2010年7月23日金曜日

インサイド:次代の針路 第2部 中学部活の再建策/2

(毎日 7月14日)

「もう一本」、「サーブはもっと鋭く」。
大分県南西部の山あい、大分市野津原地区にあるテニスコートで、
中学生たちが声を掛け合いながらボールを追う。
週5日の練習に参加するのは、市立野津原中のテニス部員9人。
昨年秋の県新人中学生大会の女子ダブルスで優勝した
3年生と2年生のペアもいる。

全校生徒82人という小規模校の野津原中にとって、
県レベルでの優勝は初。
指導するのは、顧問の教諭ではなく、総合型地域スポーツクラブ
「七瀬の里Nクラブ」の波多野浩さん(48)。
日本体育協会公認テニス指導員の資格も持つ、
競技歴30年超のベテランで、市役所勤務を終えた夕方から
毎日、コートに立つ。
部員は学校ではなく、このクラブで指導を受ける。

総合型地域スポーツクラブとは、年代にとらわれず
各種競技に取り組めるクラブのこと。
00年、策定された国のスポーツ振興基本計画では、
10年間で各市町村に最低一つは創設する目標が盛り込まれたが、
09年度の統計では、準備中のクラブを含め設置市町村は64・9%
(準備中を除くと47・1%)。
地域に浸透するには、学校との連携が大きな課題。

「Nクラブ」の設立は、04年。
現在、小学生から70歳代まで約800人の会員、
57人の指導者のもとで陸上や球技、レクリエーション種目など
20以上の競技が楽しめる。

野津原中の「部活動支援」は、当初からクラブの活動目的の一つに
盛り込まれている。
クラブ設立に携わり、当時同中教諭だった事務局長、
森慎一郎さん(49)が、部活動の存続に危機感を抱いており、
両者の連携を提案した。

「クラブから指導者を派遣したり、部活動をクラブに移管して、
地域で運営すれば、子供たちが安定してスポーツに取り組める」
創設準備期間中に、保護者と学校、クラブ3者の間に立ち、
教師が立ち会わずに部活動として成り立つのか、
事故の場合の責任の所在--などの問題を明確にし、
3者が納得してスタートできるよう説明などに奔走。

現在、同中には六つの運動部がある。
Nクラブに運営を移管しているのはテニス部のみで、
柔道、剣道部にはクラブから指導者が派遣。
部員2人のサッカーや、部がない野球を希望する生徒は、
Nクラブで他校の生徒に交じって活動。

日本体育協会クラブ育成課の金谷英信係長によると、
総合型地域クラブが部活動を支援する例は全国的に見られるが、
Nクラブの場合、現場の教師が主体となり、
相互の連携を作り上げた点が「画期的」だ。

設立から7年目。課題もある。
クラブを活用する場合、月2000~5000円の参加費が必要。
「あいさつなど、教育的な面まで目が届かない」と心配する指導員も。
野津原中の本田雄二校長も、
「部活は教育の一環で、教員が見るのが基本」との
思いがあるだけに、胸中は複雑。

野津原中の卒業生でもある森さんは、当時も野球部がなかったため、
「泣く泣くサッカー部に入った」経験。
小規模校だからという理由で、子供の可能性を奪いたくない。
地域と部活動の連携を深め、ベストな形を追い求めたい」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20100714ddm035050046000c.html

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