(読売 9月11日)
中学進学塾「啓進塾」の金沢文庫校をのぞくと、
小学6年の男子塾生たちが国語の問題と格闘。
「麻布や栄光では、必ず出る記述式問題。さあ、しっかり解けよ」。
講師で教務部長の高林範明さん(41)が、厳しい表情で活を入れる。
解説の時間になると、緊迫した雰囲気は一転。
高林さんは、塾生を下の名前やニックネームで呼び、
時にジョークを交えながら、問題を正確に解くコツを指導。
塾生からは、次々に質問が投げかけられていた。
啓進塾は、横浜市内に2教室だけの比較的小規模な塾だが、
栄光学園を始めとする地元神奈川の難関校だけでなく、
東京の私立の名門・麻布中学への合格実績でも知られている。
曽根嘉浩塾長(55)は、「塾生一人ひとりの性格や可能性を
講師が見極め、情熱を持ってとことん付き合う『職人型塾』。
大手塾とは違い、講師と塾生の距離がとても近い」と、
面倒見の良さを強調。
使われる教材は、ほとんどがプリント形式で、講師が毎年、
塾生の学力などに応じて作り替える。
問題作りから採点まで、すべて手作業。
授業時間外の指導は日常的に行われ、学力面だけでなく、
精神面のケアも重視する。
取材中も、授業の合間や終了後に、講師と塾生が
1対1で向き合う姿がよく見られた。
学習塾の講師は、一般的に学生アルバイトも含め、
非正社員が占める比率が高いケースが少なくないが、
同塾の講師は、全員が正社員。
塾の指導理念に沿って、講師を育てていることも特徴。
その理念とは、受験勉強を通して子どもたちの思考力や
感受性を磨き、豊かな人間性を育むこと。
これは、麻布中の教育方針と共通する点もあることから、
おのずと麻布合格に向けた指導にも力が入る。
小学4年から同塾に通う横浜市の小学6年男子(11)は、
「受験勉強にくじけそうになった時、先生が自分の経験を交えながら、
やる気を引き出してくれた。
学力も伸びたし、精神的にも強くなったように思う」
同塾の様々なこだわりは、公教育への疑問が出発点。
「学校は、『教育の平等』のもとに、他人との差に気づく機会を
奪っている。
受験をきっかけに競い合うことで、子どもたちは自分を発見し、
自己を鍛える目標を見つけることができる」と曽根塾長。
◆メモ
全国学習塾協会が05年、全国の学習塾を対象に実施した調査によると、
講師に占める非正社員の比率は平均56.9%。
非正社員の内訳は、大学生が42.9%と最も多く、
主婦(15.9%)、その他兼業者(10.3%)の順。
講師の確保が難しい理由は、「勤務時間帯が遅い」、
「勤務時間が変則的」、「賃金水準が低い」などが上位。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100911-OYT8T00178.htm
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