2008年1月10日木曜日

遺伝子配列の順序を入れ換える、新たなRNA加工様式を発見!

(nature Asia-Pacific)

立教大学理学部生命理学科関根靖彦 准教授

「DNAの遺伝情報を転写し、タンパク質の合成過程で仲介役を果たすだけ」。
長い間そう考えられてきたRNAだが、最近になって、
「驚くべき新たな機能」が相次いで発見。

マウスゲノムで70%以上もの領域が、いったんRNAに写し取られ、
その半分以上が「タンパク質をコードしない非コード RNA(ncRNA)」として、
遺伝子発現の調節機能などを果たしている。

立教大学理学部生命理学科の関根靖彦准教授は、
DNAの情報がRNAに写し取られて利用される際に、
配列の前半と後半の順序が入れ換わる「新たなRNA加工様式」がある。

RNAには、DNAの情報を写し取る伝令RNA(mRNA)、
mRNAの情報(コドン)に対応するアミノ酸を運ぶ転移RNA(t RNA) 、
タンパク質を合成する際にはたらくリボソームRNA(rRNA)など。

関根准教授らが用いたのは、「シゾン」という原始的な微生物(原始紅藻)。
「tRNAを作り出すための遺伝子が30種しかなく、極端に少ないため、
何かからくりがあるに違いないと直感して研究をはじめた」。
ヒトでは、48種のアンチコドンをもつtRNA遺伝子が知られ、
450コピーものtRNA遺伝子が存在。

シゾンの全ゲノムは、立教大学の黒岩常祥教授らによって完全解読。
「シゾンゲノムを、既存のtRNA遺伝子探索プログラムに照合しても
発見できないことから、tRNA遺伝子がどこかで分断されているのでは?」。
分断されたtRNAを想定して、シゾンゲノムの配列をみなおす作業。
その結果、実際のtRNAの塩基配列の前半と後半の順序が
入れ換わった遺伝子がみつかった。

入れ換わりのメカニズム」は、
1. DNA上の遺伝子の配列がそのままRNAに写し取られる。
2.RNAの先端と末端が結合して、環状のRNA(環状化RNA)になる。
3.環状化RNAの結合部位とは異なる部位に切れ目が入る。
4.ひも状になったRNAをもとに、特定の立体構造をもつtRNAが作られる。

「DNAには『ろちょうもんし』と書かれているところを、
RNAを作る際に文字を入れ換えて、『もんしろちょう』と
意味のある言葉にするようなものだ」と説明。

「もんしらかろちょう」から「らか」を削除して「もんしろちょう」にする、
「もんし」と「ろちょう」を連結することで「もんしろちょう」にする、
といったやり方でtRNAを合成する例は知られていたが、
今回のような入れ換えはまったく知られていなかった。

「同じような入れ換えの加工様式は、他の生物でみつかっていない。
この加工様式にどのようなメリットがあるのかは、まだ不明」。

今回の研究成果は、生物が予想以上にゲノム情報を柔軟に
加工・編集していることを物語っている。
「ゲノム配列には、生体システムを理解するうえで
重要なメカニズムがまだ多くあるはずだ」。
次なる「お宝」を掘り当てるための研究が続く。

http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=66

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