(読売 10月8日)
山口県下関市豊浦町にある県立響高校。
夏休みの武道場で、相撲部員たちがまた割りをしている。
開脚して体を前に傾ける、相撲の稽古に欠かせない柔軟運動。
その練習に、細身の野球部員数人が交ざっている。
「野球に必要な足腰の筋肉や柔軟性が、
相撲の基本動作で鍛えられる」、野球部の2年、中司伎君(16)。
「授業で初めて相撲を習ったころ、興味がなかったけれど、
礼を重んじるルールを知るうちに、奥が深いと思うようになった」
同高の男子生徒は、保健体育の授業で、
相撲を1、2年生が必修、3年生は選択。
年に15時間程度で、内容は、まわしの着け方から、
基本動作、技、取り組み方まで。
授業がきっかけで、相撲部の基本練習に加わったり、
相撲大会の応援に駆けつけたりと、相撲に関心を持つ一般生徒が増えている。
相撲の授業は12年前、相撲部監督の朝岡輝喜教諭(46)の
発案で始まった。
相撲を通じ、体力だけでなく、精神力を向上させるのが狙い。
当時、相撲部は創部したばかり。
朝岡教諭は、「相撲部員が教える側に回れば、何か得るものがあるはず。
一般の生徒には、『相撲部員は、ただ太っているのではなく、
厳しい稽古から礼儀を学んでいる』と知ってもらえる」と考え、
部員の力を借りることにした。
相撲部の2年、村上洸一君(17)は、
「自分が理解していないと教えられない。
逆に、しっかり理解していると、それは自分の力になると思った」
1年の田中義久君(16)は、「教えるのは大変だが、
相手に伝えることで、基礎を確認できる」
心技体を養う武道の力が注目、2012年度から全国の中学校で
武道の必修化が始まる。
武道の経験が浅い教員向けに講習会を開くなど、
必修化に向けて様々な対応が求められる。
部活と授業の連携は、武道の神髄を広く生徒に理解してもらう
きっかけの一つになる。
「武道は、相手がいないと成立しない。
勝っても負けても、相手に敬意を表す。
その感謝の気持ちが大切なんだ」と、朝岡教諭が赴任した15年前、
同高に相撲部はなかった。
今では、大相撲力士の豊響らを輩出し、
街全体が相撲の話題であふれている。
小中高校が連携した相撲の指導も活発化。
部活と授業の相乗効果が、地域全体に広がっている。
◆武道の必修化
中学1、2年の体育授業で、選択制だった武道が必修科目。
種目は柔道、剣道、相撲が基本だが、授業の環境が整えば、
地域や学校の実態に応じて、なぎなた、弓道、空手道、
合気道、少林寺拳法といった武道も指導できる。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101008-OYT8T00180.htm
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