAを持って、実務経験があり、英語堪能。
この3条件を満たす教授陣を集めるのは至難の業」。
若い教授たちをベテラン教授の授業に参加させたり、
ベテラン教授が若い教授の授業を指導したりして、教育力をアップ。

教授陣に実務経験があるからこそ、企業とのつながりも強く、
留学生の日本での就職率は9割超。

日本に呼び込むためには、日本で学ぶ付加価値を持たせることも重要。
米国のビジネススクールと差別化を図るため、
社員が持つ経験や知識を全社で共有し、
商品開発や新規分野の開拓などに生かす「ナレッジマネジメント」を必修。
株主一辺倒でなく、人間中心で、社会貢献や従業員、顧客などを重んじる
日本企業の経営を教えることが特徴。

「日本は、物事の進め方がとても不思議な国。
トヨタに代表されるように、ビジネスのやり方も独特なものがある」
台湾出身で、大学を含め10年間米国で過ごした黄子軒さん(29)。

3、4人の学生に教員1人という割合で、ゼミ形式の授業が多いのも
留学生から好評。
ウズベキスタン出身のアンナ・レメシキナさん(24)は、
「学生と教授たちの間のきずながとても強い」。

教授と一緒に旅行をしたり、居酒屋で過ごしたりといった、
プライベートな交流も、留学生は好意的に受け止める。
「温かく迎えられているという心の部分の魅力も大きいようだ」。

こうした利点がネットを通じた口コミで広がる。
今秋入学予定のフランス人は、在学中のフランス人学生のチャット
(ネット上のおしゃべりの場)を見て興味を抱いた。

同科の取り組みは、魅力あるプログラムがそろえば、
海外からも学生を呼び込めることを示している。

◆MBA(Master of Business Administration)

ビジネス・スクール(経営学大学院)の修士課程修了者に与えられる学位。
実務家養成が目的で、会計、法務などのカリキュラムを実践的に学ぶ。
日本では定義が明確ではないが、ビジネス系の専門職大学院は30校。
MBA取得を掲げるのは、約20校。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080625-OYT8T00201.htm

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