(読売 1月26日)
「おはようございます」、「こんにちは」。
福岡県内のある中学校では、あいさつの言葉が頻繁に飛び交う。
校舎の窓や廊下は、ぴかぴかに磨き上げられ、
生徒の髪や服装に乱れはない。
朝7時から、有志で校舎周りを掃除しているという3年男子は、
「みんなでやるから楽しい。
だらだらしたら先生に失礼だから、きちんとしたい」
「以前は、どんより重苦しい雰囲気だった」と、教諭の一人は振り返る。
授業中、生徒が勝手に歩き回る。
給食の時間に、ほかの生徒から奪ったパンや牛乳が宙を飛ぶ。
教室や廊下はゴミだらけ。
非常ベルが鳴り、爆竹が鳴り、窓ガラスが割れる。
暴力、いじめも起きた。
教師が、次々に倒れて休職した。
荒れるきっかけは、一部の保護者のクレームに対し、
学校全体が弱腰になったこと。
ほかの生徒や保護者への対応も後手後手になり、
立て直しを図ったが、止まらなかった。
2007年春、荒れの加速を重大視した教育委員会が、
校長と教員の約7割を異動で入れ替えた。
新しく来た校長は、教職員を前に、情報の共有とチームでの対応を宣言。
「スカートの丈が短い」などと注意する時、生徒で差を付けないようにし、
バラバラだった指導を一本化。
「信頼を取り戻すため、教師全員が毅然とした態度を取ることから始めた」
悩みを分かち合うため、勤務時間外の食事会も頻繁に開いた。
生徒に対して、給食、あいさつ、掃除をきちんとできるように
することから着手。
掃除では、教師らが朝6時半に登校、模範を示した。
2年目から、歯車が回転し出した。
生活指導だけでなく、学習指導も軌道に乗った。
ある教諭は、「悪い子は、エネルギーの持って行き場がないから、
学校をはけ口にする。
『おまえたちが学校を変えていくんだぞ』と言い続けていたら、
子どもたちもツボにはまってきた」
3年目の体育祭。
ある保護者は、整然と行動する子どもたちを見て、涙を流した。
「前は荒れに荒れた学校だった。感激しました」
今では、保護者や地域からの信頼を取り戻しつつある。
学力も、地域で上位になった。
この状態をどう定着させるか?
教師たちの努力は続く。
文部科学省の問題行動調査によると、09年度の暴力行為は、
中学校4万3715件、小学校7115件で、いずれも過去最多。
昨年10月、桐生市で自殺した小学6年女子児童が通っていた学校では、
学級崩壊が起きていた。
成長の過程で、大半の子どもが経験する心の揺れを、
「荒れ」に変えないためにはどうすればいいのか?
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20110126-OYT8T00160.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿