(読売 10月20日)
「どんな仕事に興味を持ちましたか」と書かれたプリントを前に、
学生が真剣な表情で求人情報誌のページを繰っている。
手元をのぞくと、「顧客対応なしで、データ入力がメーンの一般事務」と
書かれている。
明星大学が、発達障害の学生を対象に開く「STARTプログラム」。
3・4年生クラスの講座は、仕事の探し方がテーマ。
2008年度、教職員のボランティアで始まった同プログラムが、
大学の正式な取り組みとなったのは09年度から。
今年度は27人の学生が、授業料とは別に月2万円を払い、
年間30コマのプログラムを受講。
「保護者の要望が強く、確実に活動を継続していくため、
受益者負担が望ましいとの結論に至った」、
村山光子・学生サポートセンター長(41)。
同プログラムの最大の特徴は、対人関係を積極的に営む技能である
「ソーシャルスキル」よりも、社会や学生生活で困った場面を
乗り切るために使う、最低限の実践的スキルの獲得を目指している点。
「小中学生までは、ソーシャルスキルトレーニングが重要だが、
対人関係の苦手さを克服できない場合も。
こうした大学生に求められるのは、人と仲良くしなくても
社会で受け入れられ、自立していくための『サバイバルスキル』だ」、
プログラムを開発した小貫悟准教授(42)。
広汎性発達障害である情報学部4年生の川島豊さん(22)(仮名)は、
2年生からプログラムに参加。
「楽しみながら、社会人としての基礎が身につくここは、居心地のいい場所。
授業中、パニックになって騒ぐこともあったが、
先生に質問するタイミングが分かり、落ち着いて学習できるようになった」
プログラムに参加した4年生5人のうち、4人の進路が決定するなど、
就労面でも成果が表れている。
川島さんも、外食産業で働くことが決まり、就業体験と卒業論文に
精を出す日々を送っている。
「大学生活への適応と就労との間には、高いハードルがある。
そこをクリアするのに必須なのが、自分の障害を受容すること」と村山さん。
同じ障害がある仲間と自己理解を積み上げていく経験が、
社会で生き抜く力であるサバイバルスキルを身につけることにつながっていく。
◆STARTプログラム
「Survival skills Training for Adaptation,Relationship,Transition」
の略称。大学適応(アダプテーション)、対人関係(リレーションシップ)、
就労準備・社会自立(トランジション)の3領域を中心に、
社会の中でより過ごしやすくなるため、
必要なスキルの獲得を目標としたトレーニング。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101020-OYT8T00209.htm
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