(毎日 11月4日)
朝日が水面に映える午前6時半。
兵庫・相生湾に、船首に竜の顔、船尾に竜の尾をかたどった船が進む。
側面には竜のうろこ。
「相生ペーロン 磯風漕友会」が操るドラゴンボートだ。
メンバーのほぼ全員が、地元の男性看護師。
22人が乗り込む大人数の団体競技だが、日本代表コーチを務める
同漕友会の河田英幸監督(46)は、
「この競技に(単独の)ヒーローはいらない。だから面白い」と笑う。
相生市では1922年から、中国発祥のドラゴンボートと同じ起源を持つ
伝統行事「ペーロン競漕」が行われている。
ぺーロンには、「飛竜」、「白竜」などの意味。
98年、市立看護専門学校教員の河田監督らが中心になり、
チームを結成。
河田監督は、「きつくて大変な職業と思われがちな看護師が、
『元気だぞ』というところを見せたかった」
日本ドラゴンボート協会の勧めで、01年から競技会の
日本選手権(大阪)にも出場。
アジア大会への代表選考会となった今年7月のレースを制し、
大会3連覇を果たした。
現在、メンバーは34人。
カヌーやボートの経験者は一人もいない「雑草集団」だ。
練習も独創的。
アジア大会が迫った最近でこそ、相生湾での水上練習を
組み込んだものの、普段の練習は専門学校の敷地内に設置した
巨大な鉄製水槽(長さ7m、幅5m、高さ1・3m)で、パドルをこぐ練習を行う。
時間は、日勤が終わる午後7~9時。
河田監督は、「(湾での)水上練習に傾き過ぎると、
職場に戻ってこなくなる。
私たちの本分は看護師だから」と強調する。
船の先頭で太鼓をたたく司令塔の山本聡(36)は、
「力強いこぎだけではなく、全員のタイミングが合わないとスピードは出ない」
1匹の蛇がはったような波は、22人の心が一つになった証拠。
今回は、カヌーの一種目として出場するが、
将来は五輪入りを目指したい、という関係者も多い。
本場・中国でのアジア大会は、その絶好のアピール機会となる。
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◇ドラゴンボート
250m、500m、1000mの3種目で行われるタイムレース。
国際大会では長さ12m、幅1mのボートにこぎ手20人、太鼓手1人、
かじ取り1人の計22人が乗り込む。
古代中国の春秋戦国時代に原形ができたとされ、
1970年代から競技化が進んだ。
91年、国際連盟が設立、現在、63カ国・地域が加盟。
日本協会は92年に発足。
http://mainichi.jp/enta/sports/archive/news/2010/11/04/20101104dde035050027000c.html
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