(読売 1月27日)
不服そうなチャッド君の表情が、
教室前面のスクリーンに大きく映し出された。
ブルース君に、バスケットボールを横取りされてしまった。
「チャッド君はどんな気持ちかな?」
中台生美教諭(35)が聞くと、児童からは「やな気持ち」、
「許せない」と声が上がる。
品川区立第二延山小学校2年3組で行われた、
暴力防止教育プログラム「セカンドステップ」の授業。
中台教諭は、「『怒り』のサインが出ている。
怒ることは、人間にとって当たり前」、
「『やられたらやりかえす』だと解決にならない。
『ケンカを避ける』ためには、どうすればいいかな?」と問いかけた。
「落ち着きのステップ」と男子児童が発言したのに続き、
「前に習ったよ」と次々に意見が出る。
「数字を逆から数える」、「深呼吸する」、「その場を離れる」――。
安全か、フェアかなど話し合い、
「ブルース君に、『一緒に遊ぼう』って言ってみようかな」という
解決案も最後に出た。
品川区は、2009年度から、同プログラムを区立全小学校38校に導入。
1、2年で計20時間。
「気持ちは変わる」、「フェアとは」などの相互理解、
「立ち止まって、落ち着いて、考えよう」という問題解決法と
「独り言」など怒りの扱いを順に学ぶ。
和気正典・同区教育委員会小中一貫教育担当課長(57)は、
「家庭の教育力が低下すると共に、集団遊びや大人と接する機会が減り、
相手の表情から心理を読み取ったり、トラブルが起きた時、
感情をコントロールしたりする方法がわからない子どもが増えている。
どう対応すればいいかを、小さいうちから教える」と狙い。
「『死ね』、『殺すぞ』と、簡単に口にする。
子ども同士で、すぐ殴り合う。これはあかん。
何かを間違って覚えたのか」
数年前、兵庫県のある小学校に赴任した校長は、
子どもの状況にがくぜんとした。
早速、「社会で生きる力」などの授業を導入、
すぐかっとなる子が数か月で落ち着いた。
校長は、「暴力をふるいそうになった時、『その場を離れる』などの
方法を積み上げて学んでおけば、中学、高校と上がっても役に立つはず」
子どもたちが、荒れる主な舞台は中学校。
相手を思いやり、暴力をふるわない気持ちを育てる教育は、
小学校でも徐々に始まっている。
◆セカンドステップ
NPO法人「日本こどものための委員会」が、
シアトル市で開発されたプログラムを翻訳し、日本に紹介。
試行時に調査した山形大学の宮崎昭教授によると、
攻撃する態度が減るなどの効果があった。
「ファーストステップ」は、暴力の被害者にならないためのプログラム。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110127-OYT8T00302.htm
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