2008年4月18日金曜日

万能細胞 iPSの奇跡 (2)相次ぐ成果 情報共有へ

(読売新聞 2008年2月3日)

「網膜細胞を作るだけなら、1年もあればできます」
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(発生・再生研)の
高橋政代・チームリーダーは、自信たっぷりに言い切った。

山中伸弥・京都大教授が、世界に先駆けて作製したiPS細胞は、
体の様々な組織・細胞に変化(分化)する能力がある。
万能細胞と呼ばれるゆえんで、国内外で研究が活発化。

高橋さんらのターゲットは、網膜の奥にある光を感じる視細胞と、
それを助ける色素上皮細胞。
網膜色素変性症などの患者に移植できれば、
失われた視力を取り戻せるかも知れない。

2005年に、マウスのES細胞から視細胞を作ることに成功。
人のES細胞でも成果をあげている。
昨年からマウスのiPS細胞を使った実験を始め、
すでに網膜細胞の一部を作り出すことに成功。
「iPS細胞は、ES細胞に驚くほど似ている。
ES細胞でできることは、同じようにできるはず」。

中内啓光・東京大医科学研究所教授らは、
マウスのiPS細胞から血小板の分化に成功。
血小板がうまく作れない再生不良性貧血の治療への応用が期待。
近く人のiPS細胞の研究にも着手する。
中内教授は、「臨床応用には、今より100倍の効率で作らないといけない。
ここ1、2年で達成したい」。

岡野栄之・慶応大教授らのグループは、脊髄損傷の再生医療を目指す。
マウスiPS細胞を、神経の元となる細胞に分化させて
脊髄損傷のマウスに移植、効果を確認した。
今は、人のiPS細胞を使ってマウスに移植する実験を進めている。

西田幸二・東北大教授らは、iPS細胞から角膜の細胞に分化させる
研究に取り組んでいる。
できた細胞からシートを作製、角膜移植に使いたい考え。
足の筋肉から作った細胞シートで心臓病の治療に成功した

大阪大の澤芳樹教授も研究を開始。
iPS細胞からの心筋再生に挑む。

一方で、がん化のおそれなど課題も多い。
花園豊・自治医大教授は、
「安全性の評価には大型動物の実験が欠かせない」。

国際競争はさらに激化する。
政府は万能細胞研究に08年度30億円以上を投じ、全面的に支援。
山中教授らは、京都大iPS細胞研究センターを中心に、
国内の研究者を結集したコンソーシアム(共同体)を作り、世界に対抗。
岡野教授は、「チームジャパンが動き出せば、
情報が早く普及するので、研究が加速する」。

コンソーシアム長となる西川伸一・発生・再生研副センター長は、
「幹細胞の研究者だけでなく、医療現場や企業など幅広い分野から
人材を集め、ここの研究成果をみんなで使えるようにしたい」。

http://www.yomiuri.co.jp/science/ips/news/ips20080203.htm

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