2010年9月29日水曜日

インサイド:米大リーグ ビジネス最新事情/1 入場料変動制で増収

(毎日 9月14日)

62億ドル(約5270億円)--。
「100年に1度」と言われた不況をものともせず、
米大リーグの総収入は昨年、過去最高を更新。
原動力となったのは、革新的なチケットの販売手法や、
各地で建設が相次ぐ新球場の経済効果。
今なお発展を続ける大リーグビジネスの最新事情をリポート。

航空券のように、日替わりで料金が上下する変動価格制度。
昨年、大リーグで初めて外野席の一部に導入したジャイアンツが
今年、対象を4万1500の全席に拡大。
球団にどの程度収入増をもたらすのか、またもたらさないのか?
ファンは、いつチケットを購入すれば割安なのか?
他球団だけでなく、ファンの目も日々の値動きに注がれている。

チケット料金は、前年のシーズン終わりに決める--。
それが今までの大リーグの常識。
「半年~1年先の経済状況やチーム成績を予測するなんて不可能。
不景気でチケットが売れないかもしれないし、
優勝争いに加わって再販市場で高値で取引されているかも」
ラス・スタンリー・チケット販売担当副社長は、
需給関係で日々価格が変わる『ダイナミック・プライシング』は、
理にかなっている

◆50セント~1ドルの幅で

料金を上げ下げする「変数」となるのは先発予想投手、
対戦相手のチーム成績、記録達成の可能性、天気予報、
チケットの売れ行き、花火ショーや首振り人形のプレゼントなど、
プロモーションの中身。

開幕約2カ月前の2月1日に基準価格を発表、
その後、スタンリー副社長を中心とするチケット販売担当者が
毎朝会議を開き、新たな情報を考慮しながら、
50セント~1ドル(約42~約85円)の幅で料金を変動。

外野の2000席で、試験的に導入した昨年は、年間延べ2万4000席、
金額ベースで50万ドル(約4250万円)を上積み。
今年、8月末現在で観客数、チケット収入のいずれも
前年比5~7%押し上げている。

最も高騰したのは、6月下旬のレッドソックス戦の
バックネットに近い内野席。
基準価格で135ドル(約1万1500円)、
最終的には225ドル(約1万9000円)の値が付いた。

最安は、開幕直後のパイレーツとの3連戦の左翼外野席で、
基準価格と同じ5ドル(約425円)。

大リーグの球団は99年以降、季節や曜日、対戦相手などから
需要を予測し、チケット料金に反映させる手法を開発。

ジャイアンツは、シーズンチケット購入者が使用しないチケットを
ネット上で売買できる再販市場を、00年にプロスポーツ界で初めて
開設するなど、野心的な試みで知られている。

日本でも、楽天が09年から、需要に応じて5段階の料金設定をする
「フレックスプライス」を導入、徐々に普及しつつある。

「昨日の試合に勝ったか負けたかが、
(需要を左右する)最大のインパクトのはずだ」(スタンリー副社長)。
その意味で、ジャイアンツの変動価格制度は、究極の需要予測。

◆真の目的は販促

球団に多大な収入増をもたらしたダイナミック・プライシングだが、
本当の狙いは、チケットを高値で売り付けることではなく、
シーズンチケットの販売を促すこと。
その証拠に、ジャイアンツは全座席の7割で、
基準価格を昨年の料金よりも引き下げた。

「この1年間の値動きを見ていれば、早く購入するほど
料金は安いことが分かる。
割引特典のあるシーズンチケットは、さらに安い」、スタンリー副社長。
現在65%のシーズンチケットの比率を、
来年には75%に引き上げる目標。

彼は、新しい料金制度に関する情報をレッドソックス、フィリーズ、
ヤンキースなどの他球団と共有。

ジャイアンツが導入したチケットの再販市場は、
リーグの枠を超え、全米のスポーツリーグに広がった。
「変動価格制度も、13年までには全球団が追随する」
スタンリー副社長は自信を持って、そう断言。

http://mainichi.jp/enta/sports/baseball/archive/news/2010/09/14/20100914ddm035050053000c.html

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