(読売 1月15日)
「仲人さんにお見合いの断り状を出す時は、
早めに丁寧に書きましょう」
約480人の学生で埋まった昭和女子大学の大教室。
岸田依子教授(中世文学)が切り出すと、雰囲気が少し変わった。
携帯メールに夢中だった者が、顔を上げてくすりと笑う。
毎週水曜日、1年生を対象に行う必修の「日本語基礎」。
45分間の授業を年間30回。
漢字や長文読解、敬語などを学ぶ。
この日のテーマは、「手紙の書き方」。
絵はがきのコピーなどを資料として配ったうえで、
学生の関心を引くために取り上げたのが、お見合いの例。
「今の若い人は、手紙を書く機会がほとんどない。
最低限必要なことを身につけてもらいたい」と岸田教授。
「日本語基礎」が始まったのは4年前。
論文に、「っていうか」、「マギャク」などの話し言葉や絵文字が頻出する、
受け答えも満足にできないといった実態に、
教員が悲鳴を上げたのがきっかけ。
「仲間内の言葉が、社会では通用しないのを知ってほしかった」、
授業をとりまとめる猪熊雄治教授(59)(日本近代文学)。
授業の狙いは、相手によって言葉や伝え方を選べる力の養成とした。
テキストは、就職試験に使われる能力・適性検査「SPI」などを
意識した実践的なものとし、テキストを作った教員12人が授業も受け持った。
授業時間は45分と通常の半分にし、学生の興味を引く流行歌も
教材に使うなどの工夫を重ねた。
元新聞記者や編集者らが文章の書き方を個別指導する
ライティングセンターを、開始と同時期に設置。
同大・短大12学科のうち9学科で、少人数の必修ゼミを始めるなど、
きめ細かな指導を充実させていった。
この結果、学生アンケートでは「敬語は新鮮」、「手紙を書いてみたい」など、
積極評価する声が年々増加。
ライティングセンター利用者も、2008年度の584人が、
昨年度は961人へと2倍近くになり、「手応えを感じる」と猪熊教授。
「授業の課題がきつい」と、ぼやく学生も少なくないが、
文化創造学科1年の勝千恵さん(18)は、
「敬語の使い方は、就職活動でも役立ちそう」
日本語基礎を受講した学年が就活に臨むのは、今回が初めて。
就職氷河期のサバイバルに授業がどう寄与するか、成果が注目。
◆ライティングセンター
論文やリポート作成を個別指導する場として、
大学が独自に設ける学習支援の施設。
アメリカでは、ほとんどの大学が設置、日本でも徐々に広がっている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110115-OYT8T00174.htm
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