2010年6月30日水曜日

健康格差 日英の現場(2)貧しい妊婦 「仲間」が支援

(2010年6月18日 読売新聞)

貧しい黒人や移民の多いロンドン最貧困地区ハックニー。
ホームレスの避難所に、一人で身を寄せていた
17歳の黒人の少女は、日々膨らんでいくおなかから
目をそらすかのように、夜遊びをしてはマリフアナを吸う
荒れた生活を続けていた。

未婚。妊娠6か月なのに、1度も診察を受けていない。
避難所から連絡を受けた支援グループ「バンプバディ(妊婦仲間)」の
ロレイン・レッキーさん(25)が駆けつけ、声をかけた。

「私も10代で妊娠したシングルマザーなのよ」
肌の色も同じレッキーさんに対し、少女はすぐにうち解けた。
急いで医師の予約を取り、一緒に健診に通った。
子育ての楽しさを伝え、妊娠中の薬物や喫煙は体に悪いとアドバイス。
少女は無事出産。
自活しようと、勉強も始めた。

ハックニーは、10代の妊娠が多く、妊娠中の喫煙率も高い。
妊娠12週までの未受診妊婦は56%、乳児死亡率は平均の1・3倍、
貧しいアフリカ系黒人に限れば3倍に。

「バンプバディ」は名前の通り、貧しい妊婦に対し、
同じような境遇にある女性が支援の手を差し伸べる。
地域振興を目的とする団体が、2007年設立。
これまで76人の仲間が、360人の妊婦を支援。
1年間の活動で、12週未満の未受診率は半分に減った。
路上でも、妊婦を見つけては声をかけ、支援を受けた妊婦が出産後、
仲間に加わる例も多い。

経済的に貧しい人の健診の受診率が低いのは、
健康格差を生む大きな要因。

日本でも、大阪府が分娩を扱う産婦人科160施設を調べた調査で、
未受診妊婦の駆け込み出産152件(2009年)のうち、
33%が経済的な困難を未受診の理由と答え、
21%は妊婦健診があることさえ知らなかった。

国は、妊婦健診の費用を助成する対策をとっているが、
自治体によって自己負担額が異なるうえ、
肝心の当事者に伝わっていない。
府健康づくり課は、「社会的に孤立している人に、
制度を周知することが大きな課題だが、どうすればいいのか

ロンドン・ハックニー地区の対策は、
同じ境遇の仲間が街に出て声をかけることによって、
効果が上がるようになった。
レッキーさんは、「出産の時に付き添うバースバディ(出産仲間)も
生まれ、地域の支援の輪が広がっている。
仲間作りや就業訓練になっていて、私たちのためにもなっている

http://www.m3.com/news/GENERAL/2010/6/22/121928/

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