(毎日 9月20日)
主に、法人向けインターネット接続やネットワーク構築などを
手がけるIT大手、インターネットイニシアティブ(IIJ)。
日本のプロバイダー(接続業者)の草分けとして、
ネット技術の進展をけん引してきた同社の鈴木幸一社長に、
ITが環境に与える影響や同社の環境戦略を聞いた。
--ITが環境に与える影響をどう考えるか?
◆IT・ネット産業は、電気がないと動かない。
通信速度が速くなるに従って、莫大なエネルギーが必要になり、
巨大なサーバー(高性能コンピューター)は、
1台で20世帯分の電力を消費。
ITは、使い方によっては総エネルギーコストの削減に。
企業などがサーバーを共有化する
クラウド・コンピューティングはその一例。
--具体的には?
◆クラウドは、サーバーやシステムを共同利用しようというもの。
企業や自治体などが個別にそれらを持つよりも、
トータルのエネルギー消費をはるかに減らせる。
使う側は、自前で設備を持たずに済むのでコストは削減でき、
技術革新にも付いていきやすい。
環境対応の面から、どんどん導入してほしいが、
国内ではあまり進んでいない。
--なぜか?
◆クラウド技術を使えば、どんなメリットがあるかを十分に
理解している経営者がまだ少ない。
システムのことはコンピューター会社に任せ切り、
という企業が多いのでは。
自治体では、地元業者や職員の雇用減少につながるとの
懸念がネックになっている。
--IIJでは、環境負荷低減にどう取り組んでいるか?
◆最も電力を消費するのが、多数のサーバーが集積する
データセンター(DC)。
DCの運用コストの約4割は電気代、
コスト削減のためにも、省エネ対応は必須。
IIJは、電機メーカーなどと共同で今年2月、国内で初めて、
サーバーを外気で効率良く冷却するコンテナ型DCの運用実験を始めた。
従来のDCより、消費電力を40%削減でき、
CO2年間排出量は4000トン削減できる。
DCは商用化を決め、今月から松江市で設置工事を始めた。
購入するサーバーやコンピューターなどを選ぶ際、
エネルギー効率の良さも基準。
省エネタイプの機器は、高くても長期的に電気代も削減できる。
--課題は?
◆ITは、環境負荷低減に大きく貢献できる技術だが、
社会全体がITを活用するという方向に完全に転換できないうちは、
無駄なエネルギーを使う。
米国の役所は、電子化が徹底。
日本は、一部は電子化しているが、職員による作業も残る。
思い切った転換が必要。
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◇すずき・こういち
早大卒。日本能率協会などを経て、
92年インターネットイニシアティブ企画(現インターネットイニシアティブ)設立。
94年4月から現職。神奈川県出身。64歳。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2010/09/20/20100920ddm008020025000c.html
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