2009年6月27日土曜日

やっぱり「ちょい太」、やせ形より7年長生き…厚労省調査

(2009年6月10日 読売新聞)

40歳時点の体格によって、その後の余命に大きな差があり、
太り気味の人が最も長命であることが、厚生労働省の研究班
(研究代表者=辻一郎東北大教授)の大規模調査で分かった。

最も短命なのはやせた人で、太り気味の人より6-7歳早く死ぬ、
という衝撃的な結果に。
「メタボ」対策が世の中を席巻する中、
行きすぎたダイエットにも警鐘を鳴らすものといえそう。

宮城県内の40歳以上の住民約5万人を対象に12年間、
健康状態などを調査。
過去の体格も調べ、体の太さの指標となるBMIごとに、
40歳時点の平均余命を分析した結果、
普通体重(BMIが18・5~25)が男性39・94年、女性47・97年、
太り気味(25~30)は男性が41・64年、女性が48・05年と長命。
「肥満」(同30以上)の人は、男性が39・41年、女性が46・02年。
やせた人(同18・5未満)は男性34・54年、女性41・79年。

病気でやせている例など、統計から排除しても傾向は変わらなかった。
やせた人に喫煙者が多いほか、やせていると感染症にかかりやすい、
という説もあり、様々な原因が考えられる。
体格と寿命の因果関係は、はっきり分かっていない。

太り気味の人が長命という結果について、東北大の栗山進一准教授は、
「無理に太れば、寿命が延びるというものではない」とくぎを刺す。

同じ研究で、医療費の負担は太っているほど重くなる。
肥満の人が40歳以降にかかる医療費の総額は、
男性が平均1521万円、女性が同1860万円。
どちらも、やせた人の1・3倍。
太っていると、生活習慣病などで治療が長期にわたる例が多く、
高額な医療費がかかる脳卒中などを発症する頻度も高い可能性がある。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/10/101701/

カルシウム不足:女性の99%超 やせ傾向、朝食抜く人ほど不足

(2009年6月12日 毎日)

骨の健康に不可欠なカルシウムについて、
必要摂取量を満たしている女性は1%に満たないことが、
ダノン健康・栄養普及協会の調査で分かった。
カルシウムは、過不足の結果がすぐに表れないことから
「沈黙のミネラル」と呼ばれ、摂取量不足が問題。

調査は、20-50歳代の女性を対象にインターネットで実施、722人が回答。
カルシウムを「適度にとっている」、「とりすぎ」と感じている人は36・5%、
実際の食生活から摂取状況を推定するチェック表を使って
自己診断してもらったところ、「足りている」は0・8%、
「少し足りない」を含めても5%未満。

女性のカルシウム摂取量(18歳以上で1日600-700ミリグラム)に
ついて、77・1%が「分からない」と答え、正解率は8・7%。

ライフスタイルとの関連を分析、やせ傾向の人に不足が目立ち、
朝食を抜いたり夕食を外食で済ませることが多い人ほど不足。

上西一弘・女子栄養大教授(栄養生理学)は、
「女性のカルシウム不足は、閉経後の骨粗しょう症のリスクを高める。
若い時から骨密度を測るなど気をつける必要がある」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/12/101880/

米グーグルのホロウィッツ副社長「技術の世代交代進む」

(日経 6月13日)

米グーグルで、検索・広告・動画以外のサービスを統括する
ブラッドリー・ホロウィッツ副社長に、
クラウドコンピューティングの将来性などについて聞いた。

——グーグルのクラウド・サービスは、基幹業務系など
企業向けシステムを避けているのか?

「ワープロや表計算などから成る『グーグル・アップス』をみると、
パソコンソフトのクラウド化が中心にみえる。
ウェブメールの『Gメール』の企業版は、企業が自前サーバーで
運営してきたメールシステムを、クラウド上に完全に置き換えるもの」

「昨春から提供している『アップ・エンジン』は、クラウド上の
グーグル・サーバーに、誰でも自由にアプリケーション・ソフトを構築、
その機能・処理能力をネット経由で社員や消費者に提供できる。
企業の独自システムを構築するのに適している」

——アマゾン・ドットコムのように単純なストレージ分野には進出しないのか?

「アップ・エンジンは、グーグル・サーバーのCPU(中央演算処理装置)と
記憶容量を使えるので、ストレージサービスに似ている。
ファイアーウオールで守られた企業内システムのデータを暗号化して、
社外とやり取りできるようにするSDCというツールを、4月から提供。
企業向けの業務ソフトそのものの分野では、
セールスフォース・ドットコムなどの優れたSaaS企業があり、
グーグルは企業向けシステムの分野ではデータセンター機能や
ソフトの開発環境などインフラ部分を提供」

SaaS型の業務ソフト企業とは、グーグルのクラウドサービスと
うまく連携が取れるような環境を整えている。
セールスフォース・ドットコムとは、マッシュアップが可能な仕組みを用意。
SDCは、企業の社内データをセールスフォースのデータベースと
安全にやり取りするパイプとしても使える」

——最近、米マッキンゼーが大企業では自社データセンターより
クラウドの方がコスト高になると報告。

「特定の状況を設定した上で、既存の企業システムと比較して、
クラウドは危険だとか時期尚早だとかいう報告が出ている。
世界中で、クラウドへの移行がむしろ加速している事実について、
疑問を挟む余地はない。
私自身は、もはや未熟な時期は過ぎたと思っているが、
たとえまだ未熟だとしても、クラウドが主流になるのは時間の問題」

——今春、Gメールのサービスが何時間も止まる事故が相次ぎ、
クラウドの信頼性に不安が高まった。

「個別企業内のメールサーバーが止まっても、外からは分からず、
ニュースにはならない。
今この瞬間も、東京のどこかの会社でメールサーバーが止まっているはず。
それくらい個別企業のメールサーバーが落ちる頻度は高い。
Gメールは、比べものにならないくらい落ちる確率が小さい。
我々のシステムに何か問題が起きると、すぐに世の中に知られ、ニュースに。
透明性を高めることの宿命だ」

「Gメールでもグーグル・アップスでも、利用登録した瞬間に
世界で最も安定的で速いサーバーが使え、世界中のグーグル社員が
あなたのデータセンター管理者として最先端の技術で働いてくれる。
ウイルスや侵入などに対する安全の面でも、これほど心強い体制は、
個別企業のデータセンターでは実現できない」

——扱うデータ量が膨大になり、制御不能にならないのか?

「全く逆だ。
グーグルがデータを蓄積し処理している超並列サーバーの特徴は、
規模が大きくなるほど効率的になり、処理速度が高まり、
安定性が増す設計になっている」

——クラウド化の進展で基本ソフト(OS)など、
パソコンなど端末側のプラットフォームの自由度が高まっている。

「クラウド化の進展で、ソフトやデータを動かすプラットフォームは、
ブラウザーやウェブ上のSNSなど、OSより上のレイヤーに移りつつあり、
みんなが同じOSを使う必要性は薄れている。
インテルがOS供給元となるソフト会社を買収し、パームが新しくだした
携帯端末『Pre(プレ)』は、『webOS』というクラウド利用を前提にしたOSを
搭載した背景にはそんな潮流がある」

「もっと大きな流れとして、ICTの基本的な技術群が
世代交代の時期に入ったとみている。
『グーグル・マップ』やGメールも、1990年代に登場したJavaやXMLなどを
組みあわせた技術であるAjaxによって実現。
前世紀の技術で、ここまで高度なクラウドコンピューティングが
実現できたのは、ある意味奇跡。
これまでは何とか古い技術でやりくりできたが、そろそろ限界に」

「OSだけではなく、ネットワーク機器にしろ、通信インフラにしろ、
情報通信技術のあらゆる側面で、クラウドコンピューティングの普及を
前提にした、新たな土台作りが必要。
それぞれの業界のプレーヤーがそれに気付いており、
すでに動き始めているというのが今日の状況」

◆ブラッドリー・ホロウィッツ

米ミシガン大コンピューター・サイエンス学科卒、
米マサチューセッツ工科大(MIT)メディアラボで修士号。
博士課程在籍中の95年、シリコンバレーに移り住み、
動画ソフトベンチャーを共同創業。00年上場、03年売却。
04年、米ヤフーで先進技術開発部門長などを務め、
08年2月から現職。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090612.html

岡村・日商会頭 東京への五輪招致で地域活性化

(産経 2009.6.12)

日本商工会議所の岡村正会頭(東芝会長)は、
内外情勢調査会の講演で、「経済圏は広域化してきており、
広域化した課題に対応するためには、今の都道府県では不十分」、
道州制の導入が必要との考えを示した。

講演は、「今後の日本経済と地域活性化」がテーマ。
岡村会頭は、「国と地方の権限、役割を明確にする必要がある」と指摘、
道州制は「地域活性化のためにも必要」と訴えた。

国を挙げて東京招致を目指している2016年開催の
オリンピック・パラリンピックについても、
「東京のみならず、全国各地の活力を高める」、
東京開催の実現が地域活性化にもつながるとの考え。

岡村会頭自身、招致委員会の理事を務めているが、
東京での開催が、「日本経済の起爆にもなる」と期待。

一方、次期衆院選に関連し、
「若い人が将来に夢を抱けるような長期的ビジョンを提示してほしい」、
日本の将来像を政策論争の中心に据えるよう、与野党に求めた。
日本が進むべき方向として、「世界に冠たる科学技術立国を目指すべき」

http://sankei.jp.msn.com/economy/business/090612/biz0906122159016-n1.htm

2009年6月20日土曜日

ポスト京都、本当の負担は10倍?

(日経 2009-06-08)

「温暖化対策は、何をやるにしても(国民に)負担を求める」
地球温暖化問題に関する懇談会で、麻生太郎首相は締めくくった。
削減目標を決め、来るべき負担の覚悟を固めるには、
まず今の立ち位置を正確に把握しておく必要。

2020年に向けた温暖化ガス削減の中期目標の論議で、
「1990年比4%増」、「1990年比25%減」など様々な数字が飛び交った。
忘れがちなことに、「ゲタ」と「真水」の話がある。

京都議定書で、日本に課されている削減目標(2008~12年平均)は、
90年比6%減。
2020年の削減目標では、「90年比7%減」案を軸。
表面的な数値から、2つの目標にわずかな差しかないようだ。

京都議定書の6%減には、森林のCO2吸収分や海外から調達する
排出枠分の計5.4%分が算入。
実際に必要なのは、0.6%分の削減努力で、高ゲタをはいているよう。

森林吸収や排出枠を削減量にカウントできるのは、
京都議定書の枠組み内の話。
次期枠組みに、現状のまま引き継がれるかどうかは決まっていない。
「2020年に90年比7%減」という場合、掛け値なしの削減を指し、
森林吸収や排出枠は未確定の「外数」にすぎない。
7%減でも、京都議定書の目標達成に、10倍以上の努力が必要。

中期目標に関する世論調査では、削減目標の選択肢を示す際、
「真水問題」を必ずしも明示していない。
「真水」で7%減を達成するには、一段と強い覚悟が必要。

電気事業連合会と日本鉄鋼連盟は、自らの環境自主行動計画を
達成するため、12年までに2億4900万トンの排出枠を購入する契約。
これは、3.9%分のゲタに相当。

京都議定書の目標達成に必要な実質削減努力とした0.6%分は、
もう排出枠でカバーできる。
90年基準排出量に対し、3.3%増までは手当てができている。
ポスト京都の削減目標が7%減の場合、
現実には「真水で最大10.3%減」というインパクト。

3.3%増まで許容されているという構図は、
日本経団連などが中期目標の選択肢で支持を打ち出した
「90年比4%増」案とほぼ合致。

将来を見据え、「2020年に90年比25%減」など高い削減目標を
掲げねばならないという“must”発想の環境団体や、
「90年比4%増」など現時点で開発が見通せている技術を積み上げて
可能な範囲で対応していこうという“able”思考の企業はもとより、
広く国民合意を形成するには議論の発射台を共有することが大原則。
議論の条件整備が不十分だった感は否めない。

地球の平均気温を何度下げる必要があるかといった「科学の要請」や、
欧米と同等の削減負担にしなければならない「国際公平性」の論議も重要。

現状認識を異にしたまま政府が、削減目標案ごとに示した太陽光発電や
エコカー導入量など、削減努力の想定を目にしても、
「6%減から7%減へ」と思って見る人と、「3%増から7%減へ」と思って
見る人とでは、削減に臨む危機感が違ってくる。

政府は近く中期目標を決定するが、後で「聞いてなかった」という声が
わき上がってこなければよいのだが・・・。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090604.html

挑戦のとき/11 科学技術振興機構研究員・神原陽一さん

(毎日 6月9日)

極低温に冷やすと、電気抵抗がゼロになる超電導物質。
送電ロスのない電線や、磁力で車体を浮かせて走る
リニアモーターカー用の電磁石などへの応用を目指し、
より高い温度で超電導になる物質を探す競争が、
世界で繰り広げられている。

08年2月、米化学会誌に発表された神原さんらの論文が
学界に衝撃を与えた。
超電導には不向きと考えられていた鉄を含む化合物が、
絶対温度32度(セ氏マイナス241度)という
比較的高い温度で超電導に。

米国の文献情報会社によると、この論文は08年に発表された
科学論文の中で、他の論文に引用された回数が最も多かった。
論文の引用回数は、その研究の与えた影響力を物語る。
神原さんは、「これで10年くらいは、研究者として頑張ってみようと思った」

いわゆる「理科少年」ではなかった。
高校時代、理科の先生が実験を多く取り入れてくれたことで、
「実証的だ」と興味はわいた。
理系に進んだのは、「英単語や歴史の年号の暗記が苦手で」という
消極的理由だった。

「物好き」を自認する。
高校で山岳部に入ったのも、「わざわざ30キロの荷物を担いで
苦労する状況が面白かった」からで、
材料科学の道を選んだのも、「役に立たないかもしれないことに
一生懸命になれる物好きに向いている」と思ったからだ。

仕事に名前が残る研究者に魅力を感じ、博士号取得後、
第一人者の細野秀雄・東京工業大教授の研究室に飛び込んだ。
さまざまな物質を乳鉢ですり、混ぜて焼成し、電気抵抗や磁性などの
特性を測る地道な作業の繰り返し。

どこに宝が潜んでいるかは分からない。
「錬金術のような面白さがある。バクチみたいだが、
当てる人は何度も当てている。
物質の選択、合成の条件を詰めるには、高度なノウハウが必要」

超電導になる温度は十数年前、高圧下の銅系酸化物が
絶対温度160度を記録した後、更新がない。
神原さんらの発見は、手詰まり気味だった学界に
「新鉱脈」と受け止められ、再び競争が激化。

1カ月後、中国のグループが鉄系でさらに高い温度で
超電導になる物質を報告。
「恐ろしい勢いで論文が出て、追い抜かれた。
3月からの3カ月は悪夢だった」

今、鉄系の物質は、超電導になる温度が絶対温度55度で頭打ち状態。
冷却に安価な液体窒素が使える絶対温度77度が、当面の目標。
神原さんは、「もう一工夫がいる。何とか壁を越える物質を探したい」と
新たな挑戦を続けている。
==============
◇かみはら・よういち

東京都町田市で育つ。05年に慶応大大学院で工学博士号取得後、
科学技術振興機構の任期付き研究員として東京工業大で研究。

http://mainichi.jp/select/science/rikei/news/20090609ddm016040131000c.html

アルツハイマー病関連のたんぱく質、阪大グループ発見

(朝日 2009年6月10日)

アルツハイマー病に関係するとみられるたんぱく質を、
大阪大の研究グループが新たに見つけた。

このたんぱく質の量の変化を調べることで、
早期診断に利用できる可能性がある。
欧州分子生物学機構の学術誌(電子版)で10日発表。

脳神経細胞が死んでいくアルツハイマー病は、
体内で「アミロイドβ」というたんぱく質が増え、脳に老人斑と呼ばれる
特徴的な染みをつくる。
脳を守る脳脊髄液などから、このたんぱく質の量の変化を調べ、
診断につなげる研究が進んでいる。

多くが脳に蓄積されてしまうアミロイドβは、特に初期段階では
量の変化がわかりにくく、病気の早期発見が難しいことが課題。

阪大の大河内正康講師(精神医学)らは、脳に蓄積しない性質を持つ
「APL1β」というたんぱく質が、患者の脳脊髄液にあるのを発見。
このたんぱく質の増加と病気の進行度が一致。
このたんぱく質は、発症の少なくとも2~3年前から増え始める。
これを目印にすれば、アルツハイマー病の早期診断に使える可能性がある。

大河内さんは、「脳脊髄液は、腰に針を刺して採取する必要があるが、
診断自体はすでに実用化できるレベル。
早期診断が実現すれば、将来アルツハイマー病になるのを防いだり、
遅らせたりする治療法の開発にもつながるはず」

http://www.asahi.com/science/update/0610/OSK200906100026.html

東京五輪招致:安定財政アピール…IOC委員へプレゼン

(毎日 6月17日)

16年夏季五輪招致を目指す4都市の国際オリンピック委員会(IOC)
のプレゼンテーションで、東京招致委員会は安定した財政、環境、
選手本位の大会と多角的にアピール。

IOCのロゲ会長は、財政を強調する招致活動にクギを刺し、
改めて決め手の見えない招致活動の難しさが浮き彫りに。

ロゲ会長は、「経済的な側面を決定的な要因にすべきではない。
過去においても、我々は必ずしも財政的に最も豊かな都市を
支持したわけではない」、
「何よりも、アスリートのための大会かどうかだ。
温かい観客の存在も重要だ」とメッセージ。

東京は、国内の支持率などの課題も残っている。
プレゼンでは、東京招致委の電話調査で80.9%の支持率を得たと説明、
IOCの独自調査では60%を下回っている。
都内では、積極的なPR活動を展開しているものの、
海外のライバル都市に比べて見劣り感は否めない。
「アスリートたちのひのき舞台」をコンセプトに掲げて、
「選手を最優先に考える大会を強調した」(河野一郎事務総長)、
引き続き市民の理解という宿題が残っている。

シカゴは4都市で唯一、国家レベルの財政保証がないが、
民間企業とのパートナーシップを強調。
国際的に人気の高いオバマ米大統領を前面に押し出した。

インフラ(社会基盤)整備に多額の予算が計上され、
世界的な金融危機の影響が懸念されるリオデジャネイロは、
南米初の五輪開催を訴えた。

12年ロンドン五輪に続く欧州開催がマイナス材料とされるマドリードは、
IOC委員を多数擁する欧州の全面的バックアップを受け、
市民の支持率の高さも好材料に。

◇石原知事「緻密で完ぺき」

東京のプレゼンは、計画説明と質疑応答の持ち時間1時間半を
使い切らず、15分早く終わった。
石原知事は、「楽しい経験だった。緻密で完ぺきだったと思う」

IOC委員からは、馬術に参加する馬の検疫体制や、
夏の暑さに関する質問も出たというが、
招致委の河野事務総長は、「すべての質問に答えられたと思う」

IOCのペルニラ・ウィバーグ委員(スウェーデン)は、
「東京は、スタジアムにソーラーパネルを設置するという話が
印象的でよかった」と、環境を重視したプレゼンに一定の評価。
リマ・ベロ委員(ポルトガル)は、「何も新しいことはなかったが、
疑問には明確に答えていた」、
他都市との比較については、「比較は(IOC総会の1カ月前に公表される)
評価委の報告書が出てから」と慎重。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20090618k0000m050119000c.html

特集:後藤新平の真髄09 結婚相手は安場和子

(岩手日日 2009年4月2日~)

愛知県病院時代の新平にとって、おそらく衝撃的な事件とも
いえるものは、ローレツ博士から言われた
「近親者同士の結婚は不道徳だ」と忠告されたこと。

父十右衛門は、新平の母の実家である坂野家の娘ひでを
嫁にもらうことで話を進めた。
従兄妹同士の結婚になるわけだが、幼少の頃から顔なじみで、
新平はひでとの結婚を当然のように思っていた。

坂野家、後藤家とも双方に問題があった。
坂野家が、初め新平とひでとの婚約を破棄しておきながら
復活しようと計ったこと。曲折があって、縁談は復活。

新平と坂野ひでとの結婚手続きは、婿出席がないまま、
明治13年11月に行われた。親の手元で結婚が進められた。
明治14年1月、十右衛門が急病との電報によって
水沢に呼び寄せられ、自分の妻となるひでを見た。
1年後に新平は、彼女を離縁すると言い出した。
十右衛門と新平との間にいざこざがあって、新平はひでとの離婚が実現。

ここに至るまでには、ローレツ博士の「近親結婚」は不道徳、という発言が
あったことが決定的要因に。

新平は、明治16年9月、27歳の時、安場保和の二女和子と結婚。
和子は9歳若かった。
安場と新平の信頼感が、いかに強かったかを知ることができる。
新平と和子さんの結婚式の写真は実にいい。

◆暴漢が板垣退助を襲う

明治13年3月、安場は、元老院議員に栄転して名古屋を去る。
後藤新平と和子の結婚式を挙げる前の明治14年9月。
全国的に自由民権運動を展開しようと、
板垣退助は同志とともに土佐の高知を出た。
藩閥政治の積弊に苦しんでいた住民は、歓呼して板垣を迎えた。

10月、自由党は創立、板垣は総理となった。
自由党設立後、板垣は全国遊説の途に着いた。
静岡、名古屋と遊説して、明治14年4月5日、岐阜に入った。
岐阜市今小町の玉井屋旅館に一泊後、
板垣一行は濃飛自由党懇親会会場に向かった。
懇親会は、午後3時から始まり聴衆は約300人。
地元の濃飛自由党役員岩田徳義の開会挨拶に続いて
党員演説、板垣退助が立ち上がった。

板垣は、「本日、諸君の御招待を得まして、
この懇親会の盛宴に連なることができたのは、光栄の至り。
天下国家のために尽くすところあらんと望んでおられようが、
一言、平素の所懷を述べて歓迎のご好意に酬いたいと思う次第です。
世人は、自由党をめざして政府を転覆し、
天皇の地位を危うくしようとする暴徒の集まりであるかのように
言いふらしております。
われわれは左様なことは、全く考えない。
願いはひとりひとりが、餓えることなく、こごえることなく、
安らかに生を楽しむることができるように、政治が行われること」

板垣はおだやかで、政談演説というより学術講演に近かった。
「人間界の出来事は、しばしば天地自然の現象と同じ原理に
支配されることがある。天体の運行が、遠心力と求心力の調和によって
保たれることは、諸君御承知の通りですが、
人間社会においても、同様のことが行われている。
天皇を中心とする求心力と、人民の自治を望む遠心力が均衡を保って、
ここにはじめて円満なる政治が行なわれる」

板垣は、たくみに比喩をもちいながら立憲政治の本質を説き、
演壇を立ち去った。
1時間にわたる演説を終え、板垣が控え室へ戻ると、
随行の幹部、地元有志が演説に対する称賛と感嘆の声を上げた。
板垣は、「風邪気味なので一足先に失礼して…」と見送りを断った。
そして一人玄関に出た。

板垣が歩き出したところへ、横合いから飛び出した男が。
反射的に逃げ出そうとした。
その瞬間、間近に迫った男が板垣の胸元へ短刀を突き立てた。

◆新平に往診要請が再三

閑話休題-。
「戦い終わって日が暮れて」-。
昭和20年8月15日は、当時の人達にとっては思い出が多い。
翌21年4月、松岡修太郎京城帝国大学教授が、
朝鮮から引き揚げて盛岡中学校の校長となった。

松岡校長の試みとして、外部から講師を呼び、
一種の“教養”大学講座を設けた。
昭和23年2月、5年生を対象に開いたのは、「騎士道」、「新民法」、
「新渡戸稲造」の講座。
講師は、中村金雄、中川善之助、益富政助の3氏。
中村さんは、ボクシングの世界チャンピオン、
中川さんは東北大教授で民法の権威、
益富さんはキリスト教鉄道青年協会の理事長。

内容は忘れた。
中川教授が言ったことの一言が、後藤新平に対する
ローレツ忠告とともに蘇った。
中川教授が、戦後の民法では結婚は両姓の合意で
成立することになったと強調したこと。
後藤新平は初め、親が言うように従兄妹結婚に踏み切った。
その後に別れたが、ローレツ忠告に従ったもの。

話を元に戻そう。
板垣退助から往診を求める電話がかかってくる。
後藤は、やむを得ず岐阜へ電報を打って往診を断った。
岐阜からは再三電報があり、板垣の傷は肺にかかっている疑いもあると、
強く往診を求められた。
新平は、こうまでいわれては動かざるを得ない。
板垣が企てていることが、革命か反乱か知れないが、
維新に功労のあった人。
再三懇望されて行かないという手はない。
覚悟を決めて急に仕度を整え、明治14年4月6日、
夜中の3時ごろ名古屋を立った。

板垣が泊まっている玉井屋旅館へ着くと、上を下への大騒ぎ。
板垣の部屋へ足を踏み入れた後藤新平は、
大勢の視線を受けてたじろいだ。
が、そこは新平である。
板垣の枕頭に寄って、「御負傷、御本望でしょう」といった。

「板垣死すとも自由は死せず」と板垣は言ったという。
後年、新平は周辺を見回して環境の不潔さを目に留め、
衛生が劣悪なのに、「なにが自由か…」と言ったと。
いかにも新平らしい。
ローレツに師事したことで、公衆衛生の重要性を学んだ新平ならではの発言。

http://www.iwanichi.co.jp/feature/gotou/item_12593.html

2009年6月19日金曜日

特集:後藤新平の真髄08 師ローレツとの出会い

(岩手日日 2009年4月2日~)

後藤新平は、安場保和の後押しで、
勉学の機会を与えられて出世街道を歩んだ。

須賀川医学校で医学を学び、外科医として手腕を発揮、
衛生行政官として、台湾民政長官として植民地行政にも力を尽くした。
総理大臣になるべき人物であったと言われている。
彼の業績を顧みて、大風呂敷の後藤新平という評価もあるが、
「日本の設計者」新平という見方が強まっている。
そのように言われるが、本当に医者としてはどうだったのか?

◆博士の忠告で婚姻破棄

杉森久英著『大風呂敷(上)』に、こういう話。
新平は、安場が愛知県知事になって愛知病院に勤務するが、
師ローレツ博士に、「あなたは結婚についてどう考えているか?」と聞かれ、
「私には、婚約者がいる」
「それはいいこと。そのお嬢さんはどこの人か?」
「郷里の水沢にいる。私達が幼かったころ、親同士の約束で決めた」

ローレツは、「日本の人は、よく親の意思で結婚する。
ヨーロッパでは、本人が知らないのに親が決めるということはない」
新平は、「日本人は、親の判断は狂わないと思っている」
ローレツは、「結婚は、お互いの人格の結合。
品物を買うように、判断したり選択したりして決めるものではない」
「人格の結合という点で、心配ない。
私達は従兄妹同士で、子供のときからよく知っています」

ローレツは、恐怖に似た声をあげ、「本当に従妹と結婚するのか?」
「そうです」と新平が平然というと、
ローレツは、「後藤さん、近親結婚は不道徳です」と反論。

新平は、「従兄妹は、近親とはいえないのでは?
日本では、従兄妹同士は気心が知れていいと結婚する」
ローレツは、「それは野蛮な風習。遺伝学について学んだか?」
「須賀川医学校では、概略の講義を受けたが、
従兄妹同士の結婚については何も教わらない」

ローレツは、「あなたは今からでも勉強しなさい。
ヨーロッパでは、従兄妹同士の結婚にいろいろな報告や統計が発表、
近親結婚には、不妊症、早産、畸形、てんかん、白痴等の例が非常に多い。
従兄妹同士が結婚したときも同様」と説明、
新平は真面目に聞く気になった。

新平は、事の重大さに気がついた。
ローレツから、「残念ながら、私達の学問はその理由を
説明できるほど進歩していない。
今のところ、ただ臨床的な経験によって推定しうるだけ。
しかし、事実を否定することはできません」
これを聞いて、新平は郷里の父母に、縁談に不承知と手紙を書き送った。

◆西洋医学と衛生行政、指導

アルブレヒト・フォン・ローレツは、明治7年、
オーストリア帝国領事館付医官として28歳で来日。
目的は、博物学研究調査、特に自然科学の分野での観察、収集研究。
4か月にわたり、西日本各地を探検旅行、
日本の風習の理解に努めるとともに、紀行文や収集品を残した。

明治8年、横浜で開業。
翌9年、愛知県病院での指導監督と付設学校で教育のために招かれる。
同年5月に着任。
ポストは顧問格で、月給は300円。愛知県知事より高かった。
4年間務め、基盤づくりに貢献。

明治9年、県知事(県令)安場の下に、愛知県がドイツ医学を採用し、
ローレツが顧問格で就任。
愛知県が洋式病院、医学校の新築に着手した年。
ローレツが導入した、もう一つのドイツ医学ともいうべき新ウィーン学派
近代日本医学の一時期を画するもの。

当時、日本的な塾や藩校的教育が色濃く残り、
ほとんどの医学校において、原書の素読、便覧書、外国人教師の
知識の断片を得て、満足している状況。

西洋医学を導入しようにも、日本では近代教育の体系全てが
未確立だったため、ローレツだけでなく他の外国人教師にとっても
医学教育は困難極まる大事業。

明治9年、愛知県病院月給10円の3等医として、
後藤新平はローレツの下で、西洋近代医学に触れた。
新ウィーン学派の特徴とは、自然科学の成果とその実験的手法を
医学に直結させた実証的研究と、近代の名にふさわしい
科学的姿勢とに象徴、新平は着実に自分のものにした。

ローレツは、当時の医学教育と医学生の質に少なからず失望したが、
新平との出会いは大きな喜びだったよう。
後に、新平はドイツ留学をするが、ローレツに刺激されたことが大きい。

ローレツは、医学校を実質的に教頭として主宰し、
新ウィーン学派の衛生行政思想に基づき愛知県の行政を指導。
住民周囲の不健康な環境を、行政によって改善すべきことを説き、
新平を衛生行政の専門家に成長させるべく指導。

新平は、安場保和が親身になって援助、愛知県病院に就職。
ローレツと深く知りあったことで、学問を究めることができた。
新平が、近親者(従兄妹)と結婚すると聞かされ、
ローレツがそれは不道徳と言われた。
人が人を知る。そのことによって成長する。
新平はどこを目指したか?

http://www.iwanichi.co.jp/feature/gotou/item_12467.html

ガリレオと太陽電池のめぐりあい

(日経 2009-06-12)

今年は、イタリアの科学者ガリレオ・ガリレイが世界で初めて
望遠鏡で宇宙を見上げてから400年目、
国際天文学連合は、「世界天文年」と名づけた。

美しい星空を眺めると、気持ちが落ち着いたり、
宇宙人がいるのではないかと夢が膨らんだりする。
「地球環境が大変だという時に、宇宙ばかり眺めていられる
天文学者はいいよね」などと、うらやむ人も。

それは大きな誤解だ。
CO2が減らない排出量取引に熱をあげる人たちに比べれば、
天文学者は真剣に地球環境について考えている。

3月22日、標高5640メートルの南米チリ・アタカマ砂漠高地の
チャナントール山山頂で、東京大学が建設した赤外線望遠鏡が、
初めてとなる星の光「ファーストライト」をとらえた。
望遠鏡の設置場所として世界で最も高く、
宇宙に最も近い場所での宇宙観測が始まった。

このプロジェクト「東京大学アタカマ天文台(TAO)計画」は、
東大の吉井譲教授が中心、1997年から10年以上かけて準備。
取り組むのは、宇宙観測だけではない。
地球環境の改善に貢献するため、TAOの名称に「太陽光利用」(Solar)
を加えた「SolarTAOプロジェクト」を今年始めた。

これまでの大型天体望遠鏡は、すべて石油を燃料とした
ディーゼル発電を電源。
TAOは、世界で初めて太陽電池でつくる電気を使う。

標高2500メートルに置く太陽電池から、50キロメートル離れた
標高5640メートルの望遠鏡まで、液体窒素で冷やし電気を無駄なく流す
「高温超電導直流送電」ケーブルでつなぐ。
「初めからすべて高温超電導ケーブルにするのはハードルが高いが、
銅ケーブルでの代用部分も合わせて、13年末までに
太陽電池から望遠鏡まで送電できるようにしたい」(吉井教授)

三洋電機の桑野幸徳元社長は、20年以上前に世界の何カ所かに
太陽電池を設置し、互いを高温超電導ケーブルでつないで
電気を融通しあう「GENESIS計画」を考案。
SolarTAOプロジェクトは、その計画を実現に近づけるきっかけ。
高温超電導直流送電研究の第一人者である
中部大学の山口作太郎教授と先端技術開発ベンチャーの
ナノオプトニクス・エナジー(京都市、藤原洋社長)が協力。

SolarTAOプロジェクトで実施する環境研究は、まだある。
通常、宇宙観測で大気中のCO2は雑音になる。
SolarTAOプロジェクトでは、これを逆に利用し、CO2濃度を測定。

プロジェクトは天文学者の吉井教授と、超電導や太陽電池に詳しい
下山淳一准教授が中心になって進める。
東大で具体的な内容を相談する会合は、今年1月から既に10回以上。
関心をよせる大手のメーカー10社ほどがオブザーバーとして参加し、
ビジネスの機会を待っている。

太陽電池は、サンペドロ・デ・アタカマ市の約1キロメートル東に設置。
設置面積は数万平方メートルで、発電能力は20メガワット級。
ここでつくる電気は、市を経由して望遠鏡に送られる。
実際に発電できるのは4メガワットで、3メガワットを市に送り、
残り1メガワットを望遠鏡で使う。

太陽電池でつくる電気を、いったん電池に蓄える案もある。
「『うちの電池が一番。ぜひ使ってほしい』という
企業からの申し出がたくさんある」と、
プロジェクトへの関心の高さに下山准教授はうれしい悲鳴。

地球の周りの大気は汚れる一方。
視力が落ちたからでなく、空気が汚れているから、
だんだん星が見えなくなってきた。
地上からきれいな星空を観測したい天文学者の活動が、
地球環境を改善するプロジェクトに結びついた。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090610.html

星空に学ぶ(2)ミニ衛星で広がる興味

(読売 6月10日)

宇宙への興味をかき立てる体験型の授業が始まっている。

秋田県立能代高校の一室。
黒板の前のスクリーンに映し出されたロケット打ち上げの映像を、
課題研究で物理を選択した理数科の2年生10人が、
食い入るように見つめていた。

「これを実現したのは、みんなと同じ高校生です。
設計図はなく、すべて自分たちで設計して組み立てたんだよ」
秋田大学の土岐仁教授(57)(機械工学)が説明。
驚いた表情を浮かべる生徒たち。
男子生徒の一人は、「ロケットを飛ばすのはかっこいいと思って
参加したけど、大変そうだ」

高校生たちが挑戦するのは、ミニ衛星「缶サット」。
空き缶の中に、小型無線カメラなどの観測機器を搭載したもの。
費用の大半は、独立行政法人科学技術振興機構の
「サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト」の支援。

製作は、秋田大と共同で進められ、最終的には土岐教授らが
中心となって、8月に全国の高校生を集めて能代市内で開く
「缶サット甲子園2009」に出場。
全長約2メートルのプラスチック製小型ロケットで、
約400メートル上空に打ち上げ、パラシュートで降下する間に、
地上のターゲットを撮影する技術を競う。

授業を担当する能代高校の石崎敦史教諭(43)は、
「教科書を教える授業だけでは、宇宙の魅力がすべて伝わるわけではない。
体験を通じて宇宙に興味を持ってくれれば」と期待。

土岐教授は、2006年度から、女子高生を対象にした
「ロケットガール養成講座」を秋田大で開講。
缶サットに加え、打ち上げ用の小型ロケットも作る。
女子高生が、物理や数学を好きになったきっかけに、
宇宙が多かったという調査結果を知り、理系分野に親しむためには
宇宙を教材にするのがふさわしいと考えた。

設計図や教科書はなく、女子高生たちは自分たちで
試行錯誤しながら作業を進める。
機体作り、エンジンの配線と配管、パラシュートと缶サットを投下する
仕組み作り、缶サット内部の製作という4班に分かれ、
秋田大生にアドバイスを受ける。
缶サットのカメラの向きやパラシュートを工夫したり、ロケットと缶サットの
切り離しのタイミングが成功の鍵になる。

土岐教授は、「打ち上げに成功しても、缶サットがうまく投下できないことや、
パラシュートが開かず墜落したことも。
生徒が自分の頭で考え、工夫することで、
本当のおもしろさを分かってもらえる

これまでに参加した女子高生のうち2人が秋田大に進学し、
宇宙工学を学んでいる。

土岐教授は、「缶サット甲子園とロケットガールの相乗効果で、
さらに宇宙分野に興味を持ってもらうようにしたい」

◆サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト

教育現場と大学などの研究機関との連携によって、
科学教育や理数科目への興味を高めることを目的に、
研究者らが実験や講演会の講師をする講座の費用を負担する事業。
大学や企業などの研究・技術開発を支援する
独立行政法人科学技術振興機構が実施。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090610-OYT8T00272.htm

いずこも同じ成熟国の悩み?

(サイエンスポータル 2009年6月10日)

科学技術の問題は、科学技術にとどまらず、
日本人がどう生きていくかということ。
かつて日本の社会、欧米にも心意気というか、人生哲学があった…。

阿部博之・元東北大学総長(前・総合科学技術会議議員)
青少年の理科離れや日本人一般の科学リテラシー低下に対し、
具体的な手が打たれつつある。
しかし、小中学校の理数科の授業時間数増といった
手直しだけで済む話ではなさそう。

足利女児殺害事件のケースはどうか。
えん罪であることを、検察も認めたと受け止められ、
自白重視の現在の捜査、裁判のあり方があらためて問われている。
今回は、DNA鑑定に対する過去の判断の誤りが認められ、
えん罪が辛くも避けられた。

これまで、膨大な数の裁判で成されてきた証拠に対する判断は、
すべて司法以外の世界で通用するものばかりと言えるか。

法曹関係者の科学リテラシーは、心配なうちの一つ。
そんな声を、社会人の科学リテラシー向上活動に取り組もうとしている
あるNPO法人の代表(物理学者)から聞いた。

経済開発協力機構(OECD)の報告書「Top Of The Class」に、
いろいろ気になる指摘。
「OECD諸国では、科学で最上位の成績を収めている
高校生の約40%が、科学関係のキャリアへ進むことに興味がなく、
約45%は科学の勉強を続けたくないと思っている」

これはどういうことか?
科学でよい成績をとっている高校生たちの半分近くが、
科学を職業に生かしたいとまでは思ってなく、
OECD加盟国の多くが、教育でそうしたモチベーションを
与えることに失敗している。

OECDの公表資料には、
「動機付けに欠ける成績上位者は、テストでよい成績をとっても、
科学の授業を面白いと思わず、学校外では科学と接する機会をもたない」、
「科学の成績最上位者の約3分の2は、テレビの科学番組を見たり、
科学関係の記事を読んだりせず、
4分の3以上は科学分野のウェブサイトにアクセスしたり、
科学クラブに入ったりしていない」

若者の理科離れや社会人の科学リテラシー低下の理由は、
学校で理科が不得手でそうなったとは説明できない。
科学を一生懸命勉強しても、自分の人生設計に役立つとは思えない。
科学技術は、社会のありように決定的な役割を果たしていない。
必要だけど、一部の“専門家”に任せれば済む程度のこと。
このように考える成績優良者が少なくない、ということではないか。

科学技術、科学的精神が社会の健全化、安定化、発展に欠かせない
基盤の一つになっている。
こうした現実を理解させることは、簡単な話ではない。
「科学技術の問題というのは、実は科学技術にとどまらないで、
日本人がどう生きていくかということでもある」(阿部博之氏)というのは、
日本に限らず、成熟した国家に突きつけられている
共通の課題ということだろうか。

http://www.scienceportal.jp/news/review/0906/0906101.html

筋肉難病の改善に犬で成功 化合物で遺伝子に「ふた」

(2009年6月8日 共同通信社)

筋肉の力が徐々に失われる難病、筋ジストロフィー(筋ジス)と同症状を、
一部の遺伝子の働きを妨げる手法を使って改善することに、
国立精神・神経センターなど日米のチームが犬の実験で成功、
米神経学会誌に発表。

筋肉の種類による効果のばらつきなどを改良する必要があるが、
安全性は高く、チームは「将来、多くの患者への応用が期待できる」

筋ジスの中で最も多い「デュシェンヌ型」を再現したビーグル犬で実験。
デュシェンヌ型は、筋肉細胞の形を保つ「ジストロフィン」という
タンパク質の合成が、遺伝子変異によって途中で止まってしまうため、
筋力の低下や萎縮が起きる。

「モルフォリノ」という化合物を注射することで、
変異した遺伝子とその周辺の遺伝子が働かないように
「ふた」をする手法を開発。
機能するジストロフィンを合成できるようにした。

生後5カ月の筋ジス犬に週1回、計5回注射したところ、
注射する前より早く走れるようになった。
注射しなかった犬は、同じ期間に症状が進み、走るのが遅くなった。

足の筋肉細胞の中で、ジストロフィンが合成されることも確認、
心臓ではジストロフィンはほとんど合成されず、
筋肉の種類によっては効果が不十分なことも分かった。

▽デュシェンヌ型筋ジストロフィー

筋肉細胞の構造を支えるタンパク質ジストロフィンが、
遺伝子の変異によって作られず、筋肉が徐々に萎縮する遺伝性疾患。
男児の約3500人に1人が発症。
年齢とともに筋力低下などの症状が進行し、患者の多くは30歳までに
呼吸不全や心不全で死亡。
根本的な治療法は見つかっていない。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/8/101463/

2009年6月18日木曜日

中尊寺落慶供養願文をTシャツに 有志が作製

(岩手日報 6月7日)

奥州藤原氏、初代清衡の平和思想を広く知ってもらおうと、
平泉町と一関市の有志が、「中尊寺落慶供養願文」を、
英訳しTシャツにした。
平泉町で開催されるイベントで販売開始。

収益の一部で、平泉文化を紹介する英語の本出版も目指す。
平泉を訪れる外国人旅行者が、清衡の平和思想に触れる
きっかけにもなりそう。

Tシャツは、紺と白の2色。
金色の文字で、すべての人や生き物が浄土に導かれるよう、
願う言葉が英語で書かれている。

紺色の紙に、金色の文字で書かれた中尊寺所蔵の
「紺紙金字一切経」からイメージ。
TシャツのサイズはSSからXLまで5種類で、1枚1500円。

通訳ガイドの菊池敦子さん(一関市大東町)が中心となり、
1年ほど前から準備を進め、中尊寺の協力を得て作製。

英訳は、平泉町在住の英国人千葉ローズマリーさんが担当。
一関市大東町の障害者福祉サービス事業所「室蓬館」で印刷。
1千枚作製。今後は、3千枚の販売を目指す。
菊池さんは、「平泉文化の良さを広く知ってほしい」と期待。

平泉町で開催されるウオーキングのイベント
「IBC平泉ウォーク」の発着点・旧観自在王院庭園で販売開始。
同町平泉のこざか豆腐店やインターネットでも販売。

問い合わせは、「中尊寺落慶供養願文Tシャツプロジェクト」事務局
(菊池敦子さん、ファクス兼用0191・75・3265)。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090607_5

特集:後藤新平の真髄07 安場と新平 再び

(岩手日日 2009年4月2日~)

安場保和から後藤新平が、月々3円をもらって苦労していた。
明治5年のことだが、今の通貨ならどの程度か?
当時の3円は、現在は2780倍に。ざっと8300円。
新平、原敬らは1か月8300円で暮らしていた。ことに。
困苦欠乏にもめげず、ひたすら未来の夢を実現しようと
懸命に努力していたことが分かるだろう。
当時、巡査の月給は4円。
推察すると、少なくない額であり、援助を続けた安場保和は
どんな人物であったろうか。

◆安場保和という人物

『日本の歴代知事』という本。
愛知県の項を引くと、安場保和についてこう書かれている。

安場は、天保6(1835)年4月17日、旧熊本藩士の子として生まれる。
幼名を一平と称した。維新の功臣の一人。
明治2(1869)年から胆沢県(岩手)、酒田県(山形)大参事
(現在なら副知事相当)を歴任、明治4年に大蔵大丞、
租税権頭と兼ねて従五位に任ぜられる。
明治5年、岩倉具視らと欧米歴訪の旅に出るが、中途で日本へ帰る。

明治5~8年まで福島県令を務める。
明治8年12月3日、愛知県に転任。在位期間は、わずか18日間。
歴代知事の中で、名前だけ連ねただけ。
しかし、胆略のある知事だったとの評判で、地租改正事業には
農民相手に大騒擾を惹起して頭を痛めた。
農業に尽くした功績も見逃せない。
愛知県に尽くした水利治績は、今日の明治用水の礎として特筆に値する。

福島県令時代はどうであったろうか?
明治5(1872)年6月、3代目福島県令として就任したのが、
「開明県令」といわれた安場。
横井小楠の門に学び、戊辰戦争には東海道鎮撫総督参謀の一人として参加。
東北地方へ第一歩を印したのは、胆沢県(岩手)権大参事となった時。

福島県権令に着任して、再び東北地方の開明に情熱を傾けることに。
安場の情熱は、後藤新平にも向けられた。
福島県時代の安場は、教育に最も力を入れた。
自ら先頭に立って小学校の設置を図るとともに、
未就学児童の実態調査、就学督励に尽力。
教員養成を目的に、講習所(福島師範学校‐福島県立大学)を開設、
福島医学校の前身・須賀川医学校を設け、教育県福島の基礎づくりに。

人材の発見と登用に、大きな力を傾けた。
安場の福島時代、小学校に併設した洋学校に後藤新平を呼び寄せ、
須賀川医学校に学ばせた。
安場が胆沢県権大参事として水沢に来なかったら、
後藤新平の前途はどうなっていたのであろうか?

人は人を知る。いや、知られる。
かくて、才能発揮の機会が到来する。
新平の生涯をみると、出会いの妙を思う。

◆新平は一流の医師へ

新平は、明治6年、阿川の官舎に入って、福島小学第一洋学校に入学。
明治7年、中途で帰郷した。
父十右衛門はこれを戒め、再び引き返す。
須賀川医学校に入学し、生徒寮に入る。
阿川の留守中に預かり金を費消し、始末に困って、
父十右衛門に手紙を送り、救済の懇願をする。

明治8年、福島県病院六等医生となり、医学校生徒取締り(内舎副会長)
として月給3円を支給。
明治9年、生徒寮内外舎長となり、月給8円を支給。
自ら調剤の眼薬「済衆水」を父に発売。
8月、名古屋に着く。
安場が愛知県知事になったのを契機に、阿川光裕が愛知県に転任、
阿川邸に落ち着く。
愛知県病院三等医を拝命し、医局診療専務となる。月給10円。

ここまでの新平にとって、安場は大きな力を持つ支援者。
新平は、それに応えるべく、外科医技量を発揮。

明治9年、新平は阿川家を出て、教授司馬凌海の家塾から
愛知県病院に通い、教師ローレツの指導を受け、
一層医師としての腕を磨く。
次第に一流の医師としての評価を得る。

明治10年、公立医学所二等授業生となり、月給12円を支給。
新平が出世街道を歩んでいた時期、西南戦争が起き、
維新の功労者西郷隆盛が自刃。

(参考:後藤新平記念館発行の資料)

http://www.iwanichi.co.jp/feature/gotou/item_12308.html

3G携帯2兆元市場に食い込め

(日経 2009-06-11)

中国で、第3世代携帯電話(3G)の商用サービスが
本格的に始まった。
6億人以上が利用する世界最大の中国市場。
3G投資は、携帯向けソフト開発なども含めると2兆元(約29兆円)規模、
中国政府は景気刺激策の柱に位置づけ。
保護主義的な色彩も色濃いが、世界中の通信機器大手が
最大の商機に食らいつくなか、日本勢の存在感は薄い。

「3Gで生活を楽しくしよう」
中国携帯最大手、中国移動通信集団(チャイナモバイル)
北京市内の販売店では、女性販売員らが大声で呼びかける。
「ネットカフェに行かなくても、人気歌手の動画も簡単にダウンロードできる」
販売員が3G特有のサービスを紹介すると、顧客の女性は感心した様子。
「3Gを持っている人がまだ少なくて目立てる」と購入。

動画配信サービスは中国移動によると、ノキア・シーメンスの技術。
同社は、フィンランドのノキアと独シーメンスの携帯電話サービス会社、
「安定したサービスを評価して導入した」(中国移動)。

中国の3Gは、もともと2005年に始まる予定。
中国政府が中国移動に、中国独自の通信規格「TD—SCDMA」の
採用を義務づけ、開発が難航。09年までずれこんだ経緯。

現在主流の第2世代携帯電話(2G)では、
中国メーカーが育ってなかったため、通信設備では
ノキア・シーメンスやモトローラなど海外勢が席巻。
端末でもノキア、サムスン電子、モトローラが3強を構成。

「3Gでは、同じ過ちを繰り返さない。
中国企業に、内需拡大の恩恵を与えるように政策配慮している
(工業情報化省幹部)。
3Gでは、国内通信設備大手の中興通訊や華為技術、
大唐電信科技に通信設備を発注。
3G端末でも現状は国産メカーの比率が高い。

「欧米の先進技術を使って、消費者の購買意欲を刺激することも大切」
(民間調査会社幹部)
中国移動は、3Gサービスをノキア・シーメンスから導入、
携帯向け半導体大手STエリクソンと5月に提携、
3G向け低価格端末の開発で合意。

STエリクソンは、多くの外資系端末メーカーに半導体を提供、
中国でも海外メーカーのシェアが広がる可能性。
ノキアの中国法人幹部は、「世界の携帯電話市場が停滞するなか、
中国市場で業績を伸ばしていくしかない」

一方、日本勢で存在感のあるのはシャープくらい。
大都市の女性層などに売り込んでいるが、シェアはわずか。
「欧米韓大手と比べ、中国市場で投じている広告宣伝費はケタ違いに少ない。
将来は劣勢になる恐れもある」(中国の広告宣伝会社関係者)

日中政府間では、麻生太郎首相や鳩山邦夫総務相が訪中。
中国政府側と、次世代携帯電話の技術協力に関して合意。
日本のコンテンツやアプリケーション(応用)ソフトを
中国への導入などを目指す。

中国では、動画などの多くが無料で楽しめ、著作権への考え方も異なり、
日中政府間の合意の進展は簡単ではないが、
中国側にも、「日本のように通話以外の課金ビジネスをうまく育てたい」
(中国移動幹部)との思いは強い。
日本企業が、中国企業とのビジネスにどれだけ深く入れるか?
これから正念場を迎える。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt090609.html

星空に学ぶ(1)好奇心育む「宇宙の学校」

(読売 6月9日)

宇宙を切り口に、子どもの好奇心や想像力をふくらます試み。

体育館の天井に向けて突き出された棒の先の箱から、
シンジュという木の種に似せた折り紙がひらひらと舞い降りてくる。
「うわぁーっ」と、歓声を上げて手を伸ばす子どもたちと、見守る親たち。
講師の遠藤純夫さん(69)が、「よく見てくださいね。
種は、こうやって地上にばらまかれるんですよ」

国分寺市で開かれた「宇宙の学校」。
主催したのは、NPO法人「KU―MA(子ども・宇宙・未来の会)」
宇宙航空研究開発機構などで、宇宙の開発や研究に携わってきた
科学者や、「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などの作品で著名な
漫画家の松本零士さん(71)ら、有識者により昨年6月に設立。
遠藤さんも理事を務める。

KU―MAが各地で開く宇宙の学校の対象は、
幼稚園児から小学校低学年までの子どもとその保護者。
プログラムは、家庭学習と、地域の公民館や科学館を会場に
大がかりな実験・工作を行うスクーリング数回で構成。

KU―MA会長で、元宇宙機構執行役の的川泰宣さん(67)が、
「宇宙は、好奇心や興味を引き出すための入り口に過ぎない」、
家庭学習や実験、工作の内容は様々。
家庭学習では、「水に浮くもの沈むものを見つけよう」、
「海水から食塩を取り出そう」、「つる植物の観察」など、
宇宙機構が作成した28種類のテキストをもとに学ぶ。

実験や工作では、張り合わせたゴミ袋の中に温かい空気を入れて
浮かせる熱気球、ビニール袋をふくらませて飛ばすロケットなど
宇宙を連想させる実験から、地球上の動植物や自然現象などを、
幅広く取り上げる。

シンジュやラワンの種の模型飛ばしのほか、
風を知るためのかざぐるまづくり、
海の生物を知るための星砂探しが行われた。

親子で取り組むことで、家庭の中で科学への関心をどんどん広げて
もらうのも大きな狙い。
子どもだけでは作れない、解けない課題を準備し、
親子で解決に取り組まざるを得ない状況にあえて追い込んでいる。

参加した国分寺市の主婦、永井英子さん(37)は、
「学校ではあまり教わらないことや、保護者だけでは教えられない
専門的なこともできるので参加。
娘にはいろんなことに興味を持ってほしい」

同市立第五小学校2年生の福田周真くん(8)と参加した
父親の稔さん(38)は、「家でも話が広がりそう。
かざぐるまくらいなら、子どもよりうまく作れるので、
親としての威厳も保てます」

的川さんは、「この学校は、家庭と宇宙、家庭と科学を結ぶのが目的。
家でも、親子で日常的に宇宙や科学を話題にしてくれれば、
探求心が育つのでは」と期待。

家庭での親子の会話が、宇宙への大きな一歩になる日が来るかも。

◆宇宙航空研究開発機構

宇宙・航空の基礎研究から技術開発・利用までを担う独立行政法人。
大型ロケット「H2A」の打ち上げ時の安全管理、
国際宇宙ステーションの開発・運用のほか、宇宙飛行士の養成。
宇宙を題材にした教育活動も行っている。

◆世界天文年の今年、日本では皆既日食…

今年は「世界天文年」。
イタリアの科学者・ガリレオが、望遠鏡で天体を観察して400年、
国連などが節目の年として指定。
この記念すべき年に、日本では珍しい天文現象が出現。
7月22日、トカラ列島や種子島などで「皆既日食」を観測でき、
天文ファンの期待を集めている。

宇宙では今、宇宙飛行士の若田光一さん(45)が、
日本人で初めてとなる長期滞在生活に挑戦中。
国際宇宙ステーションでの滞在期間は、間もなく3か月を迎える。
今月中には地球に戻る予定。

宇宙や天文関連での大きな出来事が続く中、
国内外の宇宙天文施設では、星の観測会や宇宙関連の
展示会の開催や、民間団体や教育機関による宇宙天文教育の活動など、
関連イベントも広がっている。

国立天文台で、宇宙教育を担当する元高校教師の
縣秀彦准教授(48)は、「宇宙は自然のすべてを包含する。
理科の勉強だけではなく、芸術の題材にもなり、非常に間口が広い。
だから幅広い人の関心を呼び、興味を引き出すことができる」

肝心の教育現場では、深刻な問題。
小中学校や高校の授業では、宇宙や天文を扱う授業が減り、
これに歩調を合わせるように専門教員も少なくなっている。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090609-OYT8T00323.htm

国立大学博士課程の定員縮小要請

(サイエンスポータル 2009年6月10日)

文部科学省は、国立大学法人に大学院博士課程の入学定員を
来年度から始まる次期中期目標・中期計画で見直すよう求めた。

通知は、第1期中期目標期間(2004-09年度)で、
各法人が必ずしも国民の期待にこたえられていない点があると指摘、
各法人の規模や内容に応じて組織のあり方などについて見直し、
目指す方向と個性化が明確となる次の中期目標・中期計画を
策定するよう求めている。

人口減少や世界的な状況の変化への対応の必要性も指摘。
大学院博士課程について、定員割れしているかどうかといった現状や、
社会が博士課程修了者をどの程度必要としているかなどを
総合的に勘案して見直す必要を指摘、
就職できない修了者が多いところや、定員の大幅割れを来している
博士課程について定員の縮小を求めている。

法科大学院や教員養成系学部についても同様に、
実績に基づく組織編成が必要。
附置研究所について、研究の質の向上に向けて
研究体制などの見直しを求めた。

文部科学省が組織の見直しを迫る背景には、
国立大学の法人化により、組織編成などの運営面や財政面で
大学独自の改革がやりやすくなったことがある。

博士課程の拡充は、欧米に対して人口あたりの博士号取得者が
少ない現実を踏まえ、1996年の第1期科学技術基本計画に
「ポスドク1万人計画」として盛り込まれた経緯。

この目標は、計画より1年早く99年に達成、
博士課程修了者数に見合う就職先が用意されていないため、
安定したポストにつけない若手研究者が増え、
ポスドク問題としてさまざまな議論が起きている。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0906/0906102.html

2009年6月17日水曜日

2型糖尿病 運動不足と食べ過ぎ、子どもの発症が増加

(2009年6月12日 毎日新聞社)

2型糖尿病を発症する子どもたちが増加。
予防法がない1型と違って、2型は運動不足と食べ過ぎが原因。
肥満によって自信を失い、不登校になるケースも。

もみのき病院(高知市塚ノ原)の内田泰史理事長(66)と
岡田泰助・小児科部長(47)=日本糖尿病協会小児対策委員会副委員長=
に、全国に先駆けて取り組んでいるサマーキャンプや
治療法について聞いた。

----糖尿病はどんな病気か?

岡田部長 インスリンの働きが悪くなり、血中ブドウ糖が身体の細胞の中に
取り込まれなくなり、血糖値が上昇(高血糖)してくる病気。
高血糖状態が持続すると、全身の血管に障害が生じ、合併症を起こす。
代表的なものは、目の奥の血管が損傷される網膜症。
失明して、日常生活に支障。
脳卒中や心筋梗塞のリスクも高くなる。

----1型と2型糖尿病の違いは?2型が子どもに増えているのはなぜ?

部長 1型は、何らかの原因でインスリンの製造工場が壊され、
インスリン分泌がゼロになる。
遺伝的要素は少なく原因不明だが、
注射でインスリンを補充すれば100%治療できる。
2型は、食べ過ぎと運動不足からインスリンの作用が悪くなる。
遺伝(体質)の影響が大きい。

治療の基本は、食事と運動療法。
子どもに増えているのは、肥満傾向の子どもの増加に伴い、
インスリンを作る膵ベータ細胞が早期からダメージを受け、
小児期から発症している。
現代社会において、身体活動量が減っていることが最も大きな原因。
食事も、脂肪の占める割合が増えたことも一因。
全く無症状のため、治療を中断してしまう方が多く、
成人後に重症合併症を起こしやすい。
体質的に、日本人は発症しやすい。

----原因や増加の背景をどう分析するか?

部長 社会が便利になるにつれ、身体を動かす必要がない。
通学に車を使ったり、お手伝いもしなくなったり、
夏休みの過ごし方が変わるなど、子どもの身体活動量が激減。

幼少期からの家族の問題が解決できない、現代社会の弊害。
核家族化に伴い、「地域による子育て」がされない。
食の欧米化に伴い、乳製品や高脂肪食、ファストフードなどの
摂取が増え、忙しいお母さんのために簡単にできる料理も普及。
コンビニの軒数や車の台数などと、2型糖尿病患者の増加は比例。

----治療法や生活習慣の改善について。

部長 家族をはじめ、本人と良い信頼関係を築き、
徐々に生活の中へ介入し、「これならやれる」と思えることから始める。
外来診療で、いかに詳しく生活について話してもらえるかが、
主治医の腕の見せどころ。
患者さんとその家族の生活歴を聞き、
登校手段、買い物の仕方、ゲームを買うか買わないか、
テレビの見せ方、家族の生活などを聞くと、ほぼ確実に肥満の原因が存在。
治療方法はすぐに見つかるが、
実行してもらうためにどうお話しすればよいのかがポイント。
いかにモチベーションを持ってもらうか、ということ。

----2型も対象にしたサマーキャンプの目的や内容は?

部長 1型のキャンプは、日本では1963年から始まり、
2型は肥満が要因と言うことで、「自業自得だ」との考えから、
支援の動きがなく、キャンプを開くことが出来なかった。
肥満が原因でいじめられ、運動能力も低いために運動嫌いになり、
不登校や引きこもり状態になる子が多い。
「放っておいていいのか」と、全国に先駆けて、

13年前に1型のキャンプに肥満の子を連れて行ったのが始まり。
以来、毎年参加してもらっている。
栄養士や学生のボランティアの協力で、4泊5日の日程で
カロリー計算の仕方を学んだり、サーキットトレーニングなどの
運動をこなしたりする。

昨年は広島・江田島で行い、4歳-高3の約40人が参加。
「ご飯を1杯食べたら、カロリーを消費するには1時間の散歩が必要」
などと毎食ごとに学ぶ。
運動では競争させ、褒美を用意すると、驚くほど積極的に取り組む。
運動が嫌いなのではなく、自信がなくてやる機会がなかっただけ。
昨年は、減量目標を全員に課し、最大約4キロの減量に成功。

----食事制限は大人でもつらい。どのような工夫が大切か?

部長 一番つらいのは、家の中にたくさん食べものがある状態で
我慢させられること。
家の中に食べ物を持ち込むことを控えるように、
家族全員の協力が必要。
親や祖父母が持ち込まなければ、かなりの方がやせていく。
褒めるのが下手な親と、褒められたことがない子ども、
という組み合わせが多い。
親には褒め方を教える。

----予防策や早期発見について、助言。

部長 母子手帳や幼稚園・保育園・学校での検診から、
成長曲線を作成すれば、早期発見が可能。
10年以上前から県内各地の学校を訪問し、養護教諭の先生に
このことをお願いしている。
予防に関して、3歳から小学入学までの体重増加速度を参考に、
早期に介入すべき。
小児科医にも、啓もう活動。
家族の中に、肥満や2型糖尿病の方が存在している場合はハイリスク。
早期発見早期介入により、発症予防することが大切。

----健康な身体を作る食事は?

内田理事長 よくかんで食べれば、脳の血流が良くなる。
消化吸収が良くなり、発育も良くなる。
かむことによって、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防げる。
20回かむと、食べる量が半分で済む。

家族だんらんで楽しく食べることも大切。
今は、学校から帰ると一人で食べる子どもが多く、
食べる環境が整っていない。
一人で食べると、早くたくさん食べがちに。
家族と一緒に食べることにより、親子の会話が弾み、
コミュニケーションの手段にもなる。
家族との会話を大切にすると、健康になる。

笑うことによって、免疫力が増す。
楽しく食事をして生き生き暮らせば、糖尿病の防止に。
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◆09年度(第20回)県小児糖尿病サマーキャンプ
(主催・県小児糖尿病つぼみ会)

【日程】8月5日(水)-9日(日)4泊5日
【場所】瀬戸アグリトピア(愛媛県伊方町大久)
【対象】1型糖尿病患者(高校生以下)
【参加費】会員1万円、非会員1万600円
【申し込み先】〒780-0952 高知市塚ノ原6の1
もみのき病院小児科 岡田泰助
(088・840・0222、FAX088・840・1001)
【締め切り】今月30日(火)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/12/101956/