(読売 10月11日)
ものづくりのすそ野を広げようと、大学や教育委員会が模索する。
岐阜大学に、はしゃいだ声が響いていた。
小学生が、手に持ったプロペラ式模型飛行機を飛ばしている。
着地した時に、プロペラ部分が外れて壊れてしまっても笑顔は消えない。
すぐに修復が可能だからだ。
男児の1人は、「針金での固定の仕方がよくなかったのかな」と教室に戻った。
同大教育学部の技術教育講座が主催し、8月初めに行われた
「こどものためのものづくり教室」。
小学1年から中学3年までの100人が、大学生や大学院生に教わりながら、
飛行機、銅鏡、げた、ラジオ作りに励んでいた。
銅鏡作りは、女子向け。げた作りは、ゲゲゲの鬼太郎ブームを反映。
子供4人に指導役が1人。分からなければ、すぐ聞ける。
接着剤やカッターを初めて使った子も。
講座は、中学校の技術科の教師を目指す学生が属するだけに、
準備は学生に任されている。
材料を集めたり、木にドリルで穴を開けて準備したり。
子供に分かりやすいようにまとめた説明書も作る。
準備を通して学生に、ものづくりを経験させる狙いも。
今年で10年目を迎えた企画を見続けた担当の吉田昌春教授(65)は、
「カッターを使ったことのない小学生が依然として多い。
学校でのものづくり体験が少なすぎる」と危機感を募らせる。
これまでの参加者は、延べ881人。
繰り返し、参加する子供も多いとはいえ、課題は中学生の参加者の少なさ。
今年も全体の1割にとどまった。
吉田教授も、「中学生を引き付ける題材も、何か考えていかなければ」
東京都教育委員会が、費用の半額を補助する形で、昨年から始めた
「わくわくどきどき夏休み工作スタジオ」も、事情は同じ。
今年は、工業高校6校で教諭が講師となった。
参加費は1000~2500円で、小中学生1282人に、手作り時計や指輪、
キーホルダーなどの製作を指導。
小学生の参加希望者が定員の3倍近くあって、抽選で参加者を
絞り込んだのに対し、中学生の参加者は346人にとどまっていた。
中学生の参加は、企画次第ともいえる。
都立工芸高校では、中学生の参加者のほぼ3分の1に当たる
111人が足を運んだ。
エコバッグやデザインクロック、銀のスプーンの製作など、
やや大人向きの題材を選んだ。
都教委の担当者は、「夏休み中の中学生は、部活動や進学準備で忙しく、
なかなか引き込めていないのが現状。
題材を工夫しながら、全体の企画数を増やしていけば、
中学生の参加者増が見込めるのでは」
小学生には受け入れられやすい、ものづくり体験教室。
その流れを断ち切らず、いかに中学生の参加を増やすか、
模索が続いている。
◆中学校のものづくり教育
1998年改訂の学習指導要領は、「技術・家庭」の3年の標準授業時数を、
従来の年70~105時間から35時間に減らした。
新指導要領も、この時間はそのまま。
新たに3年間で、「生物育成に関する技術」など4項目を必修化するため、
現場からは、工作的なものづくりの時間が足りないと言う声も。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081011-OYT8T00265.htm
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