(毎日新聞社 2008年5月4日)
体のさまざまな組織にあり、神経や筋肉などになる多能性を持つ
「神経堤幹細胞」が、採取した組織によって存在する割合が違い、
異なる性質を持つことを、岡野栄之・慶応大教授らが
マウスの実験で突き止めた。
この細胞はヒトにもあり、将来、患者由来の細胞を使った
脊髄損傷などの治療に役立つ可能性がある。
神経堤は将来、脳や脊髄になる部分と皮膚になる部分の
境界に存在する細胞の集団。
脊椎動物の発生初期だけに現れ、成長すると消えてしまう。
同大大学院博士課程の名越慈人医師と岡野教授らは、
神経堤から分化した細胞が蛍光で光る遺伝子組み換えマウスを使い、
骨髄と皮膚、脊髄から伸びた神経の一部「後根神経節」の3カ所から
神経堤由来の細胞を採取。
この中から、未分化状態の幹細胞をより分け、増殖能力を確認。
神経や筋肉の細胞に分化する多能性があることも実際に確かめた。
組織中に神経堤幹細胞が存在する割合は、
後根神経節が細胞1000個に1個に対し、骨髄では1000万個に1個。
分化能力も、元の組織によって違うことが分かった。
一方、神経堤幹細胞が血流にのって移動し、生まれる直前に
骨髄に入る過程をマウスの胎児で追跡。
骨髄の中に神経を生み出す幹細胞が存在する理由を、初めて明らかに。
後根神経節は、脊髄の隣にある。
岡野教授は、「将来的には、脊髄損傷の患者本人から採取した
神経堤幹細胞を治療に使える可能性もある」。
すでにヒトの皮膚や後根神経節から神経堤幹細胞を採取し、
培養する研究を始めている。
米科学誌「セル・ステムセル」4月号で発表。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=72302
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