2008年12月4日木曜日

運動不足や他の不健康な行動によってうつ病とCVDとの関連を説明できる

(Medscape 11月25日)

Mary Whooley博士(VAメディカルセンター)らは、
うつ病と心臓血管疾患(CVD)との関連性に着手し、
複雑な生物学的過程ではなく保健行動が、
うつ病患者における心臓事象リスク上昇の主な原因[1]。
特に身体的不活動が、おそらく大部分のリスクの原因。

Heart and Soul Studyでは、1000例を超える安定した
冠動脈性心疾患の患者を約5年間追跡調査し、
ベースライン時の抑うつ症状と、その後の心不全、MI、脳卒中、
一過性脳虚血発作、死亡との関連を評価。

うつ病が、心疾患リスクを上昇させることは以前から知られていたが、
可能性のあるメカニズムはこれまで明らかになっていなかった。
Whooley博士は、「ノルエピネフリンの増加、コルチゾルの増加、
心拍変動の低下、血小板活性化など、うつ病の生理学的影響には
関心が多いが、行動面のメディエーターについては注目されなかった。
生理学的メディエーターでは関連を説明できず、
すべて保健行動に関するもののように思われた」。

うつ病患者は、処方された通りに薬剤を服用する可能性が低く、
運動する可能性が低く、喫煙する可能性が高い。
「保健行動について調整すると、うつ病とCVDとの関連は消失した。
うつ病と心疾患との関連は、主として保健行動によって説明されると結論

他の研究と同様、Whooley博士らの解析でも、
うつ病と心臓血管事象との間には明らかな関連が認められた。
4876例・年の追跡調査期間中に発生した341件の事象のうち、
年齢を調整した事象発生率は、抑うつ症状のある199例の被験者では10%、
抑うつ症状のない818例の被験者では6.7%。

共存症および疾患重症度について調整後、
うつ病の被験者においては心臓血管事象のリスクが31%上昇。

抗うつ薬の使用、心拍数の変動性、セロトニン、ω-3sレベル、
ノルエピネフリン、コルチゾルの24時間排泄のような
生物学的メディエーターを解析に含めた場合、
CV事象に対する抑うつ症状の効果量は実質的に変化しない。

服薬アドヒアランス、喫煙状態、身体活動度のような行動面の因子を
解析に含めると、抑うつ症状と心臓血管事象との関連は有意でなかった。

「これらの因子は修正可能であり、人々に運動や服薬を奨励することに
費用がかからないという点で、これは良いニュースである。
厄介なニュースは、行動を変えることが非常に難しいということ。
ノルエピネフリン、コルチソルを低下させる薬剤を患者に処方するだけでなく、
行動療法を開始する必要があり、それらは周知の通り困難である」

最初に患者が運動不足のためにうつ病になったのか、
それともうつ病になった時に運動を止めたのかは問題ではない。
「おそらくそれは悪循環であり、関連は双方向性である可能性が非常に高い。
運動量を増やせば、心疾患リスクを低下させるという最終結果は同じで、
鶏が先か卵が先かは重要ではない。
うつ病患者について忘れてはならないのは、
物事を行う意欲が非常に低下し、患者に運動量を増やし、服薬させ、
禁煙させるには、特別な努力が必要だ」

Heart and Soul試験の結果は、うつ病の被験者における抗うつ薬の使用によって、
心臓血管アウトカムを改善することが可能かどうかの多数の試験が
成功しなかった理由を説明するのに役立つ。

Understanding Prognostic Benefits of Exercise and
Antidepressant Therapy (UPBEAT)試験では、
心臓血管リスクファクターの改善について、抗うつ薬と運動療法を比較。
「事象を予防できるかどうかを調べるのではなく、
炎症の変化などを調べるもの。
それは正しい方向への次の一歩である」

1.Whooley MA, de Jonge P, Vittinghoff E, et al.
Depressive symptoms, health behaviors, and risk of cardiovascular events in patients with coronary heart disease.
JAMA 2008; 300:2379-2388.

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=83829

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