(読売 6月11日)
大規模大学が、学生づくりに上級生の力を借りる。
黄金週間のはざま。
立命館大学経営学部の1年を対象にした八重樫文准教授(34)の
基礎ゼミでは、約30人の学生が数人ごとに分かれて
「チベットデモはどうなるかな?」、「サブプライムは?」と
議論の花を咲かせていた。
現在の世の中の情勢を分析し、1年後の社会や経済を
予想するのがテーマ。
1年生のゼミは、大学での学び方や討論の仕方などを教えている。
てんでに言い合う1年生を、「背景を考えてみて」と促したのが
3年の三木涼平さん(20)。
新入生支援のボランティア「オリエンテーター」、通称オリターの一人。
1学年の学生が約7000人いる立命館大で、700人いる。
ゼミの手伝いだけでなく、入学式前後の歓迎会や交流会など
仲間づくりの場を設け、個々の相談にも乗る。
三木さん自身、入学時の心細さをオリターに支えられた。
自分の経験をもとに、「1年生の思いをきちんと受け止めたい」。
八重樫准教授も、「オリターが1年生の理解度をつかんでくれるから助かる」。
上級生を新入生支援のボランティアに充てる大学は、今は珍しくないが、
立命館はその先駆け的な存在。
1960年代、学生運動の拠点だった自治会で、
新入生の世話役を「オリター」と称した。
大学側が「新入生支援のボランティア」として公認したのは、91年。
沈滞した自治会の活性化という理由もあったが、
大規模大学での教育充実に、上級生の力を借りたいと考えた。
研修や活動内容、人選は学部のオリター組織に任されている。
大学から謝礼として、5000円分の図書券が出る。
大学が99年度に法学部1年505人を対象に調べたところ、
「オリターがいてよかった」の声が92%。
2004年度からは、上級生による授業ボランティア
「ES(Educational Supporter=教育支援者)」制度も開始。
前年度に同じ科目を履修した学生のうち、成績優秀者700人を、
学内の「大学教育開発・支援センター」で研修。
新入生らも受ける約300科目の授業内容の点検や受講生の指導。
昨年度からは、教育学の教授ら3人が担当する「ピア・サポート論」の
授業も開講、支え合いの意味を考えてもらっている。
オリターやES活動への参加は、上級生自身の学びにもつながっている。
02、04年の2回、計525人のオリターらに尋ねたところ、6割が
「コミュニケーション能力」、「他者に説明・理解させる能力」などが向上。
学内には「学生を取るだけ取って、上級生任せでいいのか」という疑問も。
300人超の大規模授業が全体の3割、約4200を占める状況で、
教育の質を維持・向上できるか。
大規模大学の課題は残る。
◆院生補助員は3分の2の大学が活用
文部科学省の調査では2006年度、大学院生に、手当を支給して
学部で教育補助業務をしてもらうTA(ティーチング・アシスタント)は、
全大学の66%に当たる465校が活用。
「実験・実習・実技指導」が422校で最多、「ゼミの指導」が221校。
TAの総数は約8万人。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080611-OYT8T00262.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿