(読売 6月4日)
健康管理を通じて、学生生活を支援する大学がある。
4月の入学式から数日後。
金沢大学は、新入生1823人に3日かけて健康診断を行った。
身長・体重の測定、血圧検査や採血など、お決まり項目の最後に、
臨床心理士との面談も用意。
心理士の女性は、「少しでも不安なことがあったら、いつでも相談してね」
と優しく学生に悩みがないかを聞き、
学生による悩み相談部屋「ピアサポートルーム」の存在も紹介。
同大では今年度から、健康診断の受診を、1年生の必修科目
「大学・社会生活論」の単位取得の条件に。
受診しないと、運動部系のクラブやサークル活動の試合に参加出来ない。
診断のデータに少しでも異常があれば、学生に対して連絡を取る。
この科目の前期では、喫煙、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)、
熱中症などの知識や、健康診断結果の読み方も教える。
ビデオ教材を視聴後の確認テストもする。
同大の校医、吉川弘明教授は、
「健康教育は、自分でものを考える手段の一つ。
生涯にわたって、健康の重要性を考える姿勢を身につけてほしい」。
精神面のケアも重視する。
学内の保健管理センターの相談室にはここ数年、相談が増えている。
健康診断などで異常がわかった学生には、大学側から連絡を取るが、
カウンセラーの人数も限られており、
組織的に予防からかかわることが必要。
臨床心理士の足立由美講師は、
「大学では、自発的に動かなければ特定の人と一緒になる機会がなく、
対人関係を築けない学生もいる」。
大学が、約4キロ離れた二つのキャンパスをつなぐシャトルバスを
新設した狙いの一つにも、学生の交流の促進を図る。
授業以外の学生の居場所を確保する「コミュニケーションプレイス」を
4か所設置、今後も拡大する予定。
金沢大の一連の取り組みは昨年度、文部科学省の
「新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム(学生支援GP)」
に4年間の計画で採択。
「心と体の育成による成長支援プログラム-社会に幸せをもたらす
生活の知恵を持った学生の育成-」と名前の付いたプログラムには、
大学入学という大きな変化に直面する学生に対して、
心身ともに大学が健康作りを管理することで、
学生生活を軌道に乗せる狙い。
大学の取り組みに対して、ある学生は
「健康管理なんて、自分でやるのが当たり前。
試合に出られなくするところまでやるのもどうかと思う」と懐疑的な声。
一方で、一人暮らしを始めたばかりの1年生の中には
「自分で出来ないところを大学が面倒をみてくれて、安心感がある」。
学習を支えるため、学生の生活面に大学はどこまで関与すべきか。
金沢大の取り組みは、そのことの問題提起とも。
◆GP Good Practice(すぐれた取り組み)の略。
文部科学省は大学を競わせ、教育面で他大学の参考になる
取り組みに補助金を出している。
2003年度からの「特色ある大学教育支援プログラム(特色GP)」と
04年度からの「現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)」
の額が大きかったが、08年度から統合して
「質の高い大学教育推進プログラム(教育GP)」に。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080604-OYT8T00241.htm
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