(読売 10月21日)
「友だちとのかかわりを通して、成長した息子を見ると、
大学進学はむだではなかったと感じている」
大手前大学(西宮市)の健康相談室。
現代社会学部3年、椎名篤さん(20)(仮名)に優しい視線を向けながら、
椎名さんの母親(51)が、きっぱりと言いきった。
椎名さんの母親が、椎名さんの発達障害を大学に伝えたのは、
指定校推薦入試に合格し、入学が迫った1月。
「学習障害のある息子が社会に出る前、
大学で多くの人と交わってほしかった」
相談を受けた大学側は、椎名さんが入学後、入部を希望した
運動系サークルの部員に、「話を理解するまで、
ちょっと時間がかかるけれども、受け入れてほしい」と
働きかけるなどして協力を要請。
キャンパスに、椎名さんの居場所を作り、学生生活を支援。
学習面では、発達障害の早期支援のため、学習支援センターを開設。
スクールカウンセラーを常駐させ、履修登録や授業の課題でつまずく
学生のフォローを始めた。
「お菓子を食べる会など、学内で人間関係を築ける場も提供」、
学生課の安井敏裕課長(52)。
これらの支援を受け、サークルやゼミでは友達ができ、
学習面でも大きな成長を見せている椎名さん。
「課題が難しかったり、リポートが書けなかったりして
落ち込んでしまっていたが、最近はひとりで心を落ち着かせて
解決できるようになった」と笑顔。
同大は2年前から、学生に発達障害が疑われる場合、
積極的に親との面談を持つようにしている。
親が子どもの発達障害を受け入れなかったり、理解できなかったり
することで、苦しむ学生が目につくようになったから。
入学させた以上、大学側はきっちり4年間で卒業させ、
就職まで面倒を見て当たり前、と考える保護者もいる。
「発達障害を申告してくれれば、教員に授業時の配慮を依頼するなど、
スムーズに支援体制を取れる。
保護者が、我が子の障害を受け入れず、
4年間での卒業にこだわり過ぎれば、ゆっくり成長していく
発達障害学生の可能性を狭めてしまうかもしれない」と安井課長。
効果的な支援には、学生のありのままの姿を受け入れることが欠かせない。
大学と保護者が手を携えることから始めなければならない。
◆学習障害
基本的には、全般的な知的発達に遅れはないが、
聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する能力の習得と使用に
著しい困難を示す状態。
LD(Learning Disabilities)とも言われる。
特に、読み書きが困難な場合、ディスレクシア(読み書き障害)と呼ぶ。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20101021-OYT8T00188.htm
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