2009年4月25日土曜日

デジタル・チャイナの郭会長「海外企業と連携」

(日経 4月15日)

◆郭 為氏(かく・い)
1988年中国科学院修士号取得、聯想集団(レノボ・グループ)入社。
97年から執行役員兼上級副社長。
2000年から聯想神州数碼(現・神州数碼控股)総裁。
01年の聯想集団からの分離独立後も総裁などを務め、
07年から会長(取締役会主席)。46歳。

◆神州数碼控股(デジタル・チャイナ)
2001年、中国パソコン最大手、聯想集団(レノボ・グループ)から分離独立。
パソコンやサーバーなどIT製品の販売やシステム構築などの
ITサービスを手掛ける。政府や金融機関向けに強い。
08年3月期の売上高は352億香港ドル(約4460億円)、
純利益は4億香港ドル(約51億円)。本部北京市。

2ケタ成長が続いてきたIT(情報技術)業界。
中小企業にすそ野が広がり、中国の雇用を支えてきたが、
世界的な不況の影響を受けて減速傾向が出ている。
システム構築などを手掛ける神州数碼控股(デジタル・チャイナ)の
郭為会長に、IT業界の動向や経営戦略などを聞いた。

——中国のIT業界の動向は?

「金融機関向けなどのシステム構築でも、金融危機の影響は出ているが、
IT分野の需要は大きく、これからも確実に成長は続く。
我々の収入は、2007年は前年比30%増、08年は25%増、
今年は10%前後増えると個人的にはみている」

——海外市場を開拓する考えはあるか?

「中国市場の成長が続くと考えており、今のところ海外市場に
進出する考えはない。
米ヒューレット・パッカード(HP)や東芝など、海外企業と取引関係がある。
海外企業との協力関係を強化して、中国市場のニーズを
しっかりとつかんでいくことに重点を置く」

——多くの中小企業がIT業界を支えているが、中小の経営状況はどうか?

「非常に資金繰りが厳しい。
政府の金融支援策で、大量の資金が流れ込んできてはいるが、
中小企業向けの割合は少ない。
銀行は、相変わらず中小企業に対する貸し出しに慎重な姿勢。
優良な取引企業に対して、我々が実質的な融資をしているというのが実情」

「中国経済の国内総生産に占める中小企業の比率は6割で、
納税に占める割合は5割。
国有企業の退職者の8割が中小企業に再就職。
こんなに貢献度が大きいのに、金融機関の中小企業向け融資の
比率は15%に過ぎない

——どのような対策が必要か?

専門の『産業銀行』を設立するべき。
IT企業を含め、中小企業の重要な資産は人材であり、知的財産権だ。
建物などの担保となる固定資産がないから、
既存の金融機関は融資に慎重だが、専門の『産業銀行』は
人材などをしっかり評価して、融資をできるようにするべき」

「政府と中堅・中小企業、金融機関が協力を深める必要。
『専門銀行』は、政府の支援を受けて、専門の中小企業を育成する
ファンドを設置すべき。
中小企業向け融資を増やすだけでなく、中小企業の連携を
強化する役割を担うべき

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090413_2.html

WHO 今年中にも新基準を公表へ HbA1cを糖尿病の診断基準に

(2009年4月17日 Japan Medicine(じほう))

世界保健機関(WHO)が糖尿病の診断基準に、
HbA1c値を導入する方向で議論を進めている

カットオフ値は、HbA1c値と糖尿病網膜症の発症率との相関を検討し、
定める方針。
空腹時血糖値をはじめとした従来の診断基準では、
持続性高血糖を十分に示していないと判断。
今年中にも、新たな診断基準を公表。

WHOがもともと1998年に定めた糖尿病の診断基準は、
<1>空腹時血糖値≧126mg/dL
<2>75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)2時間値≧200mg/dL
<3>糖尿病の症状と随時血糖値≧200mg/dL
以上のいずれかの場合。

改訂に際し、WHOでは各国の糖尿病の専門家を一堂に集めた
「エキスパート・コンサルテーション・ミーティング」を開催。

日本の代表として会議に出席した日本糖尿病学会の門脇孝理事長
(東京大大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科教授)は、
「従来の診断基準とともに、HbA1cを取り入れようという意見が相当強かった」

HbA1cの有用性は指摘、測定法の違いや国家間での
測定値のバラツキがあることが国際的な指標として用いる上での課題。
2007年から国際標準化が進み、“バイアス”が解決、検討をスタート。

HbA1cは、採血時から過去1、2カ月間の平均血糖値を反映する指標。
インスリン作用の不足を示す“持続的な高血糖”を示すのに
「今、考えられる一番良い指標」
1人の患者が異なるタイミングで検査を受けた際の再現性も高いというメリット。

従来指標として用いられてきた空腹時血糖値や75gOGTTは、
空腹時やブドウ糖を負荷した特殊な条件下で測定、
「24時間の血糖値を反映する指標にはなりにくい」(門脇氏)。
検査前何日かの食事内容の影響を受け、再現性も懸念。

治療目標として活用されているHbA1cが診断基準に加わることで、
「診断の根拠から治療のターゲットまで一貫し、空腹時の採血も必要ない。
プライマリケア医にとっても患者さんにとってもメリットは大きい」

HbA1cを指標として用いる上での課題について、
「赤血球寿命が短縮している病態には使えない」
溶血性貧血や肝硬変、出血があるケースなど。
「アフリカで発生しているマラリアが溶血性貧血を起こすことから、
今回の会議でも議題に」
従来の空腹時血糖値や75gOGTTでの診断が必要。

日本糖尿病学会の診断基準検討委員会では、
このような世界の流れを踏まえ、議論をスタート。

現行のガイドラインでは、
<1>早朝空腹時血糖値≧126mg/dL
<2>75gOGTT2時間値≧200mg/dL
<3>随時血糖値≧200mg/dL
を2度以上確認、または1度確認し明らかな糖尿病の症状がある、
など持続的な高血糖の存在に合致する所見を有する患者を糖尿病と診断。

基準は、「日本独自の根拠をもって決めた」ことから、
空腹時血糖値や75gOGTT2時間値の診断基準に該当する
HbA1c値についてのわが国のデータを検討。
網膜症の発症率についても検討。

広島原爆障害対策協議会が行う「被爆者の健康管理に関する調査研究事業」
のデータを引き合いに出し、HbA1cが(現在の治療目標である)6.5%以上を
超えると、「明らかに網膜症の発症率が増加」

「早期発見・早期管理のため、6.5%より低い値が望ましい。
わが国のHbA1c値とWHOや米国でのHbA1c値の間の“バイアス”も
十分に考慮に入れて策定をする必要」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/4/17/95463/

スポーツ21世紀:新しい波/299 市民マラソン熱/7

(毎日 4月11日)

札幌市白石区で居酒屋を営む日景一雄さん(62)は、
毎日の仕込みの前、近くの公園を2~3時間走る。
もう10年以上も最高の舞台と位置付けるのは、
国内の湖で3番目の広さの北海道・サロマ湖をほぼ一周する
「サロマ湖100キロウルトラマラソン」(今年は6月28日)。
24回目を迎える大会で、12回目の完走を目指す。

50代前半からは、心臓病と闘いながら走り続ける日景さん。
「長く病と付き合い、体を知りきっているからこそできる挑戦。
これが生きる力を支えていると感じる」
そんなランニング哲学を聞こうと、店には北海道内外から客が訪れる。

フル(42・195キロ)を超える大会は「ウルトラ」と呼ばれ、
北は利尻島(北海道)、南は宮古島(沖縄)まで、全国で50大会を超え、
新設も相次ぐ。
老舗的な位置づけのサロマは今年、定員を大幅に増やし、
3月の締め切りまでに「50キロの部」を含め3957人が応募。
10年間で規模は2倍。

ウルトラは、フル、ハーフの大会に比べ、参加者の年齢層は高めで、
40~70代の中高年が7割を占める。

国内外で数々のウルトラの大会を運営し、普及に貢献してきた
海宝道義さん(65)=東京都町田市=は、
「若い層が増えたのが最近の特徴だが、それでも完走率は中高年が高い。
年齢を重ね、多くの経験を経たほど、丸一日楽しむことができる

今年5月24日、大阪城公園を発着点に淀川河川敷を走る
新しい大会が産声を上げる。「水都大阪ウルトラマラニック」。
大阪城を拠点に練習会を開くクラブが主催し、
100キロと70キロの部合わせて300人の定員は応募開始直後に突破。
急きょ増員したが、1000件にも上った問い合わせの多くには
応えきれない人気だった。

実行委員長の佐田富美枝さんは、
驚いたのは、ウルトラに初めて挑む若い層が多かったこと。
北海道や沖縄まで遠征できない層にも、ウルトラの楽しさに触れてほしい」
レース終盤のエイドステーションにたこ焼きを用意し、
大阪の地域性を強調する予定。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

「グランドスラム」への扉(最終回)盛田正明氏 日本選手育成、10年計画で

(日経 4月1日)

盛田氏は、日本人選手は世界で戦う精神力や経験が不足していると指摘。
日本人は、テニスの技術は劣っていない。
日本人も、ジュニア選手は世界で活躍。
ジュニアは、技術が高ければ外国人選手にも勝てる。
プロになると、通用しなくなる。

プロテニスは格闘技だ。
グランドスラム大会になると、男子は1試合で3、4時間かかることも。
優勝を争うには、2週間かけて厳しい試合を勝ち抜かなければいけない。
どう最後まで気力を持たせるか。
自分の実力を90%出せるか60%しか出せないか、それで勝敗が決まる。

多くの日本人は60%しか出せない。
精神力や体力・気力で、負ける部分が大きい。
「おにぎりを食べないと力が出ない」などと言っているようでは勝てない。

女子でトップの杉山愛選手が、100%力を発揮できるのは
海外遠征に慣れ、英語で外国人と対等に渡り合えるからだ。
欧州は、テニスの世界では国境がなく、
子供のころから外国を飛び回って経験を積んでいる。
ジュニアを留学させている米IMGアカデミーには、
世界中からトップ選手が集まっている。

錦織圭選手は、普段は日本を忘れて戦っている。
環境さえ用意すれば、日本人でも絶対できる。

テニス協会会長になり、日本に国際大会が少ないと言われ、たくさんつくった。
日本にいても、国際大会に出場するためのポイントを稼ぐことができる。
グランドスラムの予選に出場できるが、多くが1回戦で負けてしまう。
欧米の選手は、日本の大会のためにわざわざ遠征に来ない。

中国や韓国などの大会とシリーズ開催し、
欧米の選手が数カ月アジア遠征して、ポイントを稼げる環境を
整えなければ、大会のレベルは上がらない。

盛田氏は、ジュニア育成が日本テニス発展のために最も重要。
企業が新製品を開発したり新しい事業を成功させたりするには、
10年単位で考えなければいけない。
現在経営が悪化している会社は、10年前に何もしなかったから、
今売るものが何もない。
いま業績がいい企業は、10年前の経営者が種をまいていたからだ。

テニスも同じだ。
錦織圭というトップ選手の出現が、日本テニスのレベルを底上げ。
錦織選手にあこがれるジュニアが増えている。
セルビア共和国という東欧の小さな国から、
トップ選手が数多く出ているのは、同国出身のモニカ・セレス選手の
活躍の影響が大きい。

今、ジュニア育成に力を入れておけば、私がいなくなったころに花が咲き、
世界で活躍する選手がもっと増えているだろう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/hiroku/hir090331.html

2009年4月24日金曜日

緑の経済:環境ビジネス、雇用280万人に倍増--政策案を公表

(毎日 4月21日)

斉藤鉄夫環境相は、温室効果ガス排出削減など環境対策を実行し、
日本経済を強化するための政策案「緑の経済と社会の変革」を公表。
実施した場合、環境ビジネスの市場規模は70兆円(06年)から
120兆円(20年)、雇用は140万人から280万人に拡大。
イタリアで開催される主要8カ国(G8)環境相会合でも紹介。

政策案は、環境エネルギー施策で景気浮揚を目指す
「グリーン・ニューディール」に加え、低炭素社会、自然共生社会などを
実現するための中長期的な方針も盛り込んだ。
環境相の考え方としてまとめたものだが、麻生太郎首相にも了解。
他省庁の事業にも踏み込み、追加経済対策や内閣府、経済産業省の
「未来開拓戦略」の内容も含んでいる。

政策案は、
▽社会資本
▽地域コミュニティー
▽消費
▽投資
▽技術革新
▽アジアへの貢献
の6本柱からなる。
社会資本の具体的施策としては、学校施設への太陽光発電導入、
消費ではエコポイントによる省エネ家電購入促進など。

排出量取引制度や環境税など、省庁間で意見が分かれている
政策の実施、プルサーマル推進も提案。

斉藤環境相は、「昔は、環境は経済の制約要因とされたが、
社会を変革することで、環境が経済を引っ張っていくことができる
という思いを込めた」
==============
◇緑の経済と社会の変革の主な施策◇

・小中学校への太陽光発電導入
・国の施設・事務の省エネ化
・地域グリーンニューディール基金の創設
・森林整備のためのカーボン・オフセット活用
・小型家電からのレアメタルリサイクル
・エコポイントによる省エネ家電の爆発的普及
・住宅の断熱リフォーム支援
・次世代自動車の普及促進
・排出量取引制度
・環境税導入を含む税制のグリーン化
・20年に再生可能エネルギー比率を20%に
・太陽電池の飛躍的効率向上、低コスト化
・二酸化炭素回収貯留技術を20年までに実用化
・東アジアの大気汚染把握と対策

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/04/21/20090421ddm001010032000c.html

携帯の電磁波:子どもへの影響は? 東京女子医大など、大規模調査を開始

(毎日 4月21日)

携帯電話の電磁波による健康影響に関心が高まっている。
世界保健機関(WHO)傘下の国際がん研究機関(IARC)は、
日本を含む13カ国参加の共同疫学調査の結果を分析中。
日本の携帯電話加入数は、1億を超え子どもにも急速に普及、
長期的な影響を調べたデータは少なく、大規模追跡調査が始まった。

日本衛生学会のシンポジウム。
携帯電話の電磁波による健康影響について報告が相次いだ。
武林亨・慶応大教授(公衆衛生学)は、日本の研究では脳腫瘍などとの
関連を示すデータは出なかったと発表。

「北欧では、長期使用者で携帯電話をあてる側に発生リスクが上昇。
国際的疫学研究の全体の解析結果を待ちたい」

東京女子医大の佐藤康仁助教(公衆衛生学)は、
「成人については疫学研究が行われている。
小児を対象とした研究はほとんどない。
WHOが優先度の高い研究課題に位置づけている」

IARCが解析中の国際的疫学研究(インターフォン研究)も、対象は成人。
日、欧、豪州、イスラエルなど13カ国が共通の研究計画で実施。
日本では00年から4年間、首都圏に住む30~69歳の男女で、
脳腫瘍や聴神経鞘腫と診断された患者と健康な人を対象に実施。

神経膠腫、髄膜腫などの脳腫瘍や聴神経鞘腫の発症率は、
携帯電話使用の有無で差がなかった。
携帯電話をあてる側と腫瘍との関連もみられなかった。

10年以上の長期使用者では、携帯電話をあてる側でリスクが上昇する結果が、
一部の国で出ている。
スウェーデンでは、聴神経鞘腫の発症率が3・9倍、
北欧と英国5カ国のデータを合わせて解析した結果は、1・8倍。

WHO国際電磁界プロジェクト事務局の勤務経験がある
大久保千代次・電磁界情報センター所長は、
「長期使用者の症例数が少ないうえ、右側に脳腫瘍ができれば、
右側に携帯電話をあてていたと思いがちだ」と、調査結果に疑問。
IARCは各国のデータを一つにして解析中で、
WHOが11年にも健康影響の評価書を作成する。

WHOは96年、国際電磁界プロジェクトを発足。
現在は60カ国以上が参加し、携帯電話に限らず、
0~300ギガヘルツのさまざまな周波数の電磁波リスク評価に取り組む。
子どもについては、高圧送電線と小児白血病との関連が研究され、
07年にリスク評価書が発表。

送電線の周波数は、50~60ヘルツと超低周波。
浴び続けると、白血病の発症頻度が上がる。
評価書は、0・3~0・4マイクロテスラ(テスラは磁界の強さ)以上だと、
小児白血病が倍増するという疫学調査結果。

動物実験では発がん性が確認されず、関連を示す証拠は強くない。
携帯電話の電磁波は送電線とは違い、1ギガヘルツ前後の高周波。
これまでの動物実験では、携帯電話と同レベルの電磁波が、
生体に影響をもたらすという再現性のある研究結果は確認されていない。
総務省も、健康に悪影響を与える科学的根拠はない。

なぜ、子どもへの影響が心配されているのか?
山口直人・東京女子医大教授(公衆衛生学)は、
「子どもは今の大人より長期間使うことになるし、頭部の形状も大人と違う」
携帯電話は頭部に密着させて使ううえ、使われ始めてからまだ年数が浅い。
影響を十分調べたとはいえない状況。

日本では、昨年から総務省予算で、東京女子医大が中心となり、
インターネットによる疫学調査を進めている。
小学4~6年の保護者が対象で、子どもの携帯電話の使用状況や
入院の有無などを、定期的に電子メールで回答。
小児の脳腫瘍は、10万人に2人程度と発症率が低く、
信頼性の高い結果を得るには多くの参加者が必要。

携帯電話と脳腫瘍については、米国では訴訟が起きている。
この問題に詳しいジャーナリストの矢部武さん(55)は、
「米国の訴訟では、労災が認められたケースも。
安全性が証明されていない中で、英国のように子どもは携帯電話の使用を
控えるよう勧告している国も。
利用者は、リスクがありうることを知った上で使ってほしい」

電磁波とは、電場と磁場の変化によって空間を伝わる波。
赤外線や可視光線、エックス線などは波長が短く、
波長が長いものは、一般に電波。

人体が強い電磁波にさらされると、神経などへの刺激作用がみられたり、
電磁波のエネルギーが吸収され体温が上昇する熱作用が起こる。
国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)の定めるガイドラインや
日本の電波防護指針(90年)は、これらの作用を考慮して作成。

電波防護指針は、人体に影響を及ぼさない電波の強さを示す指針で、
携帯電話が出す電波の強さは基準値を下回る。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090421ddm016040130000c.html

挑戦のとき/8 東京工業大准教授・八木透さん

(毎日 4月14日)

失明患者の失われた光を、神経への電気刺激で取り戻す。
約15年前の学会で「人工視覚」の研究計画を発表。

だが、「そんなことは不可能」と賛同者はほとんどいなかった。
「若くて大胆だったせいかもしれないが、
絶対にできるとの思いは揺るがなかった」と、八木さんは研究を続けた。

世界で20以上の研究チームが、患者に「光」を見せる研究に取り組む。
仕組みはこうだ。

障害を受けた網膜などを電気で刺激する。
神経が「光を受けた」と認識し、脳が光を感じる。
この光の点を増やせば、ものの形を電光掲示板のように
脳に「見せる」ことができる。

八木さんは01年、人工視覚の国家プロジェクトに参加。
民間企業に移り、試作装置まで作り上げた。

高校時代は文学が好きだった。
「大学も文学部へ」と考えたが、英語が苦手だった。
教諭から「理系の点数がいいから」と勧められ、
名古屋大工学部機械工学科に入学。

大学1年のとき、認知心理学の授業で自分がやりたいことに出合う。
濃さの違う帯が並ぶ絵を眺めると、帯の境界が明るい方はより明るく、
暗い方がより暗く強調されて見えた。

「マッハ効果」と呼ばれる現象。
神経レベルで解明され、コンピューターの画像処理に使われている、と知った。
「面白い。機械をやっている場合じゃない」

「目と脳を知りたい」と、医学部の授業に潜り込んだり、独学で知識を蓄えた。
大学4年から、人間の目の動きを再現するロボットの目作りに取り組み、
やがて「ロボットの目を人に使えば、視力を失った人を救える」と、
人工視覚の研究に足を踏み入れた。

実は、世界の人工視覚研究は足踏み状態にある。
目に埋め込む装置が小さく、神経に刺激を伝える電極の数を増やせない。
八木さんは、集積回路に神経細胞を付着させ、
その神経細胞と電極をつなぐ「バイオハイブリッド型」で打開を目指す。
電極にはたんぱく質を使う計画。

「従来の人工臓器は完全な人工物だった。
今後は、工学と再生医療の融合が実用化を推進するのではないか」

8人の学生が所属する研究室を切り盛りする「指導者」でも。
卒業した学生から「この研究室だから頑張れた」と言われ、手応えを感じた。
いいアイデアは、多くの無駄や自由な発想から生まれる。
若い学生と話していると、ここから次代のアイデアが生まれるに違いない」
==============
◇やぎ・とおる

名古屋市出身。工学博士。96年名古屋大大学院博士課程修了。
理化学研究所などを経て、01年、ニデック人工視覚研究所長。
04年に東京大先端科学技術研究センター客員研究員、05年から現職。

http://mainichi.jp/select/science/rikei/news/20090414ddm016040083000c.html

「グランドスラム」への扉(11)盛田正明氏 錦織選手、ファンドで留学

(日経 3月31日)

盛田氏が2003年に設立したファンドは、
有望なジュニア選手を毎年米国に留学。

元プロ選手でコーチの坂井利郎氏や丸山薫氏が、
小学校5年生から中学校1年生までの有望なジュニア選手を選ぶ
選考会を開いている。

選ばれた選手は、プロ選手を育てている
米ニック・ボロテリーテニスアカデミー(IMGアカデミー、フロリダ州)に派遣。
友人のマーク・マコーマック氏が創業した米IMG傘下の養成所で、
マリア・シャラポワ選手ら多くのトッププロが卒業生。

年間数十万ドルになるファンドの運用益を、選抜ジュニアの渡航費や
コーチ代などに充てている。
これまで13人を派遣、4期生に錦織圭選手がいた。
彼は、小学生の時から全国大会で優勝するなどの実績があったが、
留学した時に世界で通用するかどうかは正直言って分からなかった。

IMGアカデミーには、世界中のジュニアが留学、
日本人でトッププロとして成功した例はなかった。

成功するかどうかは、環境やコーチとの相性もある。
IMGで成功しなくても、他の環境ならうまくいく場合も。
親のサポートもそれぞれ異なる。
杉山愛選手は母親、シャラポワ選手は父親のサポートが大きいが、
伊達公子選手のように自分で管理できる人もいる。

人間は非常に複雑で、様々な条件がそろって初めて成長する。
決まったやり方があるわけではない。
13、14歳で親から離れて海外で1人で生活するのは、簡単なことではない。
ファンドからIMGに日本人のコーチを派遣し、
日本のジュニア選手を世話してもらっている。

錦織選手にとって、IMGにハラミロ氏という
優秀なヘッドコーチがいたことも幸運。
マネジャー的な仕事にも秀でた人物で、
成長段階に応じて専任コーチを代えるなど、選手をトータルでうまく管理。
IMGには、全世界から300-350人のジュニア選手が集まって練習。

錦織選手のように、特待生に選ばれるのはほんの一握り。
特待生に選ばれ、初めてIMGの真価が発揮。
特待生は、世界最高水準のトレーニングを受けられる。
精神面やメディア対応などを訓練する機会もある。

特待生に選ばれなければ、帰国して日本のコーチが育成した方が、
むしろ一生懸命育ててくれる。
試行錯誤しながら1つ1つ実行していったら、
錦織選手のような世界に通用する選手が出てきた。
もちろん1人だけでは満足していない。
今は、錦織選手の次のジュニア選手をどう育てるかで、頭の中が一杯。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/hiroku/hir090330.html

2009年4月23日木曜日

遠野発の創作仏壇 北上山地製作組合が試作

(岩手日報 4月21日)

遠野市の北上山地家具製作協同組合(千葉和夫代表理事)は、
遠野産のケヤキと奥州市の南部鉄器、浄法寺漆を使った
「創作仏壇」を試作。

経済産業省の地域資源活用販路開拓等支援事業の
補助金約250万円を活用。
県内の特産品と民芸家具製作の技術を結集。

「職人技術の継承と県産材の利用拡大のため、
新商品として売り出したい」と意欲。

創作仏壇は、高さ1・75メートル、幅1・2メートル、奥行き0・75メートル、
6人の職人が4カ月がかりで完成。
遠野産のケヤキを主材とし、内装は宝形造のお堂のような作りで
中尊寺をイメージ。柱には、螺鈿細工を施した。
引き出しなどの飾り金具には、奥州市の南部鉄器を使用。
浄法寺漆塗りで仕上げ、岩手の素材と技術にこだわった。
同組合は、特注家具の生産も手掛け、首都圏の顧客から
「民芸調の仏壇がほしい」と受注があったことも開発のヒントに。
重厚感と木のぬくもりを併せ持つ仕上がりに、関係者も自信を深めた様子。
同組合は、価格設定やデザインなどの検討を再度重ね、
首都圏へのPRなどを展開し、商品化につなげる考え。
千葉代表理事は、「家具に関しても、格安な輸入品が出回る一方で、
高級品志向も根強くある。
岩手には、そのニーズに十分応えられるだけの材料と技術があり、
今後も新たなデザイン家具の開発に努めたい」と意欲的。
試作品の問い合わせは、同協同組合(0198・62・2525)へ。

高度道路交通システムのモデル都市選定

(サイエンスポータル 2009年4月13日)

子どもが交通事故で死亡する痛ましいニュースが伝えられている。
2007年中の交通事故による死者数は、5,744 人と一時よりはだいぶ減り、
1953 年以来54 年ぶりに5 千人台。

交通事故の発生件数は年間83 万件を超え、約30秒に一人の割合で
死傷者を出し続ける“疫病神“に。

政府の長期戦略指針「イノベーション25」は、2025 年に目指す
「安全・安心な社会」の実現に向け、高度道路交通システム(ITS)を活用し、
交通事故の著しい減少を図ることを掲げている。

内閣府・総合科学技術会議の社会還元加速プロジェクト
「情報通信技術を用いた安全で効率的な道路交通システムの実現
(プロジェクトリーダー・奥村直樹 総合科学技術会議有識者議員)」は、
ITS 実証実験モデル都市として青森、横浜、豊田の3市を選定。

2012 年度末までにさまざまな実験を行い、効果を検証し、
ITS の利用の先進事例としたい。
実証実験の一つの柱は、情報通信技術を活用して
高度道路交通システム(ITS)をさらに発展させる。
ITSは、人と道路と車両を一体のシステムとして構築すること。

1月、国内すべての自動車、二輪車メーカーと海外メーカー2社の
車両30台による「車車間通信を利用する安全運転支援システム」の
実証実験が行われた。
1991年にスタートした国土交通省の先進安全自動車(ASV)推進計画の一環。
ASVとしては、既に車に搭載したセンサーを用いて安全運転を支援する
システムの実用化が進んでいる。

自律検知型安全運転支援システムとよばれるもの。
前方を走行中の車との距離をセンサーが感知、追突の恐れがあるときに
運転手に警告、仮に運転手が気付かなかった場合は自動ブレーキが作動、
追突しても軽い被害で済む技術などが実用化。

この日行われた実験は、自律検知型システムでは対処困難な事故を
防止するための安全運転支援システムを対象。
見通しの悪い場所における追突事故、出会い頭事故、右折事故、
左折事故などの防止が狙い。

情報通信技術を用いた、安全で効率的な道路交通システムの実現に
向けた取り組みは、国土交通省以外の省でも進められている。
徐々に成果は挙がっているが、もっと早く死傷者を減らす方策は実現できないか。
身近に交通事故の犠牲者を持つ人たちは思わないだろうか。
科学技術立国を掲げ、安全・安心社会の実現を
最優先の課題にしている国なのに。

昨年6月に提言「交通事故ゼロの社会を目指して」をまとめた
日本学術会議・事故死傷者ゼロを目指すための科学的アプローチ検討
小委員会委員長、永井 正夫・東京農工大学大学院教授は、
「交通事故はやむを得ないとか、事故に遭ったら運が悪いといった
これまでの考えを改め、あらゆる努力をしようという
国民的なコンセンサスが最も重要」

http://scienceportal.jp/news/review/0904/0904131.html

弘前大大学院医学研究科、金メダリストら続々 現場密着のスポーツ医学脚光

(2009年4月20日 毎日新聞社)

弘前大大学院医学研究科の社会医学講座に、
バルセロナ五輪柔道男子71キロ級の金メダリスト、古賀稔彦さん(41)に
続いて、五輪柔道男子60キロ級で3連覇を果たした野村忠宏さん(34)が
入学した同講座には、スポーツ界で活躍した有名選手らが続々と入学。

同講座責任者で指導教授の中路重之教授は、
「幅広く総合的にスポーツ医学に取り組んでいる成果だ」と、
トップアスリートを引きつける魅力を話している。

同講座の大学院生として、今春は17人が入学。
野村さんら9人が柔道や相撲、ラグビーの第一人者。
元明大ラグビー部監督の田中充洋さんの姿も。
11人いる研究生も、アテネ五輪アーチェリー銀メダリストの山本博さん、
アテネ・北京五輪柔道女子63キロ級で金メダリストの谷本歩実さんら
7人が体育関係者。

研究生は大学院にも進学でき、ソウル五輪女子柔道銅メダリストの
北田典子さん、全日本相撲チーム監督の斎藤一雄さん、
元早大ラグビー部監督の益子俊志さんらが医学博士号を取得。

中路教授によると、4年前にできた同講座の前身は衛生学講座で、
当時の菅原和夫教授が相撲、柔道界との関係が深くて
体育界と縁ができた。

従来の大学院のスポーツ医学は、整形外科系が主流で、
スポーツ現場とは溝があると中路教授は指摘。
医学部系は、けがの治療やリハビリなどを主眼としているが、
同講座は栄養学、メンタル面、疲労、内科・整形外科分野など
包括的なスポーツ医学を学べる。

同講座の梅田孝准教授も、「医学研究者とスポーツ指導者、選手が、
スポーツ医学という共通の場で融合し共に学べるのが特色。
スポーツ界で活躍した人が取り組みやすい」

授業もテレビ会議をしたり、中路教授らスタッフが
東京で講義するなど工夫している。
現在でも、J2の湘南ベルマーレ、東洋大陸上競技部・相撲・体操・陸上部などを
対象に実践的な調査研究を行っている。

中路教授は、「金メダリストがタレントで終わるのでなく、
トップアスリートがスポーツ医学を幅広く学んで指導者になり、
スポーツ人口拡大に役立ててほしい

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/4/20/95539/

細胞の行く末探る手法開発 遺伝子で自在に分化制御も

(2009年4月20日 共同通信社)

人の体では、細胞が性質や機能の異なる細胞へと変化する
「分化」が起きている。
ある細胞が分化して、次にどんな細胞になるのか、
その決定に重要な役割を果たす遺伝子を見つける手法を、
理化学研究所が参加する日米欧などの国際チームが開発し、
19日付の米科学誌ネイチャージェネティクス電子版に発表。

新型万能細胞の「iPS細胞」を、目的の細胞に効率よく分化させるなど、
細胞を自在にコントロールする技術につながる可能性がある。

細胞の内部では、多数の遺伝子が互いに働きを抑制したり促進したりして
協調し、分化が進むにつれ、それぞれの遺伝子の働き方も変わっていく。

チームは、人の未成熟な免疫細胞が分化して成熟する過程で、
約200種類の遺伝子の働き方がどのように変化するかを、
DNAの塩基配列を解読する装置などを利用して、
分化が進んでいく各段階で精密に調べた。

その結果を基に、ある遺伝子が別の遺伝子の働き方に及ぼす影響を、
コンピューターで計算。
約200種類のうち、約30種類が分化に重要な役割を果たしていることを
突き止め、それらが互いに制御しあっている全体像を解明。

林崎良英・同研究所領域長は、「この手法を使えば、
分化に必要な鍵となる遺伝子を探し出せる。
皮膚細胞を神経細胞などの別の細胞に分化させることが
可能になるかもしれない」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/4/20/95570/

「グランドスラム」への扉(10)盛田正明氏 サービス充実、観客大幅増

(日経 3月26日)

2000年、日本テニス協会会長に就任した盛田氏は改革に着手。
就任後、全国各地域のテニス協会を訪問すると、
「テニス協会は役所のようだ」といった苦情。

事務局の対応や大会運営方法などが不親切で、
用件を問い合わせてもたらい回しにされて困ったと。
体育会的な風土からか、後輩である現役選手らにサービスするという
意識も欠けていたようだ。

翌年1月、私は事務局職員を集めて
「名称を、日本テニスサービス協会に変更したい」
選手やスポンサーなど「関係者全員をお客様と思い、
サービス精神を持って仕事をしてほしい」と訴えた。

次に取り組んだのが、「ジャパンオープン」の改革。
ジャパンオープンは、東京・有明で毎秋主催する国内最大の国際大会、
1996年に4万人を超えていた観客数は、2000年には2万7000人。
改革を誰の目にも見える形にするため、観客増員を目指した。

私は、米IMG創業者で友人のマーク・マコーマック氏に誘われて、
世界四大大会(グランドスラム)を毎年観戦してきたが、
観客数は2週間で50万-60万人規模に達する。
英ウィンブルドン大会は期間中、雨が降って
試合が中断することもたびたびある。
しかし、観客は帰らない。

会場に併設された店で買い物をしたり、食事をしたりして時間を過ごし、
年に1度のテニスの祭典を楽しんでいる。

ジャパンオープンは、テニス愛好家が熱心に観戦しているが、
試合が終わるとさっさと帰ってしまう。
食事は、冷たいお弁当で我慢するしかない。
有明に来るだけで、誰もが楽しめるテニスのお祭りのような大会に
しなければいけないと思った。

お弁当は温かくし、会場隣の広場に屋外フードコートや子供が楽しめるように
サーブのスピードを測る遊戯施設など、ゲームコーナーを併設。
観客数は年々増え始め、協会の職員や関係者から
次々アイデアが出てきた。

今では全国のテニスショップが出店し、
大会に来ればあらゆるテニス用品が買える。
観客数は、08年には過去最多の7万5000人に。

経費削減を進めた結果、協会の収支も就任3年目に黒字化。
日本オリンピック委員会が運用しているナショナルトレーニングセンターでの
選手強化費用が増えるため、08年4月から「ワンコイン制度」を始めた。
協会主催の国内大会に出場する選手に、
参加費に100円上乗せして支払ってもらう制度で、
景気変動の影響を受けず、スポンサーに頼らない財源を考えた。

将来は協会が主導して、各都道府県にトレーニングセンターを開設し、
日本を拠点に世界で勝てる選手を育てていきたい。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/hiroku/hir090325.html

2009年4月22日水曜日

9月に東京タワーでサンマPR 大船渡市秋刀魚実行委など計画

(東海新報 4月21日)

大船渡で水揚げされたサンマを首都圏でPRしようと、
大船渡市秋刀魚まつり実行委員会などが、
9月に東京タワーで「さんままつり」を計画。

高さ333㍍で、昭和33年に営業を始めた東京タワーに合わせ、
大船渡側でもサンマなど「さん」にちなんだキーワードでPR。
首都圏でのPRは宮古や気仙沼が〝先行〟しており、今後の展開が注目。

東京タワーでのさんままつりは、同実行委会合の場で実施計画案が示され、
原案通り承認された。
今後、準備組織を立ち上げ、具体的なPR方法などを協議。

名称は、「東京タワー大船渡市さんままつり」
開業50周年を迎えた東京タワーで、大船渡港に水揚げされた
新鮮なサンマや市内特産品を通して情報発信し、
知名度アップや販路拡大などを図るのが目的。
同実行委と市、市観光物産協会が主催。
東京タワーを運営する日本電波塔㈱が共催。

港区六本木にある「ホテルアイビス」が主催して、多彩な活動を展開している
「六本木探検隊」の関係者や同区も協力、開催日は9月27日(日)を予定。

初めての企画だが、イベント開催による誘客を図りたい東京タワーと、
首都圏でのPRを強化したい大船渡側の関係者との思惑が一致。
サンマ試食をはじめ、大船渡産の食材や自然、文化などを
幅広く紹介する計画。

東京タワーは、昭和33年に営業を開始、高さは333㍍。
サンマや三陸といったキーワードがあることから、
お互いの「さん」にちなんでイベントの盛り上げを図りたい。

関係者は、「サンマの試食は3333匹を用意しては」、
「もっと『さん』にちなんだキーワードやドラマを集めなくては」などと、
PR強化へ知恵を絞る。

東京都内では、9月にかけ気仙沼産の炭火焼きサンマが無料で
振る舞われる目黒区での「目黒のさんま祭」が毎年人気。
目黒駅前商店街の「さんま祭り」では、宮古産が提供、
どちらも落語の「目黒のさんま」にちなみ競うようにPRを繰り広げている。

東京タワーでのイベントによって、首都圏での産地PR合戦に
割って入ることができるか、注目の一つ。
実行委の佐々木英一会長は、「気仙沼や宮古のほうが、
東京でのPRは先行している。
イベントで、首都圏でのサンマ消費拡大や大船渡産の知名度向上に
つながってくれれば」

http://www.tohkaishimpo.com/

メタボ:死亡率との関係調査 肥満でなくても危険性大--厚労省研究班

(2009年4月16日 毎日新聞社)

厚生労働省研究班(主任研究者=津金昌一郎・国立がんセンター部長)が
全国の40-69歳の男女約3万人を対象に実施した大規模調査で、
肥満でなくても、血圧や血糖値など血液検査値に異常があれば、
死亡の危険性が高まることが明らか。

国は、昨年度からメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策を
目的に、肥満に重点を置いた特定健診を始めたが、
研究班は「メタボ健診だけでは、太っていなくても病気を発症する
危険性がある多くの人を見逃す危険性がある」と指摘。

特定健診は、導入後3年で見直しされる予定で、
今後の議論の大きな根拠になる可能性が高い。

メタボと死亡率の関係について、10都府県の3万4000人を約13年追跡。
日本人を対象にした同様の調査では、最大規模。
心筋梗塞など虚血性心疾患は、メタボの場合、
男性で約3倍、女性で約2倍、死亡する危険性が高かったが、
肥満ではない人でも血圧や血糖値などが診断基準を超えた場合、
死亡の危険性はメタボの人と同様に高かった。
病気の種類を問わない男性全体の死亡率も、メタボの有無による違いはない。

8県の2万3000人を対象に実施した分析では、
虚血性心疾患の患者のうち、高血圧が原因で発症したと
推測されるのは全体の5割近く。
メタボによって発症した割合は2割未満にすぎず、
メタボ対策の効果は限定的。
日本人の死因の第1位であるがんの発症にも、メタボの有無は関係ない。

津金部長は、「肥満重点の対策で期待できる効果は小さく、
禁煙や血圧の管理など効果が期待できる対策を推進すべき。
今回のデータを、健診制度を見直す際に役立ててもらいたい」
…………………………………………………………………………
◇特定健診

メタボ対策による医療費削減を目的に、08年度から始まった。
会社や国民健康保険などの医療保険者に実施が義務づけ。
健康悪化は、腹部肥満が原因との学説に基づき、
腹囲や、身長と体重で計算する体格指数(BMI)が基準値を超え、
血圧、血糖値、血中脂質の血液検査値が基準値を超えた場合、
特定保健指導を受ける。
原則として、40-74歳の被保険者と被扶養者が対象。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/4/16/95450/

「グランドスラム」への扉(9)盛田正明氏 協会改革へ「情熱」に訴え

(日経 3月25日)

盛田氏はソニー生命保険の会長時代、女子テニスの日米対抗戦を企画。
日本テニス協会から大会主催の公認がなかなか下りないため、
会長が誰かと思って調べたら、
福岡県の百貨店、岩田屋元会長の中牟田喜一郎さん。
岩田屋は、ソニー創業のころから九州で最大の販売代理店で、
中牟田さんのことはよく知っていた。

中牟田さんに直接お願いしたところ、しばらくして主催が決まった。
「ソニーライフ・カップ」は、モニカ・セレスや沢松奈生子、杉山愛ら
日米のトップ選手を招待し、神戸と広島、福岡で1997-99年に開催。
中牟田さんも、テニス協会会長として大会に来られ、
私がテニス好きなことを知ったようだ。

98年、ソニー生命の名誉会長に就いて、経営者としては現役を引退後、
大好きなテニスで日本人のトップ選手を育てるファンドをつくることを考えた。
社会貢献というよりも、私が楽しむことが目的。
財団法人を設立するための手続きに思ったより時間がかかった。

中牟田さんが福岡からわざわざ東京に私を訪ねてこられた。
テニス協会会長を継いでほしいという。
私はテニスは好きだが、大会に出場したことはない。
何度も断ったが、最後は断り切れずに要請を受けることに。

盛田氏は2000年、日本テニス協会の会長に就任。
よく協会会長になったからファンドを設立したと誤解されるが、
ファンド設立と協会会長はまったく関係がない。
協会会長になることは想定外だった。

就任してみると、協会は多くの課題を抱えていることが分かった。
バブル景気の時期に支出を増やしたことが原因で、収支は赤字。
なんとかしなければと考えたが、財団法人の会長には
株式会社の社長のような権限はない。

最初は、大変なところへ来てしまったと思った。
協会の役員など、関係者はみんな活発に意見は言うが、
自分からはなかなか行動しない。
人を動かさなければ、改革はできない。

権限なしに人を動かすにはどうすればよいか。
会社と違って協会の素晴らしいところは、
全員が「テニスが好き」で「テニスへの情熱」を持っていること。
これは大きな武器。

一般的な会社では、社員全員が同じ思いを共有しているとは限らない。
お金のためや腰掛けで働いている人もいるだろうし、
そういった社員が情熱を持って仕事に向き合っているかは分からない。
協会では、テニスに対する「ハート」に訴えれば動いてくれる。
それが分かってからは、徐々に私の話に耳を傾けてくれるようになった。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/hiroku/hir090324.html

上海電気集団の呂副総裁「原発拡大、追い風に」

(日経 4月14日)

◆呂 亜臣氏
1982年東北重型機械学院卒、中国第一重型機器入社、
副総裁などを歴任。2000年に上海電気グループ入社。48歳。

◆上海電気集団
中国の重電大手。1950年代、上海市政府の1部門として誕生。
発電関連設備、ディーゼルエンジン、鉄道製造などが柱。
2006-07年、経営陣が汚職の疑いで混乱もしたが、近年は収まっている。

中国が、原子力発電所の発電能力増強にカジを切った。
環境負荷が大きい火力発電所への依存を減らし、温暖化ガスの削減を
目指す姿勢を国内外に示す目的。
原発建設は巨額の投資が見込まれ、減速が続く中国経済の
テコ入れにもつながる。重電大手、上海電気集団(上海市)の
呂亜臣副総裁に原発ビジネスの戦略を聞いた。

——中国政府が原発に力を入れている。

原発で発電している電力量は現在、中国全体の1.6-1.7%。
政府は、環境負荷の小さい原発の建設を進める方針。
3年で1カ所建設するペースだったが、今年は3-4カ所開設。
当社の原発設備製造事業にとって追い風」

——事業構造も原発事業へと軸足を移すのか?

「現時点の主力は、石炭火力発電設備の製造。
中国国内向け火力発電事業は、2007年まで急拡大したが、
それ以降は伸び悩んでいる。
東南アジアへの輸出が増えたため、成長を維持しているが、
中国国内向けは原子力発電事業の方が伸びる余地が大きい」

「07年の原発設備受注額は30億元(約420億円)、
08年には80億元にまで増えた。
原発制御関連装置も含めると、この2年間の受注は180元に達する。
07年、08年ともに原発事業は赤字だったが、
今年からは黒字に転換すると見込んでいる」

——原発設備製造で先行する日本企業との提携の可能性は?

「我が社としては、日本企業とぜひ提携したい。
日本側は、我々に技術を盗まれることを警戒。
提携はなかなか難しいのでは。
04年、日本を訪問してある企業と提携協議をしたが、
技術供与の了解は得られなかった。
今は日本から部品を購入しているが、その額は大きくない」

——保安・安全技術は十分か?

第3世代と呼ばれる最新の設備を製造。
もし故障が発生した場合は、自動的にストップする仕組み。
日本製と遜色ないと考えている」

——原発以外の成長分野は?

風力発電設備に力を入れている。
08年、200強の発電設備を製造したが、今年は500を見込む。
来年は1000に達する。
風力発電設備は現在、すべて国内向けに供給。
原発、風力発電の新エネルギー分野は今後、大きな伸びを示す」

——中国経済減速の影響は?

「中国経済は現在、世界経済と完全には連動していない。
これがプラスに働き、金融危機の影響は限定的。
中国政府は、農村の消費を支援する政策を打ち出し、
家電が普及すれば、当社の事業にもプラスに働く」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090413.html

2009年4月21日火曜日

体重の8-13%減量が必要 メタボ改善の目標値

(2009年4月16日 共同通信社)

メタボリック症候群や予備軍の女性約300人の調査で、
メタボ改善には体重の8-13%の減量が必要だと、
筑波大の田中喜代次教授らのグループが発表。
体重70キロの女性の場合、6-9キロの減量が目標値になる。

心筋梗塞など肥満と関係する症状の改善には、
5-10%の減量が必要であることが知られていたが、
日本人を対象に、メタボ改善に必要な減量レベルを調べた研究はなかった。

対象は、1999~2006年にかけて減量指導を行った
軽度から中程度の肥満で、メタボの要因である腹囲、脂質、血圧、
血糖の異常値が少なくとも1つある、20代から60代の女性約300人。

全体の72・8%に当たる225人が、少なくとも1つの要因の改善に成功。
減量率が8・1%以上だと、成功率が79・6%まで高まり、
逆に8・1%未満だと44・1%にとどまった。

平均成功率が59・6%と低かった高血糖の改善では、
13・2%以上の減量で、成功率が93・3%まで高まった。

「今回は女性だけの調査だが、男性の場合も、
おおむね当てはまると考えられる」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/4/16/95411/

「グランドスラム」への扉(8)盛田正明氏 米国赴任、工員鼓舞の日々

(日経 3月24日)

盛田氏は1982年、ソニー副社長に就任。
87年にはソニー米国法人の会長に就いた。

ソニーアメリカ(ニュージャージー州)は、
約1万3000人の社員のうち日本人は200人ほど。
経営会議に出席するため、月に1週間は帰国するなど仕事は多忙だったが、
米国赴任で、生活や考え方が変わり人脈も大きく広がった。

米国法人は、販売会社としてスタートしたが、
日米貿易摩擦の激化を受けて現地生産を始めていた。
カリフォルニアやアラバマに、テレビやビデオテープの工場を持っていた。

社内には、「販売が上で製造は下」という意識。
それではいけないと思い、組織を販売と生産の2つに分けた。
英語が堪能な安藤国威氏(後にソニー社長)を日本から呼び、
生産部門のトップに就いてもらった。

ソニーは商品のイメージが強いが、
製造部門が利益を稼がなければうまくいかない。
私は、工場の従業員にやる気を出してもらうおうと、
積極的に工場を訪れた。
工場は、人の動きや在庫などを一目みれば、うまくいっているかすぐ分かる。
工場などを訪れた回数は、5年の赴任期間で360回以上。

米国では、政財界との付き合いも重要な仕事の1つ。
井深大さんや兄(盛田昭夫氏)の知名度は高く、
金融機関やメディアのトップはソニーを一流企業と認めて接してくれた。
米国の懐の深さを知り、困ったことや分からないことがあれば相談できる
人脈を幅広く築くことができた。

私は、自宅でテニスパーティーを開くぐらいしかできなかったが、
IMG会長だったマーク・マコーマック氏や、ジミー・コナーズ、
モニカ・セレスといったトップ選手らテニス関係者とも親交を深めることができた。

盛田氏は92年に帰国。ソニー副社長を退任し、
ソニー生命の社長兼会長に就任。

兄が生命保険会社を設立したのは、昔から資金調達に苦労したため
グループの財務力を強化したかったからだ。
本当は銀行を持ちたかったようだが、当時は難しかった。
提携先の米プルデンシャル保険に学び、女性営業員が中心だった業界で
金融知識を備えた男性営業員が、完全歩合制で販売するスタイルを広げた。

そんな時、マコーマック氏がテニスの日米対抗戦を開催しないかと提案。
伊達公子選手や沢松奈生子選手が活躍し、
当時の日本女子はとても強かった。
「それはおもしろい」と思い、日本テニス協会に大会開催の許可を
お願いしたのだが、なかなか話は進まなかった。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/hiroku/hir090323.html

首鋼集団の朱董事長「新たな製鉄所を構想」

(日経 4月11日)

◆朱 継民氏
1970年東北工学院鉱山建設学部卒、鞍山鋼鉄に入社。
97年水城鋼鉄集団董事長、2000年首鋼集団総経理などを経て現職。63歳。

◆首鋼集団
北京市に本拠を置く中国の大手鉄鋼メーカー。
粗鋼生産能力は近く、年間約2000万トンを計画。
鉄鋼のほか、採鉱、機械、電子、建築、不動産事業なども展開する
国有の一大企業集団。

世界最大の粗鋼生産国の中国だが、世界的な景気悪化で
鋼材需要が急速にしぼんでいる。
元々は海外に輸出する予定だった鋼材が流入して、
国内では供給過剰感が強まり、
鉄鋼メーカーの経営環境は厳しさを増している。
中国の鉄鋼大手、首鋼集団(北京市)の朱継民董事長に
中国鉄鋼業の現状や今後の経営戦略などを聞いた。

——世界的な金融危機が中国の鉄鋼業にどんな影響を与えているか?

金融危機は、中国の鉄鋼業の過剰な生産能力を改めて浮き彫りに。
昨年9月から中国の鉄鋼業は、協調減産に突入。
今年の1、2月は一部で回復傾向にあったが、最近はまた、
メーカーが生産を減らしているのが現状」

「中国の鉄鋼業は、毎年4000万トン程度が輸出。
世界的な需要減少で、1月の輸出は190万トン超、2月は150万トン超、
前年同月比で50%以上も減少。
高付加価値の製品で、日米欧メーカーに先行を許している、
中国の鉄鋼業の構造的な問題も明らかに」

——中国政府は競争力強化を狙い、鉄鋼業界の再編を進めている。

中国の鋼材は、低付加価値品の割合が高く、先進的な水準とは
まだ大きな開きがある。
政府の一連の政策は、中国の鉄鋼メーカーが世界で戦えるように
なるためには重要な戦略。
付加価値の低い中小メーカーが淘汰されることで、
中国の鉄鋼業全体の技術の高度化などにつながる。
首鋼は今後、研究開発や人材育成に重点投資し、
高付加価値製品の投入で存在感を高めていく」

——首鋼は北京からの製鉄所移転の受け皿として、曹妃甸(河北省)に
唐山鋼鉄と共同で新製鉄所を稼働する予定。

「4月に生産を開始する準備を進めている。
年産能力485万トンを目指し、第2期工事を進め、
今年末には同970万トンに引き上げる計画。
北京市の製鉄所(年産能力800万トン)はすでに半分を停止。
残りの400万トン分も、2010年末には生産を終了」

——首鋼の中・長期的な成長戦略は?

「曹妃甸の製鉄所は、最先端の技術を導入するため、
製品の競争力が高まるのは確実。
曹妃甸が本格稼働した以後、秦皇島(河北省)などに
新たな製鉄所をつくる構想も持っている」

中国政府が奨励する企業統合(首鋼は、長治鋼鉄集団〈山西省〉などを
買収する方向で交渉中)なども、首鋼の規模拡大に。
首鋼は、従来の年産能力800万トンから同2000万トン以上に拡大し、
2012年には同3000万トン規模に成長する計画」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090410_4.html