(読売 1月12日)
生徒たちの机の上には、教科書とノートに加えて、
国語の辞書が置かれていた。
「『森林が涸渇した』という文が出てきたね。
それじゃあ、涸渇の意味を調べよう」。
鈴木一利・主任教諭(44)が指示すると、辞書を繰る音が教室に響く。
東京・瑞穂町立瑞穂中学校で、2年生の国語の授業。
どの子の辞書にも、ラインマーカーでたくさんの印がつけられていた。
「国語だけでなく、他の教科の授業でも、1回は辞書を引かせる。
言語活動の基盤となる語彙力を強化することが、
全教科での学力の底上げにつながる」。
鈴木主任教諭はそう力を込めた。
全教科にわたる言語活動の充実をうたった新学習指導要領を見すえ、
同中は2008年度から、言語活動によるリテラシーの育成を進めてきた。
リテラシーとは、活用・探求する学力。
辞書の活用に加え、全教科での音読、朝の読書に取り組んでいる。
全校あげての実践を支えているのは、各教科での言語活動を整理し、
学年ごとに一覧にした「言語活動バランスシート」。
研究主任の遠藤弘・主幹教諭(53)は、
「教科の枠を超えて情報交換ができるようになり、
生徒に効率的に言語活動を体験させられるようになった。
小学校と連携し、5・6年生で取り組む活動も取り込むことで、
中1ギャップを防ぐのにも役立っている」
バランスシートは、シラバス(授業計画書)として保護者にも公開。
その結果、保護者の協力も得やすくなり、
生徒の家庭学習の習慣がついてきた。
2年生の鳥海将也君(13)は、
「作文を書く時、知っている言葉が増えているのを実感する。
長い文章でも、集中して読めるようになった」と顔をほころばせた。
漢字検定3級を持つ2年生の福永愛望さん(14)は、
「もっと漢字の知識を習得し、高卒・大学・一般程度が対象の2級を、
卒業までに合格したい」と意気込む。
言語活動の成果は、データにも表れている。
全国学力・学習状況調査で、主に知識を問う国語Aの結果を比べ、
無解答率が1割を超えた設問が08年度は4項目あったが、
09年度は2項目に半減。
リテラシーの向上が、あきらめない気持ちを生み、学習意欲を育む。
学力向上への確かな手応えを、教師たちは感じている。
◆瑞穂中の言語活動バランスシート
書く、読む、聞く、話す・話し合う、家庭学習の五つの言語力について、
国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術、家庭、
英語、道徳、総合、学活、小学5・6年でそれぞれどんな言語活動を
具体的に実践するかを一覧表にまとめたもの。
学年ごとに作成する。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110112-OYT8T00233.htm
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