(読売 9月23日)
「もっと力強く書いて!」
墨汁で手足を真っ黒にした女子高生が、
縦4m、横6mの巨大な紙に大きな筆を振り下ろす。
愛媛県四国中央市の県立三島高校の教室。
軽快な曲が流れる中、書道部の女性部員11人が、
1週間後に地元で開かれる「書道パフォーマンス甲子園」に
向けて、練習に励んでいた。
同甲子園は、「紙のまち」として知られる同市で、
書道ブームに乗った街おこしとして始まった。
同甲子園を描いた映画『書道ガールズ!!』の公開で、
認知度が一気に高まり、3回目となる今年の参加希望校は、
前年(4県5校)の4倍近く(11府県18校)に急増。
初めて、書類審査も行われた。
「パフォーマンスのおかげで、魅力を多くの人に知ってもらえた」、
映画のモデルにもなった同高で、書道部顧問を務める
阿部秀信教諭(33)。
かつては部員集めに苦労したが、
今は毎年数人の入部希望者がいる。
練習は、運動部顔負け。
筆を握る前、2km走に腕立て伏せ、腹筋、スクワットなど
トレーニングは欠かさない。
パフォーマンスに使う重さ10kgを超える筆を、
自在に操るには、体力も求められる。
「作品を書く様子を、人前にさらす必要はない」などの批判も。
部長で3年の近藤友希さん(17)は、
「書道の楽しさが伝わり、書道を始める若い人が増えればいい」
7月31日、同市立体育館で行われた本番。
部員たちは、そろいのはかま姿で登場。
惜しくも3位に終わったが、約3000人の観客たちは
地元校の健闘をたたえた。
暗い、地味と言われがちだった文化系の部活に今、活気がある。
90年代から00年代にかけ、「~甲子園」と銘打つ
文化系の大会が相次いで登場した影響。
高知県などが、92年に始めたまんが甲子園から、
ディベート、版画、短歌まで。
いずれも高校生たちが一つの会場に集まり、審査員の前で
作品の制作や発表のパフォーマンスを競う。
全国高校文化連盟会長の藤原正義・岩手県立盛岡第四高校長(60)は、
「球児だけでなく、文化系の活動に励む高校生たちにも
注目が集まるのはすばらしいこと。
パフォーマンスは、表現力の向上につながり、
社会に出ても必ず役に立つ」
学力や体力、道徳意識の低下を背景に、部活が注目。
中学と高校の新しい学習指導要領にも、
その意義などが初めて明記。
時には地域も巻き込み、様々に変容しながら
展開する実態を追った。
◆書道パフォーマンス甲子園
高校生が、文字の美しさや表現力を競う大会として、
2008年に始まった。
1チーム最大12人が音楽に合わせ、
特大用紙(縦4m、横6m以内)に自由に書く。
制限時間は6分。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20100923-OYT8T00236.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿